第3話 クズの中のクズ、仲間に見限られる
いよいよ出発の時だ。
スコットの家は広くはないものの、ちゃんとゲストのための寝室も用意していて、おもてなし精神に満ち溢れていた。
それこそ、俺たちの本拠地とは大違いだ。
だって、とんでもないくらい広大なのに、メンバーの個人的に作りたい部屋しか作ってないからね、あそこ。
【黄金の輝き】の大きなエゴの詰まった、心の狭い豪邸だ。
「まずは観光都市セルベリアかぁ。いいね。最近は飲食業にも力を入れてるって聞くし、最初の目的地にはちょうどいい」
「そうっすね。勇者割引みたいなのってないんすか?」
馬車に乗って移動する俺たち。
伝説の勇者と漆黒の魔王。そしてその元部下である、闇の騎士団の元騎士団長。
3人とも超強いし有能なので、ダッシュすれば観光都市なんて10分くらいだろう。
でもあえて馬車に乗っているのは、旅の雰囲気を楽しむためだ。
こうやって移動している時にこそ旅を感じるよね。
俺は元魔王軍騎士団長のオースティンと、次の目的地についてまったりと話していた。
「勇者割引ねぇ。多分、偉そうな態度で、王国を救った勇者だぞ俺、だから安くしてくれよな!って言えばなんとかなると思うよ」
「でもアーサーさんはしませんよね?」
「あったり前じゃん。俺は自分が勇者だったとか、王国を救ったとか、そういうのどうでもいいと思ってるからね」
「さすがっす。でも謙虚すぎますよ。もっと言っちゃっていいと思います」
「いやいや、俺はフツーの旅人として、フツーに友達と旅を楽しめればいいのさ」
「なんかかっこいいっすね」
最初に出会った時から、オースティンは俺に対して無駄に高評価だ。
その理由はわからない。
俺の周囲にいたパーティ仲間が、ライドみたいな、クズとカスの間を行き来している人間だったから俺が神に見えたんだろう。
ごめんな、ライド君。
俺は別にお前が嫌いなわけじゃないんだ。
そういえば、あいつ、俺がパンツ盗んだってことにして2人に言ったのかな? ま、どうせ言っても信じてもらえないだろうけど。
「ねえあっちゃん、王都出る時って税金かかるのかな?」
「いや、いらなかったと思うけどな。確か、アレだ。名前と役職を伝えなきゃだったと思う」
「名前と役職かぁ……」
スコットが苦笑いする。
俺たち3人とも、今は無職だけど少し前まで勇者と魔王と魔王軍騎士団長だったヤツらだ。
ちゃんと王都から出してもらえるか心配になってきた。
***
「私、このクソパーティから抜けるわ」
「あたしも、今日限りで抜けさせてもらいます」
【黄金の輝き】の本拠地の玄関。
冷たい瞳をした2人の美女・美少女は、アホ面で立ち尽くすアホのライドに向かって、パーティ脱退を言い放った。
「ふっ――ふざけんなよ!」
「それは私のセリフだから、普通に。このパーティからアーサーを追放するとか馬鹿なの? さっさと死んでくれない?」
「アーサーさんがいないパーティなんて、嫌です」
「おい待てよ! オレじゃ満足できないってのか? お前らが望むなら毎晩部屋に行って夜の世話でも――」
「黙れカス。キモすぎ。普通に死んで」
「そこまで言わなくても……謝るって……いやまじで冗談だから……」
どんどん声が小さくなっていくライド。
少し前までの威勢はない。
しかし、ある情報を思い出し、一気に表情を明るくした。
「残念だけどな、それはできない相談なんだよ! パーティから1人脱退したら、最低でも1年は他の脱退者を出せないってルールがあんだ!」
「……地獄に落ちてくれる?」
親指を下に向けながら、セイラがキリっとした切れ長の瞳でライドを睨む。
「国の方針なんだから仕方ねぇだろ! はっ! 1年たったらお前らもオレにメロメロになってるかもしれないぜ!」
「それはあり得ません。本気で」
「お、おう……なんか自信なくなってきたんですけど……」
「あんたなんか、アーサーの功績を我が物のようにして威張る、ただの弱虫でしょ。王都の盗賊職の中でも、大した実力持ってないくせによく言うわ」
「おい、今オレを馬鹿にしたな?」
「いいえ、アホにした」
「好きなだけ言ってろよ。いいか、じゃあオレが次の任務で証明してやる! アーサーとかいう超かっこよくて頼りになって、優しいところが最高で、リーダーシップまで兼ね備えた男の中の男であり、世界から褒め称えられるべき勇者の中の勇者なんかいなくても、このパーティはやっていけるってことをな!」
「なんか褒めてませんか……?」
「こんなカスに同意するのは嫌だけど、確かにアーサーを褒めるところだけはセンスあるわね」
そんなセイラの言葉を聞き、ライドが誇らしげな表情をする。
「当然だろ! オレは誰よりもアーサーを評価してるんだ! あいつより凄いヤツなんて見たことないからな!」
「じゃあなんで追放したんですか……?」
先ほどからツッコミ役に回っているヌーナは、心底呆れた顔でライドを見ていた。