外伝:ジークハルト 学園編1
まさかのジークハルトの外伝です。
俺はジークハルト。あの名門、アトレイディス家の長男だ。
俺は帝国の首都にある学園、名門カナティオ帝立学園に入学を果たした。
「ジークハルト様! おはようございます!」
次々と繰り返される同じような挨拶に、少々うんざりしながらも笑顔を絶やさず返答する。これが名門たるアトレイディス家の長男の余裕である。
歩くたびに「ジークハルト様……!」という女生徒たちの熱を帯びた視線と囁きが、ひそやかな波紋のように俺を取り囲む。
同年代に俺以上の爵位をもつ貴族家出身の者はいない。よってこれが当然の反応だ、これが俺の普通なのだ。
なのだが……あの女だけは……
俺は成績も優秀で貴族の中では一番だった。そう、貴族の中ではだ……
同じ学年の中に一人、平民でありながら俺よりも目立つ少女がいた。そもそもこの名門に平民などいていいはずがないのだが、帝国は近年、”特別聴講生”としてこの名門である帝立学園に平民の入学を認めている。そしてあいつはその中でも異質だ。平民でありながら五元素の一つである風属性の適性を持ち、それだけに飽き足らず座学でも実技でも俺の一つ上を行く。
あいつさえいなければ俺は名実ともにトップだったというのに。
平民に負けるなどあってはならないことだ。
平民でありながら五元素の適性を持つこと自体が珍しい、その上に成績も優秀。そんな異質な存在。これは俺にとっては不運だ。
だが不運だからといって俺の上にいることは許せない。
「よう平民の女」
「おはようございます。ジークムント様。それと、私はキサラと申します。覚えていただければ幸いです」
「おい、女! おれはジークハルトだ! 間違えるな!」
「大変失礼いたしました、ジークハルト様。それとオンナという名前ではありません」
「なんだと? 女ぁ」
「……はぁ。……では急いでいるので」
「おい! 待て! ……くそっコケにしやがって」
逃げ足の速い女だ、それにこの俺に不敬な態度を取るとは身の程知らずのやつだ。父上に言いつけてあいつの家を潰してやろう。
ちょうどいい、明日から一時屋敷へと帰宅して母上を迎えに行くことになっていたのだ。そのついでに父上に相談しよう。
~翌日~
一時屋敷に帰宅したジークハルトは父に早速直談判をしに行く。
「父上! 学園に無礼な女がいるのです! あいつを何とか退学させることは出来ないでしょうか!?」
「なぜ?」
「な、それは平民が栄えあるカナティオ帝立学園に通うなど、学園の格を下げることになりかねません! それに、あいつは平民でありながら風属性の適性を持ち、そのことを鼻にかけて。私のことを軽視しています。帝国の守護であるアトレイディス家に対する明確な侮辱行為です! 即刻退学させるべきです!」
「そう思うならばそうするといい」
「では! 父上が……」
「聞こえなかったか? そうすればいいと言った」
「私では……それは……」
「出来ないのか?」
「……」
「ジーク。アトレイディス家の名を笠に着るな、お前は自身の力で這い上がれ。そうしてお前が力を付けたならばお前の力が及ぶ範囲で好きにすればいい」
アトレイディス家の名を使って何が悪いのか。それも含めて強さではないのか? いや、父上が言いたいことは違うのか、俺はすでに強い。あの女にだって成績は負けているが実践では俺の方が上のはずだ……這い上がるなど……、生まれた時からもうすでに俺は上に立っているのだ!
ギリッ…
「父上! お言葉ですが私はすでに力を付けています……わかりました! すぐにでもあの女は私が学園から追い出して見せます!」
「……お前は少しフレイを見習え」
「なぜあいつが出てくるのですか!? あんな落ちこぼれに何を学べと?」
「はぁ……今日はもういい下がれ。お前には期待している、私の期待を裏切るようなことはするな?」
「はい! 学園で次期アトレイディス家の当主としての力を振るって参ります!」
「……」
ーーーー
父の部屋を後にしたジークは屋敷の廊下を足早に歩く。
「くそ。なぜ父上は俺よりもフレイのことを気にかけるのだ!」
ーーーー
この後、俺はフレイと手合わせをするのだが引き分けという釈然としない終わり方をする。
「くそっ!」
フレイの存在もそうだが、父の考えが読み切れないのも腹立たしい。
何よりもあいつ。あの女だ。
父が何を考えているのかはこの際どうでもいい、いや、どうでも良くはないが……、すべては俺が力を示せば良いだけのこと。
正真正銘アトレイディス家の血を引くこの力の証明。それですべては解決だ。
帝国に於いてアトレイディスを軽視することがどれほどのことか身をもって分からせてやる。
そして俺こそが、真の帝国の要だということを帝国に知らしめる!
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つづきます。




