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勇者召喚

今日は2話分投稿します。毎日19時投稿予定です。

ー聖歴1595年ー


モナト神聖国


大聖堂の前に広がる円形の広場のに十数人の白いローブに身をまとった集団が等間隔で円を組み、祈りをささげるような姿勢で立っていた。


その様子を大聖堂のバルコニーから同じく白色のローブをまとった老人が広場の光景を見下ろしていた。


そこに一人の男が近づいてきて告げる。


「教皇様。勇者召喚の手筈が整いました」


教皇と呼ばれた人物は、その言葉を背中で受け、ゆっくりとうなずくと右手を掲げる。


それを合図に、広場で祈るような姿勢で立っていた集団が一斉に何かを詠唱し始める。


すると、ぼんやりと集団の内側に円形の光が浮かびあがり、一筋の金色の線が魔法陣のようなものを描き始める。


その様子を教皇と呼ばれた老人は満足げに見守っていた。


やがて魔法陣が完成すると、そこからまばゆい光の柱が立ち上る。


「なんと神聖なる光か。これぞ神の威光……。ようやくこれで、邪悪なる魔王を打ち滅ぼすことができるであろう」


教皇は恍惚とした表情で両手を広げ、そう高らかに声を上げる。


やがて、天に立ち上る光の柱は消え。魔法陣の中心には……


……何もなかった。


教皇は両手を広げたまま固まる。


広場の魔法陣は消え去り、周囲にいた白ローブの集団は慌てふためいている。


事態が呑み込めなかった教皇は素早く後ろを振り返り、控えていた男に勢いよく問いかける。


「これはどういうことですか?」


問われた男も状況が理解できず。うろたえた様子で応える。


「こ、これは。私にもわかりません。召喚の儀式は抜かりなく、ここから見た様子だと召喚は成功したように見えたのですが……」


「それならば、勇者はどこですか?」


「言い伝えによれば魔法陣の中心に現れるはずなのですが……」


「いないではないか!」


「も、申し訳ございません! すぐに事態の把握をしてまいります!」


そう言って男は走って広場に向かっていった。




ーーーー




「いっ、いったいどうなっている?」


大慌てで広場まで走ったせいで呼吸が荒い。


「クラウス司教様! 我々も何が何やら……。確かに召喚の儀式は成功し。対象に干渉したことは確実なのですが……」


「でしたらその対象はどこにいるのです? 本来ならば魔法陣の中心に現れるはずでは?」


召喚魔法は様々な空間に干渉し、特定の対象をその場に出現させ、使役したり契約を結んで協力を要請することができる魔法だ。召喚魔法が失敗した時には魔法陣は割れるようにして消失する。


「おっしゃる通りです。反応的には召喚は成功したように見えます。魔法陣は割れずに消失しましたし……」


確かにその通りだ。私の目から見ても召喚は間違いなく成功したように見えた。


「ですが、結果的には召喚対象はこの場に現れていない。ということは失敗いたということか……」


「司教様。対象が何らかの理由で別の場所に現れたということは考えられませんでしょうか?」


「なるほど……勇者召喚ともなると事例も極端に少ないですし、あるいはそういうことが起こり得るのかもしれませんね……。わかりました。今はそのように考えて、教皇様にお伝えしてきます。直接召喚に関わったあなた方は何か手掛かりがないか検討しておいてください」


「かしこまりました」


とりあえずは教皇様にこのことをお伝えするとして。もし勇者がこの世界のどこかに召喚されたとなるとどのように見つければよいか……。国内にいればまだいいですが、帝国側の大陸にいるならば少々厄介なことになるやもしれませんね。


急ぎ、教皇様に伝えねば。



ーーーー



「教皇様。事態を把握してまいりました。召喚に関わったものから話を聞いたところ、召喚は成功したと思われます。この場に勇者が現れなった理由は、……推測になるのですが。何らかのアクシデントにより、他の場所に現れたのではないかと……」


「そうですか。でしたらすぐにでも見つけてきなさい」


「しかし、誰が勇者なのか見当もつきません。闇雲に探しても見つかるかどうか……」


勇者が自分から勇者ですと名乗り出てくれれば簡単なのだが、召喚された当の本人に勇者であるという自覚はない。世界中から勇者を募っても名乗り出てくれるかどうか。むしろ急に見知らぬ世界に飛ばされてきた人間がこちらに友好的に接してくれるかどうかは怪しいところだ。召喚の儀式で予定通り現れてくれていればそれなりの用意があったものの。全くどうしたものか。


「クラウス司教。もう一度召喚の儀式を行うことは出来ないのですか?」


「すぐには無理でしょう。勇者召喚をよく思わない帝国に気づかれないよう工作をするのはもちろんのこと、今回の事態を隠蔽することも必要でしょう。また、次こそは確実にこの地に召喚するために念入りにな準備も必要となります。少なくとも十数年は実行できないかと……」


「そうですか。何としても魔王を打ち滅ぼさねば世界は混迷の時代に突入してしまうでしょう。再び勇者召喚の準備を整えつつ、この世界に召喚されたかもしれない勇者を何としても探し出してください」


「かしこまりました。では失礼します」


勇者召喚の対象になる者は決してランダムに選ばれるわけではない。少なくとも勇者の素質があるものが対象になる。であるならば、どこにいたとしても必然的にその名は広まるであろう。


もしかしたら、こちらから協力を要請せずとも、自ら魔王を討伐してくれるかもしれない。しかし、神聖国に敵対することも可能性としてないではない。


帝国も同盟関係であるとはいえ友好的な関係とは言えない、過去には戦争もしている。


そして最悪なのは魔王側につくことだ……


仮にこの世界のどこかに勇者が召喚されているならばその者を取り込んだ勢力が大きな力を手にするだろう。


勇者召喚を強行するべきではなかったのかもしれない……


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