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第7話 クズの中のクズ、全員に嫌われる

 ライドは途方に暮れていた。


 もう誰も残っていない大きな家で、小さな溜め息をつく。

 自分の何がいけなかったのか。アホのライドにはそれがわからない。


「くそっ、どいつもこいつも……」


 セイラとヌーナは消息不明。


 アーサーをさがしにいくと言っていたが、どこに行くのかは教えられていない。何度か悪態をつくと、もうすぐ取り押さえられるであろうソファに寝転がる。


「酒場で愚痴ってくるか」


 イライラしながら豪邸を出るライド。

 

 向かう先は歓楽街の近く。

 見目麗しいエルフの美女たちが働く、夜のバーだ。


 ストレス発散のためによくバーに行くライド。彼女たちは自分のことを否定せずに優しく話を聞いてくれるはず。そう期待していた。


「こんばんは」


 店に入ると、愛想の悪いエルフの店員が声をかけてくる。

 本来彼女は愛想のいい店員として人気があるのだが、ライドの前では無愛想であった。


「マリーちゃんってツンデレだよなぁ」


「1ミリもデレたことはありませんが」


「知ってるぜ。オレのこと好きなんだろ? 隠さなくたってわかってるっての」


「セクハラで訴えますよ?」


「ほら、やっぱりツンデレ」


 マリーはライドに殺意を覚えた。


「何を飲まれますか?」


 冷酷な瞳で、ライドに尋ねる。

 ライドはお金を持っているため、普段は太っ腹。だからバーとしてもいい気分になってお金を落としてほしいところ。


 だからマリーも我慢して接客していた。

 全ては売上のためだ。


「あ、今日はなんも飲まねぇ。ただマリーちゃんと話したくてさ」


「頼まないなら帰ってくれますか?」


「オレと話せて嬉しいんだろ?」


「いえ、ちっとも」


「やっぱツンデレだな」


「帰ってください」


 カウンターで冷めたやり取りを交わしていると、他の店員もライドに近寄ってきた。


「ここは飲む場所だから。マリーにセクハラするなら帰って」


「アンナちゃん、マリーに嫉妬してんだろ。可愛い奴だな」


「殴られたい?」


「アンナちゃんになら、いくらでも」


 次の瞬間、ライドの鼻から大量の血が噴出した。


 アンナが殴ったのはたった1発。

 しかし、少し前にセイラにボコボコにされたダメージが残っていた。


「……なかなか強いな……」


「いい加減にして! わかってないの? 自分が嫌われてるってこと」


「……は? そんなわけないだろ」


「ほんと馬鹿なのね……」


 今日、ライドは知ることになる。


 エルフの店員全員から冷たい視線を投げかけられ、誰にも相手にされなくなり、店を出た時だった。


 ――オレ、嫌われ者じゃね?


 それはライドの中で、最も賢い悟りであった。




 ***




 ローラン王国政府は今、予想外の事態に混乱していた。


 伝説の勇者であるアーサーが、【黄金の輝き】を追放された、というニュースだ。


 それは同時に、王国最強の勇者が引退を宣言した、ということでもある。

 魔王スコット・マオウダゼによる脅威は去ったが、まだ別の闇勢力が力を増してきているという情報も入ってきていた。


「闇の帝王が復活しそう……?」


 受付嬢のティナは、政府の上層部の人間から王国存続に関する重大なニュースを聞かされていた。


 普段から【黄金の輝き】の対応をすることが多いティナは、政府の中では【黄金の輝き】担当受付嬢として見られている。


「どうにかしてアーサーさんを取り戻さないと……」


 闇の帝王の復活。

 このニュースは、まだ政府の中だけで回っているもので、世間には公表されていないものだ。


「アーサーは観光都市セルベリアにいるようだ。友人2名と観光しているという情報が入ってきた」


「観光都市ですか……わかりました。わたしが行きます」


「その必要はない。もうすでにセイラとヌーナがアーサーを連れ戻すために動いた」


「アーサーさんの情報を彼女たちに渡したんですか?」


「そうだ。セイラとヌーナは、どうやらアーサーの追放に憤慨している様子だった。おそらく、あのクソライドの独断が全てを壊したということだろう」


「あんな人、モンスターに食べられてしまえばいいのに」


「あいつを追放していれば、【黄金の輝き】は今以上に名を馳せるパーティになっていたはずだ」


「アーサーさんは優しすぎます」


「しかし彼の優しさに、多くの者が救われてきたのも事実だ。今は彼を連れ戻すことだけを考えよう」


 王国の危機に汗を流す政府の幹部、アルフレッド。

 彼もまた、アーサーに救われたことのある人物だった。




 ***




 観光は最高だ。

 勇者辞めてほんとに良かった。


 俺は今、セルベリアで1番の観光スポットとも言われている、英雄アレクサンダーの泉に来ている。


 ここはかつての英雄アレクサンダーが、水浴びをした場所として有名な場所だ。


 何がいいのかというと、泉の周辺には大きな公園と複数のレストラン、お土産ショップがあり、のんびり生きたい俺にとって充実しすぎているというところ。


「ちなみにセルベリアのお土産で最も有名なのは、『両手で食べれるハンバーガー』だ。ここでしか買えないから今のうちに買うことを勧めたい」


 チムチムはセールスの才能がある。

 俺は絶対に『両手で食べれるハンバーガー』を買っていこうと思った。

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