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使命と責任

7000PVあざす!

毎日19時頃投稿予定です。

「緑属性」の真髄を探るため、俺は図書館の奥底に眠る資料を漁った。その中で、この属性に関するわずかな記述が、一般の生徒には目につかない奥まった場所に配置されていることに気づく。


さらに、これは、図書館だけの話ではない、学園内の特定のエリア、一般の生徒が寄り付かない場所に緑属性の実践的な研究が行われている場所がある。


俺は、それを思い出し、学園の広大な敷地の片隅へと足を踏み入れた。


高い生垣に囲まれ、ひっそりと隠されたその場所は、陽の光が燦々と降り注ぐ、手入れの行き届いた薬草園と畑だった。あたりには土と植物の青い香りが満ち、微かに温かい魔素の気配が漂っている。


生垣の隙間から中を覗くと、そこに一人の少女がいた。腰まで届く豊かな若草色の髪を揺らしながら、彼女はかがみ込み、小さな苗木にそっと手をかざしている。


その指先から、確かに緑色の淡い光が流れ出し、苗木がまるで生きているかのように、瑞々しく成長していくのが見えた。


セレスティア・ユーグライト。学園内でも何度か見かけ、努めて目立たないようにするその姿に、俺は自身の境遇を重ねていた。


しかし、まさか、ユーグライト家という、帝国でもそれなりに名の通った家の息女が、緑属性の使い手だったとは。


俺は好奇心を抑えきれず、静かに生垣をくぐり、彼女に近づいた。


「何をしているんですか?」


俺の声に、セレスティアはビクリと肩を震わせ、振り返った。その瞳には、警戒と、そして少しの怯えが宿っていた。人目を避けて魔法を使っていたのだろう。彼女はすぐに手を引っ込め、まるで隠し事が露見したかのように身をすくめる。


「セレスティア・ユーグライト様ですよね?」


俺はできるだけ穏やかな声で問いかけた。彼女は依然として警戒心を解かないまま、小さく頷いた。


「俺はフレイアスト・アトレイディス。あなたの使っているその魔法について、少し聞きたいことがあるんですが」


俺が自分の素性を明かすと、彼女の警戒心は一層高まった。貴族、しかもアトレイディス家の人間が、なぜこんな場所に?そう言いたげな表情だ。


「俺は、五大元素の魔法適性を持たない『落ちこぼれ』です。うわさは聞いているでしょう?」


俺は、自分の境遇を自嘲気味に表し、彼女の警戒心を解こうとした。そして、畳みかけるように続けた。


「俺はその『緑属性』に、純粋な興味があるだけです。既存の理論では説明できない、未知の可能性を秘めていると確信しています。その魔法を、ただ、理解したいんです」


俺の言葉に、セレスティアの警戒していた瞳に、僅かな動揺と、そして困惑が浮かんだ。彼女は、まさか「落ちこぼれ」であり、帝国でも随一の貴族である俺が、自分の能力を偏見なく、それどころか知的好奇心を持って見つめていることに驚いているようだった。


「……本当に、それだけ?」


「それだけです。もし迷惑だというなら、すぐに引き下がります。でも、もし興味があるなら、俺の研究に付き合ってくれませんか? 『緑属性』を、一緒に解き明かしてみませんか?」


俺のまっすぐな視線に、セレスティアの心の壁が少しずつ崩れていくのが分かった。彼女は、まるでこれまで誰にも理解されなかった存在であるかのように、戸惑いながらも、やがて小さく「……少しだけなら」と呟いた。


こうして、互いに学園の「異端者」として孤立していた二人の間に、知的好奇心と共感を軸とした、静かな信頼関係が築かれ始めた。


俺たちは、放課後になるとこの薬草園で顔を合わせ、セレスティアは植物に魔法を行使し、俺はその原理を観察し、問いを投げかけた。


彼女は最初はぎこちなかったが、俺の偏見のない質問と、彼女の魔法に対する純粋な探求心に触れるうち、少しずつ自分の経験や知識を語るようになっていった。


そして、この緑属性は、ただのおまじないなどではないと確信した。生態系全体に干渉し、生命の摂理を操るような、根源的な力を持つ可能性を秘めている。


緑属性がこれまで冷遇されてきたのは、帝国の、成り立ちに起因した性質によるものだろう。


しかし、この魔法が確立され、正しく使われるようになれば様々な問題が解決できるようになると俺は思う。


その一つが、平民の立場の改善。


多くの平民が緑属性の適性を持っている。


この大きな可能性を秘めた魔法が確立されるようになれば、間違いなく変革が起こる。


俺は、可能性を切り開く使命感と、それに伴う責任の恐怖を感じていた。

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