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第二部 プロローグ

連載再開します! 毎日19時頃投稿予定です。

タイトル変更しました。



「はぁ……」


重々しいため息が、ロウソクの明かりが揺れる屋敷の一室に沈んだ。


目の前の豪華な装飾が施されたソファに、まるで自分の屋敷のようにくつろぐ男は、夜闇を照らす月を彷彿とさせる銀色の髪と燃えるような紅い瞳を持っており、どこか飄々としていた。


「なんだチェスター? お前がため息とは珍しい」


男は、チェスターの苦悩などどこ吹く風とばかりに、薄い笑みを浮かべた。紅い瞳が愉しげに細められる。


「貴様のせいでもあるんだぞ?」


チェスターは苛立ちを隠さずに言い放った。辺境伯としての重責と、一人の父親としての苦労が、その顔に深く刻まれている。


「何? 私のせいだと?」


男はそう問い返した。


「そうだ。国境から最も近いリーゼ村の消失。私に伝えてどうしろと言うのだ? 貴様がなんとかしろ」


リーゼ村。帝国との境界近くにあった、魔王領のごく小さな村。その村が、文字通り跡形もなく消え去ったのだ。


……魔力の痕跡すら残さずに。


「……」


男は沈黙した。


「お宅の優秀な宰相殿に任せておけばいいだろう?」


「ゼノか……。あいつは忙しいからな」


その言葉にチェスターは再び苛立ちを覚えた。


「私も忙しい。長男のジークは勝手に婚約者を決めて、次男のフレイは突然失踪。マーシャに至っては帝都で好き勝手している」


チェスターの言葉には、紛れもない疲労が滲んでいた。家長としての葛藤と辺境伯としての職務は彼の精神を着実にすり減らしている。


「最後は自業自得だな」


男は愉快そうに言った。その言葉に反論の余地がないのか、チェスターも黙るしかなかった。


「ま、まあジーク君は立派になったし、フレイ君に関しては心配することはないさ。きっとその内戻る……戻らなければ私も困る」


そう言いよどむ。


「ジークはまだ子供だ。危うさが残る。その反面、フレイは大人び過ぎている。その点ではあいつも危うい」


長男の暴走と、次男の掴みどころのない行動。どちらもチェスターの心を休ませることはない。


「親とは大変だな……。私も娘に嫌われているのだろう」


遠い目をしながら呟く。その言葉には、普段の飄々とした態度とは裏腹に、わずかな寂しさが混じっているように見えた。


「それは貴様の自業自得だ」


チェスターは即座に言い放ち、男の表情にわずかな苦渋が浮かぶのを見て、満足そうだった。


「フッ…、まあなんにせよ今回の件は助かった。これからも協力関係で行こう」


男は本来の目的へと話を戻す。その顔から笑みが消え、冷酷な雰囲気を漂わせた。


「ああ、だがリーゼ村のことは知らんぞ? 貴様がなんとかしろ」


「……あの村のことは置いておこう。今すぐには解決できない、ゼノの手が空いたら頼むことにするさ」


そうあっさりと引き下がる。


「最初からそうしておけ」


「フッ、相変わらず手厳しいな。……それではそろそろ帰ろうかな。くれぐれも我々の計画に気付かれるようなへまはするなよ?」


男は立ち上がり、静かに部屋の出口へと向かう。


「貴様こそ早くお前の軍を束ねておけ」


チェスターは男の背中に向かって言い放った。魔王軍内部も一枚岩ではないことをチェスターは知っていた。


両者の思惑が複雑に絡み合い、ますます更けていく帝国の夜に溶け込み、着実に浸透していくかのようだった。

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