ぶっ飛ばしたいほど尊い推し(17)
精一杯の愛を込めて私は蓮を見つめる。
アイドル影山蓮を応援するファンとして、余すことなく私の思いを伝えたい。私は信じているのだ。蓮はどんな状況になっても輝くことができると。そして、そんな蓮をずっと応援していきたいと思っているファンがここに居ることを。
私の熱弁に圧倒されたのか、蓮は目をぱちぱちと瞬かせている。蓮も成瀬さんも何も言わない。しんとした静寂が私たちを包み込んだ。沈黙に耐えられなくなった私は、思わず視線を逸らす。
……ちょっと言い過ぎたかな? でも、これが私の本心だもの。蓮にはずっとはじける笑顔が似合う「影山蓮」でいてほしい。
沈黙が居たたまれなくなった私は、そっと推したちの様子を窺う。二人は虚を突かれたように呆気に取られていた。しかし、それは一瞬のことで次の瞬間には二人して笑い出す。
「あはは。ぶっ飛ばすってさ。いや、ほんとお前1回ぶっ飛ばされた方がいいって」
お腹を抱えて笑う成瀬さんは、バシバシと蓮の背中を何度も叩く。蓮も大袈裟に痛がって見せながらも、どこか吹っ切れたように笑っている。
え? 爆笑されるほど、私変なこと言った?
そんな私の心中などお構いなし。蓮も成瀬さんもおかしそうに笑い続けている。私は困惑して二人を見つめることしかできなかった。
ようやく落ち着いた二人は、改めて私を真っ直ぐに見つめた。その目はどこか優しい。私が首を傾げると、蓮はゆっくりと口を開く。
「千紘。ありがとう。まさか、ファンにぶっ飛ばしたいなんて言われる日が来るとは思わなかったわ。こういうの、アレ? ケツを叩かれるって言うの?」
彼の澄んだ声が夜の空に静かに響く。蓮はどこか吹っ切れたような明るい表情をしていた。
「そうだぞ。蓮。またウジウジ言ってると、今度こそ本当に石川さんにぶっ飛ばされるぞ。……って、ぶっ飛ばすってマジでなに? ワードチョイスが最高過ぎるわ。くくくっ」
成瀬さんはツボに入ったのか、またもお腹を抱えて笑い出した。そんな成瀬さんにつられるように蓮も再び笑い出す。
夜風は涼しいはずなのに、私の頬は火照ったように熱い。
ちょっと二人とも笑い過ぎでは? いやでも、冷静に考えてみると、私の愛って重すぎる? それとももっと別のことで笑われてるの? 一体なんでそんなに笑うのよっ!
私の葛藤をよそに、二人はいつまでも楽しそうに笑っている。
どうでもいいか。二人が笑顔ならそれで。
気がつけば、私も一緒になって笑い声を上げていた。




