同姓同名
だいぶ前に書いたパート2です。
どうか生暖かい目で(ry
僕の名前は、『神無月星矢』(カンナヅキセイヤ)。今僕には悩みがある。
ハッキリ言おう、もてないんだ。
もう、これでもかって言う位キッパリサッパリもてない。
それはなぜか、確かに僕はカッコ良くもないし、これといって取り柄もない。漢字で書けば『平凡』そのものだ。
だが!一番の理由はそれではない。
僕と同姓同名の奴がいるんだ。
カッコ良くてスポーツ万能、頭もいいし、それでいてやさしいときた。
腹の立つ奴なら恨むこともできたけど、これでは恨むことも呪うこともできやしない。
同姓同名と言うだけでいつも比較されてきた気持ちがわかる人はそう多くはないだろう。
『神無月?どっちの?』『イケてない方』『アハハハハ』
もうこの会話は聞き飽きた。
それにたまにだけど、アイツ宛てのラブレターが僕の下駄箱やら机やらに入っているんだ。
それを届けたりするたびに僕はとても気分が悪くなる。
毒づこうにもアイツはやさしすぎるんだ。
今日もまたそれだった。
下駄箱に入っていたラブレターは綺麗な花がプリントされ、ハートのシールで可愛く封をされた封筒だった。
『神無月君へ、木下翠』と書かれていた。
「きのした・・・・・なんて読むんだろ。まぁ関係ないか。」
僕はため息をつきながら、アイツの教室へ足を運んだ。
「僕に?またかい?」
「そうだよ、まただよ。本当におもてになるねぇ。」
なんだろうか、今日は意味もないのに毒づきたかった。僕にとっては珍しいことだった。
「ごめんね、いつもいつも。」
「もう慣れたよ。」
「君には・・・・・こないのかい?」
「くるもんか、本当にうらやましいよ。今度誰か紹介してくれな。」
何で僕はこんなことを口走ったのか、今日は本当に珍しい日だ。
「うん、今度紹介するよ。じゃあ、僕はこれで。たぶんまた、体育館裏だ。」
「ベタだな。」
「皆同じなんだ。」
ほかに目立たない場所はないのか。
やることも終わり、校門をくぐろうとした時だ。
「おーい神無月くーん!」
一瞬、自分だと思った、でも僕の事ではないと思い直した。今までもそういう事が多かったから。
「神無月君ってば。」
肩を持ってぐるっとひっくり返された。
アイツだった。
「まだ、あきらめるのは早いよ。」
「なにがだよ。」
「行けばわかるさ、これ」
封を切ったラブレターを渡された。
「じゃ、僕はこれで。うまくやりなよ。」
「うまくってなにを・・・・・っておい!」
アイツは走って帰ってしまった。手元のラブレターの中を見る。
そこには女の子らしい丁寧な字でこう、書かれていた。
【神無月君へ
いつも陰で見ていました。
あなたは覚えていないかもしれませんが、私は覚えています。
あれは忘れもしない、小学校5年生の時です。
病弱で休みがちなせいか、よくいじめられていた私をいつもいつも守ってくれました。
好きです。
体育館裏で待ってます。
木下翠】
「木下・・・・・あ!みどり、みどりちゃんだ!」
やっと思い出した。昔から、よく男の子にいじめられてた子だった。
あの頃は複雑な年頃で、好きな子には皆逆の事をしてしまったもので、その子と繋がりを求めるがために歪んだ方法でその子にアピールしたりしてしまったものだ。
皆、その行為とは裏腹にみどりちゃんが大好きだった。
僕もその一人。でも、いじめはしなかった。僕は皆に囲まれたみどりちゃんがかわいそうで仕方がなかったから。
元々が病弱で守りたいと思わせる雰囲気をかもし出していたからかもしれない。
その頃から綺麗で、控えめな性格で皆の影のアイドルだった。
体育館の角を曲がった。
「い、いない?」
「ここだよ。」
ちょうど死角に入る部分に立っていたので気がつかなかった。
突然すぐ近くに見えたみどりちゃんの姿は、あの頃よりずっと綺麗だった。
「手紙、見てくれた?」
「なんで・・・・・・僕なの?」
「とっっっっても、単純な理由。」
彼女は突然僕を抱きしめた。
「なっ!?」
それは、病弱だった彼女を連想させない、しっかりと力の入った物だった。
そして、こういった。
「あなたが、好きだから。」