外伝:ジークハルト 学園編7
「それではジークハルト・フォン・アトレイディス君。生徒会長への立候補理由と公約の宣言をおねがいします」
「はい」
俺は壇上から生徒を見渡す。見た感じでは、みな俺の言葉に興味を抱いているようだ。当然か。
「アトレイディス家の次期当主筆頭。ジークハルトだ。立候補理由はそれが当然であるから」
ざわざわ……
「というのは冗談……ではない。みなの知っての通り生徒会長への立候補者は俺しかいない。なぜか? お前たち下級貴族は、より上位の貴族に媚びを売るしか能がないからだ。反論がある者は?」
……
「そうだろうな……。これは帝国の貴族社会における深刻な問題だ。お前たちの地位は何によって決められている? 能力か? 人格か? いや違う……。家だ」
「そ、それは違います! 我々貴族は五元素の適性をもって生まれます。その能力は平民とは明らかに違う!」
「そうだ、そうだ!」
がやがや…
「……フッ、やはり家だろ? 五元素を持って生まれたのは貴族家がその血を取り入れ続けたからだ。この事実に目を背ける貴族は多い。生まれながらに自分が特別な存在だと認めたいからな」
……
「しかし、俺はそのことを否定しない! 貴族とは生まれながらに特別な存在である! 故に責任が生じる。そのことを忘れてはいないか?」
ざわざわ…
「帝国の貴族は何のために存在する? それは帝国のためだ! 決して貴様らのためではない! 帝国のため、ひいては帝国の民のため。帝国の正義はそこにある! しかし、今の停滞した帝国では不十分だ! 魔族の打倒! 俺がアトレイディス家の当主になった暁にはそれを実現する。そのためには、全ての才能が正当に評価され、効率的に機能する社会。そしてそれを先導する真の正義を持った貴族の台頭。これが不可欠であると考える! そのためにまず学園からの変革が必要だ。よって俺はここに宣言する、すべての生徒が分け隔てなく評価される学園を打ち立てることを!」
「「うおぉぉぉ!」」
「最後に再び言おう。俺が生徒会長になるのは当然だ。ここは俺の単なる通過点に過ぎない。貴様らは俺に続け! 帝国の正義を俺が体現する!」
ーーーー
案の定俺は生徒会長になった。他に立候補者がいないからではない。
その証拠に俺の学園での評価は上がり続け、ジークハルト様親衛隊なるものまで組織された。
「ジークハルト様! 生徒会長への就任おめでとうございます!」
「フッ…当然のことだ」
「さすがです! ジークハルト様! その高潔な意思は学園中に広まっております!」
やはり俺こそが次代の帝国を担う要なのだ。
「ここを通すことは許さん!」
ん? なんだ? 騒がしいな
「あ、あの! 通して下さい! ジークハルト様にすこしお話を……」
特別聴講生か?
「平民がジークハルト様に近寄るな! ジークハルト様はお忙しいのだ、平民に付き合っている暇などない!」
「で、でも…ジークハルト様はすべての生徒が分け隔てなく評価される学園をと言っておりました。特別聴講生である私たちの話も……」
「勘違いするな! ジークハルト様の意図は貴族の中での話だ。下級貴族であろうとも能力と正義があれば自らが取り立てる。そうおっしゃったのだ!」
「ち、違います! ジークハルト様は間違いなく全てのとおっしゃいました。学園からの変革とは私たち平民も正当に評価するということです!」
「だまれ! 平民風情が知ったようなことを聞くな!『効率的に機能する社会。そしてそれを先導する真の正義を持った貴族の台頭』ジークハルト様はそうおっしゃられた、平民も評価するなど一言も言ってはいない!」
「で、でも!」
「うるさい! さっさと下がれ!」
「そこまでだ!」
「じ、ジークハルト様!」
「どちらの解釈も間違っていない。特別聴講生。君の話を聞こうか?」
「は、はい!」
俺は特別聴講生につれられて学園にある畑まで来ていた。
「す、すみません。ジークハルト様をこのようなところまでお連れ建てして……」
「かまわん、何かあるのだろう? 俺をここまで呼び出すこと。それに俺の演説を聞いたうえでの行動と考えれば君がなにか俺に有用性を示そうとしているのは分かる」
「あ、ありがとうございます! これを見てください!」
そこには一つの鉢に花が咲いているだけだ。
「ん? どれだ?」
「この花です!」
「それがどうした?」
「この花はこの季節には咲かないのです! この花は私たちが緑属性で植物の成長を操作したことを証明しています!」
「なるほど。つまりはこういうことか? 緑属性の研究が進めば作物の収穫時期を操作でき、将来的には食料事情の改善につながる。どうだ?」
「はい! その通りです! ど、どうでしょうか?……」
「悪くないな。続けろ。何か必要なことがあれば生徒会長である俺に言え」
「は、はい! ありがとうございます!」
なるほどな、緑属性か。これまで帝国で軽視される適性ではあったが、帝国もそこまで愚かではないのかもしれない。特別聴講生として緑属性の適性を持つ者を学園に入学させるようになったのは最近のことだ。
……ん? あれは。
「キサラ。こんなとこで何をしているんだ?」
彼女は庭園にあるベンチに腰掛け、うつむいている。
「ジーク……」
「な! どうした!? 泣いているのか?」
「な、泣いてはいないわよ! ……でも。ううん何でもない!」
そう言って彼女はパッと笑顔を浮かべる。
「どうした?」
「本当になんでもないの。ちょっと庭園の景色を眺めてぼーっとしていたら、弟たちのことが浮かんできて気になっただけ」
「……弟か。……元気にしているのだろう?」
「うん……」
「ん? おい。その教科書はどうした?」
キサラが膝の上で抱えていた教科書をよく見るとぼろぼろになっており、ところどころ切り傷があるのが見えた。
「……」
「誰にやられた?」
「……わからない」
「そうか……俺の公約のせいか」
「ち、違う! それだけは絶対に違うよ!」
「すまなかったな……」
「ジークが謝ることは何もないよ! 立派な公約だと思う」
「チッ…はぁ。……決めた」
「え? なにを?」
「……なんでもない」
「何か考えているなら私にも教えて? 私のために無理をするのはやめて」
「うるさい。俺に無理などない」
「……ジーク」
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チッハー決めた




