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クラス

毎日19時頃投稿予定です。

教室のドアをくぐると、いくつかの視線がこちらに集まるのを感じた。


黒髪は目立つ……。


「もしかして、あれがジークハルト様の?」


「うん、たぶん噂の……」


すでに噂は広まっているようだ。あちこちでひそひそ言い合っているのが聞こえてくる。


はぁ、と内心でため息をつく。影のように過ごしたい、という俺のささやかな願いは、どうやら初日から打ち砕かれるようだ。


席は完全に自由。早い者勝ちだ。狙っていた窓際の席はすでに埋まっている。


次に目を付けたのは最も目立たないであろう後ろから二列目の席。だがやはり後ろも人気のようだ、ほとんど埋まっている。


ひとつだけ、最も廊下側の席だけ空いている。教室の入り口から近いことが少し懸念点ではあるが妥協ラインだ。


俺は最も廊下側の席で後ろから二番目の席に座る。


いいポジションを取れたほうだ。


俺がその席に着いてから、周りの席に座る者はいなかった……。


教室内はざわめきこそ続いていたものの、俺の周囲だけ、小さな真空地帯ができたかのようだった。ひそひそ話の音量がわずかに下がり、俺へと向けられる視線の数が、座る前よりも増したように感じられた。


それはまるで、珍しい獣を囲むような、値踏みと好奇心の混じった視線だった。息を詰めるような沈黙ではないが、かといって歓迎の気配も微塵もない。


その要因の一つであろうこの制服……。


学園の制服は二種類ある。貴族が着る装飾が施された制服と、平民の特別聴講生が着る、シンプルな制服。


俺は補欠合格ゆえに、特別聴講生と同じ制服を着用していた。


教室を見渡すと俺と同じ制服の者が数人いる。肩身が狭いのか、隅の方で固まって座っている。


彼らも俺の噂は耳にしているのであろう。視線を送ってくるが、警戒の色が見える。


貴族からも平民からも奇異な視線で見られる。悪目立ちは避けようがなかった。


「ここ、空いているかしら?」


声の正体はあの既視感のある銀髪の少女だった。


綺麗な銀髪に見惚れる。やはりどこかで見たことがあるような……。


「聞いてる? もしかしてもう先客がいる?」


「あ、いや。空いていると思うよ?」


「そう」


そう言って少女は俺の後ろの席に座る。


「君。なんで黒髪?」


「え?」


正直面くらった、他の生徒が誰も俺に話しかけない中、しかも帝国では忌避される黒髪のことを第一声の質問で聞いてくるとは。


「これは、その……」


どう説明したものか……。


「名前は?」


「……フレイアスト」


「やっぱり」


「は?」


「私の事忘れちゃった?」


既視感は気のせいではなかった? ……だが思い出せない。


「失礼ですが、どちら様で?」


「……リア」


リア……。やっぱりわからない。


「……すみません」


「そっか……。アストリア・グレイよ」


グレイ? 聞いたことはない。制服からして彼女も平民か?


「フレイアスト・フォン・アトレイディスです。アストリアさんはどこかで僕と?」


「知らない」


機嫌を損ねたようだ……。


「本当にすみません……幼いころに面識があったのでしょうか?」


「知らない」


だめだ……。


「あのアストリアさん?」


「リアって呼んでたのに……」


「リア」


「忘れてるくせにそう呼ばないで」


「……ごめんなさい」


「フレイが思い出すまで許さないから」


「はい……」



~その夜~


クラスで簡単な説明を受けて、俺は学園内にある男子寮へと案内される。


流石は帝国一の名門校。一人一人に個室が用意されている。


ベッドの個室に腰掛けながら、荷物の整理を空間魔法で行いつつ、今日の出来事を振り返る。


入学式でまさかの第一皇子対生徒会長の論戦。


俺に対する周りの評価。


そして銀髪の少女、アストリアとの再会?


初日から濃い一日だった。


学園内はまるで帝国の縮図だ。


今後、俺に対する風当たりが強くなることも予想される。


そんなことよりもだ、俺はアストリアのことが気掛かりだ。


一体いつどこで出会ったのか。


俺の記憶がはっきりしているのは五歳から、だとするとそれ以前に出会っていた?


あの銀髪、どこかで見たことがあると思っていたが、思い返せば以前屋敷で話しかけられた父の協力者と名乗っていた怪しい人物と同じだ。


銀髪はそこまで珍しくないが、どことなく雰囲気が似ている気もしないでもない。


関係者か?


今は断定できないが心にとどめておこう。


「リア……」


呟いてみると、どこか懐かしさを覚えないでもない。


本当に過去に出会っているとして、思い出すことが出来る日は来るのだろうか?


今のところ彼女からヒントをもらえる様子はない……。


サンに彼女の身辺調査を依頼するか?


……いや、それはない。……まるでストーカーだ。


それに、自分で思い出したい。


俺が忘れていることを彼女はどこか寂しそうにしていた。


自力で思い出すことがせめてもの誠意だ。


明日からは一年生全体でのオリエンテーションである学園施設説明がある。


そこで何かきっかけをつかめればいいのだが……。

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