第5話・限界突破で駆け抜けろ~示すは答えか道筋か~
第2章 思いは熱く、空回る
第5話・限界突破で駆け抜けろ~示すは答えか道筋か~
「ムリっ!!!!」
さて今日も図書殿に行くぞ、となった四日目。
そう叫んだジャンヌがベランダ越しに隣の部屋へと渡り、そこから廊下に出て走り出した。
「……ふむ……持った方か……」
半泣きになって叫んだジャンヌの顔が胸に刺さって動けないリオンと違い、冷静にそう分析するファンの声に焦りはない。
「のんきなこと言ってないで、追わなくていいのか?」
「……この私が、姫様の行動パターンを知らないとでも?」
一応問いかけてみたリオンに、不敵な笑みを口元に浮かべたファンの目は全然笑っていない。
「行こうとしている場所は分かっている。ならば、ルートも限られる」
あっさりというファンの言う通り、ジャンヌが向かいたいのは主神殿。
その医務殿に入院中の皇宮呪師インス=ラントのところだろう。
二人はそろってジャンヌの部屋を出て、先回りするルートに向かう。
三日前には生死の境を彷徨っていたアインも意識を取り戻した。という報告が入っていて、ほっと一安心したのもある。
ついでにファンが、何ともいえない冷たい笑みを浮かべていたのも印象的ではあったが、ファンがどうしてそこまでアインを嫌うのかが本当にわからない。
「……なあ……」
だから、何となく。聞いてみたくなった。
「お前、なんでそんなにアインを排除したがるんだ? あいつだってジャンヌの……」
「危険だからだ」
皆まで言う前にバッサリと切り捨てられて目を丸くする。
危険? ほんの、五歳ほどの子供が? どうして?
意味が分からない。
「……お前……それ、説明になってないぞ……?」
呆気にとられたリオンの言葉に、そうだな。と認めつつも、それ以上は何も言わない。
「おい……!」
「今は姫様が先だ」
イラっとして声を上げかけたリオンを制し、二手に分かれるよう指示を出す。
チッと舌打ちしつつも素直に従ったリオンを見送り……
「……説明? できるわけがないだろう……こんな、感覚的なものなんて……」
口の中でぼそりと呟いて、ファンもジャンヌの進路を塞ぐべく走り出した。
結局。
リオンに追い立てられた先にファンが待機していて。
そこを何とかすり抜けた先にクロードが待ち構えていて。
最後は三人に取り囲まれてジャンヌの脱走は失敗に終わった。
「もうっ! そろそろ会わせてくれてもいいと思わない!?」
翌日の午前中。
いつものごとくジョンのお見舞い……という名のジャンヌの愚痴の掃き出し会……にて、ぷっくりと頬を膨らませる姉の様子を。
その声色だけで察してクスクスと笑うジョンは、表情こそは穏やかで、ずいぶんと体力も戻って来ていて、少しずつ、散策などもするようになっていた。
そうは言っても、目が見えないジョンが一人で外を歩くことなどできるはずもなく。
ジョンの専属女官長……乳母も務めた女官……に手を引かれて、ゆっくりと部屋の中を歩くだけ。
食事などもできるようになったおかげか、目覚めた当初よりも少しだけ体つきも成長していて、成長阻害などはなさそうだと、ほっと一安心していた。
「姉上はそうおっしゃるけれど。医務殿の医師たちが面会を拒絶しているのなら、ディアスたちは止めざるを得ないと思うよ……それより、資料を見るのがお辛いのなら、情報を集めた方がいいんじゃないかな?」
話を聞いて、少し考えたジョンの言葉に、ジャンヌは首を傾げる。
「え? だからみんなで調べて……」
「違うよ……」
皆が総出で調べているのは過去の資料。
長い聖皇国の歴史の中で、何らかのヒントとなる記述がないかということ。
けれど、歴史が長い分、その資料も膨大過ぎて、特定の事柄を調べるのには、時間がかかって当然。
「……だから、むしろ、近いところから調べた方が早いかもしれないよ? それは調査というよりも、情報収集でしょう?」
「なるほど?」
穏やかに方向性を伝えるジョンと、あまり分かっていなさそうな感じで頷くジャンヌのやり取りに、部屋で控えて姉弟の交流を見守るリオンの背に冷や汗が浮かぶ。
(……マジか! この皇子……!!)
ジャンヌからの、整理されているとは到底言えない、ただの愚痴にしか聞こえない話から、要点を理解し、方向性を示す。
十歳から五年間。
時を止められたかのように眠り続けていたとは到底思えない頭の良さを目の当たりにし、どうして弟皇子の方が皇太子なのかの理由がより、明白になってしまった。
更に……
(……もし、知っていて言ってるなら、間違いなく天才だ……ジャンヌはこれで動けなくなる……)
ジョンが示す『情報収集』が、先の魔族との戦いのことを言っているのなら。
冷や汗が止まらないリオンに気づかず、姉と弟との対話はその後昼食の時間まで続いた。
第2章第5話をお読みいただきありがとうございます。
ジャンヌの全力脱走、あえなく失敗!
行動を完全に読み切っているファン。
彼が抱く説明不能な「危険」への直感。
そして姉を導くふりをしてコントロール下に置こうとする(?)ジョンの手腕。
リオンを戦慄させたジョンの提案により、今後の調査はどう変わっていくのか?
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
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ノリト&ミコト




