縮図
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学園に入学して数週間が経ち、この場所の隠れた力関係が、俺の目にもはっきりと見え始めていた。その頂点に君臨するのは、間違いなく第一皇子カイン・ヴァレトゥス・カナティオだった。
彼は、自身の圧倒的な魔力と、何よりも帝国を統べる者の嫡男という血筋を活用して、学園全体を統治しているかのようだった。
廊下を歩くカインとその取り巻き貴族たちの姿は、まるで「王の道」を闊歩しているようだった。彼らが来るのがわかると、他の生徒たちはまるで波が引くように道を譲り、壁際に張り付く。
誰もが彼らの視線を避け、その存在を恐れているのが見て取れた。彼らの周りには、常に有無を言わさぬ絶対的な空気が漂い、その傲慢な気配は、俺の神経を逆撫でするに十分だった。
食堂での彼の存在感は、さらに顕著だった。中央の豪華なテーブルに座るカインのグループだけは、他の貴族生徒たちの特別メニューすら霞むほどの、贅を尽くした料理が並べられていた。
まるで、彼らの席だけが、学園という空間の中に存在する、別の「特権階級の領域」であるかのようだった。
カインが発言するたびに、周囲の貴族生徒たちの視線は彼に集中し、その反応は一挙手一投足に左右される。彼らの間に存在する絶対的な主従関係が、そこにはあった。
授業中も、カインの態度は変わらなかった。
彼が発言する際には、教師も周りの生徒も一瞬静まり返り、彼の言葉に耳を傾ける。彼の知識は確かに深かった。歴史、魔法理論、政治経済……どの分野においても、彼は模範的な回答を完璧にこなした。
しかし、俺にはその「完璧さ」が、どこか不自然に、演じられているかのように感じられた。まるで、彼が完璧であることを義務付けられ、その役割を寸分違わず演じているかのような違和感。
俺の直感は、彼の底知れない傲慢さの裏に、何か別の「不気味さ」が隠されていることを告げていた。
そして、カインは、自身のグループを率いて移動する際、必ず俺たち「はみ出し者」グループの近くを通り過ぎた。
そのたびに、彼の視線はまず、アストリアの銀髪を捉える。
その瞳は、まるで高価な美術品を品定めするような、あるいはすでに自分の所有物であることを確信しているような、冷たく執拗な光を宿していた。その視線は、周囲の誰もが畏怖する第一皇子の、歪んだ執着を物語っていた。
俺が隣にいることに気づくと、その視線は一時的に俺にも向けられるが、それはアストリアへのそれとは明らかに異なる、汚れた異物を見るような、純粋な侮蔑の色が強いものだった。
(皇子……アトレイディス家を気に食わないと思っていたが、それだけではなさそうだ。彼は、アストリアをまるで芸術品の一つとして見ているようだ。)
俺は、カインがアストリアに対して並々ならぬ執着を抱いていることを敏感に感じ取っていた。
そして、彼が俺に対する明確な敵意を持っていることも。
アストリアに向けられるその視線を見るたびに、俺の胸にはカインに対する警戒心と、言いようのない嫌悪感が日々募っていった。
この学園で、彼という存在は、俺が越えるべき障壁となる予感がしていた。
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