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『八月の通学路』

作者: かめ
掲載日:2025/08/22

ご覧いただきありがとうございます。

この作品は、真夏の通学路を舞台にしたホラー短編です。

誰もいないはずの道で“誰か”とすれ違ったとき、あなたは振り返る勇気がありますか?

涼を求めて読んでいただければ幸いです。

八月の終わり。

蝉の声がやかましい夕暮れ時、僕は部活帰りの通学路を歩いていた。


照り返しの熱にふらふらしながらも、心の中は軽かった。

明日から二学期。クラスで好きな子に会える。そんな他愛ないことを考えていた。


……そのはずだった。


踏切の前に差しかかったとき、ふと背筋に冷たいものが走った。

線路の向こう、夕焼けを背に、ひとりの女の子が立っていたのだ。


制服は、僕の学校のもの。

でも見覚えがない。

髪は濡れたように重く、顔は影になってよく見えなかった。


「……こんばんは」


思わず声をかけた。

すると、女の子は無言のまま、ゆっくりと首を傾けた。

ぎこちなく、まるで首の骨が折れているかのように。


次の瞬間、警報音が鳴り響いた。

遮断機が降り、電車が迫ってくる。

僕は慌てて目を閉じた。


轟音と共に電車が通り過ぎ――

目を開けると、そこには誰もいなかった。


息を呑んだ。

だが、地面には確かに濡れた足跡が残っていた。

線路からこちらへ、僕のすぐ目の前まで。


慌てて走って家に帰ると、母が言った。


「レン、また通学路で立ち止まってたでしょ? あそこは行っちゃダメって言ったのに」


「え、なんで?」


母は少し黙ってから答えた。


「去年の夏、あの踏切でね、女の子が電車に……」


僕の鼓動が止まりかけた。

耳の奥で、さっきの警報音がまだ鳴り響いている気がした。


その夜、眠れずに布団に潜り込んでいると――

窓の外から、じっと僕を見つめる気配がした。


覗き込む勇気なんてなかった。

ただ耳を塞いで震えていた。


……翌朝。

窓を開けると、ベランダの床に濡れた足跡がいくつも並んでいた。

最後までお読みいただきありがとうございました。


夏の帰り道は、昼間の喧騒とは違う寂しさがあります。

人通りがなく、夕立の湿った匂いだけが漂う道を歩くと、ふと背後に気配を感じることはありませんか?


本作『八月の通学路』は、「自分自身とすれ違ったらどうなるか」という発想から生まれました。

どうか夜の帰り道では、後ろを振り返らないように……。

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