スケルトンの軍勢 後半
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スケルトンの大群がリーゼ村の寸前で整列していた。その様子をリーゼ村の人々は戦闘態勢に移行しながらも見守っていた。
そこに長身でやせ細り頬がこけた、いかにも不健康そうな男が前に出てくる。
「私は魔王軍幹部、死使いベノク・トートベンズである! この村の代表者を出せ!」
「わしが村長であります。ベノク様、このような辺境の村までお越しくださるとは、何用でございましょう?」
ーーーー
「はぁ間に合った……」
村に着いた俺はルミナを見つけて隣に立った。
「え。レイどうしたの!? 偵察に行ったんじゃ?」
「シーッ…声が大きいよ。それよりどうなってんの?」
「わかんない……あんまりいい予感はしないけど……」
全速力で戻って来たのだが、これはどういう状況だ? あの男は魔王軍の幹部と言ったか?
「これより数日の内に、南の洞窟を抜け、帝国領内に新たな攻撃拠点を作りあげる! この村からはそのための物資補給を命じる!」
「お、お待ちくだされ! そのようなことは知らされておりません!」
「なぜそのような必要がある? 東部方面司令である私の決定は即座に遂行されて然るべきである」
なんとも横暴なやつだ。上に立つ者はこんなのが多いのか? いや、そんなことよりも、帝国に攻め込むとは聞き捨てならない。
「しかし、物資などと言われましても我らが村は見ての通り辺境にございます、一時の補給であろうとも十分なものは届けられないかと……」
「だまれ! これは命令である。それにいつ一時と言った? 洞窟の先に拠点が完成した暁にはこの村から継続的な物資補給を命ずる。わかったな? これ以上は口を開くな。黙って決定に従え!」
「こ、これは魔王様のご命令なのでしょうか?」
「口を開くなというのが聞こえなかったか?」
「…殺れ」
ベノクと名乗ったその男は後ろに控えていた部下と思しき一人に顎で命令する。
部下が村長の前に進み出て剣を引き抜く
まずいっ! だがここで止めに入ればこの村がどうなるか分からない。後ろに控えているスケルトンの軍勢がこのまま村を蹂躙する可能性もある……
振り上げられた剣は今にも村長の首を落とそうとしている。
考えている暇はない! こんな横暴を見過ごす訳にはいかない!
村長の前に割って入ろうと村人の間を縫って群衆を飛び出す。
剣が振り下ろされる……間に合え!
ガキンッ!
剣は飛んできた黒い槍によって弾かれた。
「なにっ!? 邪魔をするのは誰だ!」
俺ではない。槍が飛んできた方向を見ると、そこにはルミナが立っていた。
「これは反逆罪である! そこの女! その場に膝をつけ!」
「いやよ!」
「なにを!?」
「この村を最前線にはさせない!」
新たに拠点ができるのであれば、そこから一番近いリーゼ村は最前線の村となる。際限なく物資を要求され、徴兵だってされるだろう。
「そうだ! そんな横暴許されるか!」
「ルミナの言う通りだ! この村を巻き込むな!」
「そうだそうだ! 魔王軍はこの村から出ていけ!」
村のみんなが次々と声をあげる。
「ほう? そうか……ではこの村は必要ないな」
ベノクはそう呟くと手に持った黒い石がはめ込まれた禍々しい杖を掲げる。
「全軍!……」
これ以上は黙って見ていることができない!
「やめろっ!」
突撃命令が下る前にベノクを倒そうと全速力で接近して剣を振り下ろす。
ガキンッ
「フッ…」
ベノクは俺を一瞥して鼻で笑う。突如として現れたスケルトンにより攻撃は防がれていた。
「……突撃」
ドオォーン!!
村を囲っていた木の柵が押し倒されスケルトンの大群が村に押し寄せる。
「みんな! 行くよ!」
「「うおぉぉぉ!!!」」
「ショットオブ・ダークバラージッ!!」
ルミナの広範囲闇属性攻撃魔法を皮切りに村人全員がスケルトンの軍勢にめがけて突撃を開始する。
「くそっ、あいつはどこだ!?」
ベノクはどさくさに紛れて後ろへ下がろうとしていた。
「逃がすかっ!」
俺は、いつの間にかベノクの周囲に現れていたスケルトンを次々と薙ぎ払いながらベノクを追いかける。
「小賢しい小僧だ! ……恐怖せよ! ソウルシュリークス……」
ベノクの周りに禍々しい靄が発生し、金切り声のようなものが聞こえてくる。同時に、いわれのない恐怖心が全身を駆け巡った。
「くっ、精神干渉系の魔法か?」
気圧されて立ち止まってしまった……動くことができない!
「……ボーン・クランチ」
ガラララ…
スケルトンたちが音を立てて崩れさる。突如として隙が発生したのだが、恐怖心により動くことが出来ない。
「取り巻きは消えたぞ! 覚悟しろ!」
何もできない俺はせめてもと虚勢を張る。
「ヒヒヒ…周りをよく見るんだな、小僧」
ガラララ…
目の前で骨が積みあがっていき巨大な骨の壁が出来上がっていく。
「ボーン・クランチ。その壁は内側に収束する。骨に押しつぶされてなすすべもなく死んでゆくがよい」
ヒヒヒという嘲るような笑いを残してベノクは立ち去っていく。
いつの間にか俺の周囲は骨の壁で覆われていた。
ガラララ…
さらに壁の内側に数十体のスケルトンが新たに発生する。
「くそぉぉぉ! 待ちやがれッ!」
あふれ出る悔しさや怒りの感情で何とか恐怖心を打ち破り、ただがむしゃらにスケルトンを倒して回る。幸い一体一体は脆く、容易に倒すことができた。
しかし、物量は脅威だった、一人で数十体ものスケルトンを倒すのは骨が折れる。
俺は骨を砕いて回っているのだが……
意外と余裕があるのか? いや、そんなしょうもないことを考えている暇はない。周囲の骨の壁は刻一刻と迫ってきている。
「魔法が使えれば!」
そこに数体のスケルトンが突撃してくる。かわし切れずに押し倒されてしまう。そこに次々とスケルトンが覆いかぶさってくる。
「くっそ…い、息が……」
骨に押しつぶされて死ぬのか? おれはあんなクソ野郎に一太刀も浴びせることなく死んでいくのか?
スケルトンに押しつぶされ目の前が真っ暗になる……闇だ……
暗い……苦しい……動けない……
………
……闇? ……俺の知っている闇はそんなんじゃない……
黒く……澄んでいて……無限に広がる……自由な空間。
ガラ…ガララ…
…ズバーン!
身体の周りから黒い衝撃波のようなものが発生し覆いかぶさっていたスケルトンをすべて吹き飛ばす。
「よくわかんないけど、なんかわかった!」
今のは紛れもなく闇属性魔法だ。
「さぁ反撃開始だ!」
突撃してきたスケルトンを回避し、一気に踏み込んで後方で構えていたスケルトンに突撃、右手に持った剣で貫き、そのまま剣に突き刺したスケルトンごと反転。
さっき回避したスケルトンの背中にもう一本携帯していた小型の剣を投げて突き刺す。と同時に突き刺さった剣から闇が膨張し骨が飛び散る。
その中を、剣に突き刺したスケルトンを盾にしながら突っ切り、そのまま突進してさらに後方にいたスケルトンにぶつけて離脱。すぐさま投げた剣を拾い上げ、態勢を崩した二体に追撃、両手の剣で二連撃を与えて破壊、そして両手の剣を水平にして回転。右斜め後ろと左から挟み込むように接近してきた二体を切り伏せる。
「ハァハァ……撃墜…スコアは?」
……なんだ? 意味不明な言葉が口からついて出る。
ガラララ…
いつの間にか骨の壁は目前まで迫ってきていた。
「くそっ! また骨につぶされるのかよ!」
その直後。
ズドーン! ガラララ…
頭の上まで覆いつくすように積み重なってできていた骨の天井が突如として崩れ、そこから何かが降ってきた。
「なんだ!?」
砂埃の中に人のようなシルエットが浮かぶ。
「42体です」
「は?」
砂埃が晴れ、シルエットの正体がはっきりする。そこには知らない男が立っていた……
「マスターが倒したスケルトンのスコアです」
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ま、ちゅ…




