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外伝:ジークハルト 学園編10

5000PVあざす! 近々、毎日投稿を再開しようと考えています!

第二部開始とともに、タイトル変更する予定です。

是非、ブックマークしてお待ちいただければ幸いです。

曲が変わり、少し激しめのテンポになる。


「うっ……」


キサラが焦っている、はじめてにしては上出来だがこれ以上はきついだろう。


「きついか?」


「……」


強情なやつだ。だがこれはこいつが背負っているものに起因しているのだろう。


あの時の庭園で見せた涙。あれはずっと俺の心の中に残っている。


両親を魔族の襲撃によって亡くし、一人で弟たちを養う未来を切り開こうと、この学園で肩身の狭い扱いを受けながらも必死にあがいている。


平民ではあるが高潔な意志を持っている。


少なくともこいつの村があった領主の貴族よりかは立派だ。いや、村人を見捨てた貴族と比べるものではないな。


「痛っ……」


キサラがつまずく。限界か。


「無理はするな、あとは俺に任せておけ」


キサラを抱き寄せ、支える。


曲はクライマックスだ。


残り一小節。俺は片手を挙げ魔法を発動させる。


天井近くに発生させた無数の水滴は氷に変わり、それらは会場の光を反射しながらひらひらと落下していく。


「おぉ…」


会場に降り注ぐ季節外れの雪にその場にいた全員が視線を奪われる。


「綺麗……」


腕の中にいるキサラが呟く。


パチパチパチ…


曲が終わるとともに会場が歓声に包まれる。想定以上だ……


「ふぅっ……」


俺は一呼吸置く。演出は上手くいったが、……ここからだ。


「……みな聞け!」


会場の全ての視線が俺に集まる。


「私、ジークハルト・フォン・アトレイディスは、ここにいる彼女、キサラとの婚儀を結ぶことをここに宣言する!」


………


まあそうなるだろう。キサラに目をやると口を開けて固まっている。


「フッ…」


……パチ…パチ…


小さくはあるが拍手をするものがいる。いつかの緑魔法の特別聴講生だ。


パチパチパチパチ


拍手の輪は広がり、会場全体を埋め尽くす。


「じ、ジーク……?! なにを?!」


「行くぞ」


唖然とするキサラを連れて会場を後にする。



ーーーー



私はジークに引っ張られ、庭園まで来ていた。


「はあ……傑作だったな!」


何が面白いのか、ジークは上機嫌で笑っている。


「ちょっと! どういうこと!?」


「ははは、見たか? 俺のカリスマ性を! 平民だけでなく全ての貴族は俺の手中だ!」


「……そ、そんな事、いまはいいから! ちゃんと説明して!」


ジークの顔を見つめると、真剣な表情で見つめ返してきた。


「説明もなにも、そういうことだ」


「どういうことよ!」


本当に意味が分からない。


「はぁ……俺の宣言が聞こえていなかったか?」


「聞こえてたわよ、何? コンギって。私は何を結ばされたの?」


「はあ? お前は馬鹿ではないと思っていたが俺の勘違いか?」


「失礼な! あなたの説明が悪いの。ちゃんと説明してもらわないと分からないことだってあるわよ!」


「……仕方ない」


ジークがいつになく真剣な表情に変わる。普段とは違うその表情に胸が高鳴るのを感じた……


「キサラ。俺と結婚しろ」


「え?」


「だから、結婚だ」


「どういうこと?」


「言わせるな……俺は、お前が好きだ」


コンギって、婚儀!?


「え、で、でも私は……」


「忘れたか? 俺の決定は絶対だ。お前に拒否権はない」


「は、はい……」


思わずはいって言っちゃったけど、どういうこと!?


「ちょ、ちょっと待って」


「なんだ? 嫌か?」


「い、嫌じゃ…ない……けど…」


嫌じゃない! けど、こんなことはあり得ない! 私はただの平民の娘でたまたま風属性魔法の適性があるだけの人間だ。帝国の大貴族と結婚なんて!


「どちらにしろ俺が決めたことだ、もう覆らない。覚悟しろ」


「でも私は平民で……」


「だから?」


「ジークは辺境伯家の人間で……結婚相手はそれにふさわしい貴族家の方が……」


「関係ないな。俺にそんな理屈は通用しない」


「……」


「キサラ。お前は俺が守ると決めた。お前はその決定に従え」


その瞬間。目から涙があふれてくる。止めようとしても止まらない。


「お、おい泣くな! 俺はお前の涙を見たくないからッ……」


「ありがとう……。悲しくて泣いているんじゃないよ? 嬉しいの」


そうだ。うれしいんだ。今まで私は一人で戦ってきた。誰にも守られず、それでも弟たちを守るために一生懸命だった。つらかったのかもしれない、苦しかったのかもしれない。


ジークに抱き寄せられる。


「もう何も心配するな。俺にまかせておけ」


「……うん」


やっぱりジークは優しかった。



ーーーー



~卒業式~


ジークハルトは卒業生代表の挨拶を述べる。


「今日ここをもって我々は、学園から去る。この三年間、それぞれに学び、成長したことだろう。苦難や後悔したこともあるだろう。だが、それらは確実に自身の糧となったはずだ! 俺に苦難や後悔はないが、それは俺が特別だからである。しかし、この先もそうであるとは限らない。だが俺はそれらをすべて乗り越える。お前たちとともに! 俺が学園で手に入れたもの、それはお前たちだ! これから先の帝国は俺たちが引っ張っていく! 学園の卒業は終わりではない、始まりだ! みな、俺に続け! 歩みを止めるな!」


「うおぉぉぉ!」


彼の型破りのスピーチは、彼の歩んできた学園生活を如実に表している。


貴族と平民の間にあった溝は埋まることはないが、彼の行いによって確実に変化していた。


その代表例が、彼が宣言したキサラという平民との婚約宣言からなる生徒たちの反応に現れている。


彼がキサラを婚約者に選んだことにより、彼女に対するいじめは完全になくなった。アトレイディス家に害をなそうとする貴族などいないからだ。


当初は反感を買った。特に同学年の貴族は手は出さないものの、良くは思っていなかった。


しかし、後輩たちは必ずしもそうではなかった。貴族と平民の禁断の恋。ジークハルトがそれを意識していたのかは定かではないが、生徒たちの中ではもっぱらそのことが話題にあげられ、憧れの的となっていた。


さらには彼のよくも悪くも頑なな性格が高潔な精神と判断され、彼の優秀な成績とフェノクと噂される類いまれなる魔法の才によって彼は異常なまでのカリスマ性を発揮していた。


そして、ジークハルト様親衛隊と名乗る団体が彼を神格化していき、信仰とも呼べるものを学園中に広めていく。


それがのちに入学する彼の弟、フレイアストを苦しめることとなるのだが……



ー外伝:ジークハルト 学園編 完ー


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