LPの考察
毎日19時投稿予定です。
『データ移行完了。各部正常に作動を確認』
人間の形に寄せて設計したロボット。
英語に直訳すると、
A robot designed to resemble a human.
略して。ロデア(Ro.De.Re.H)と呼称します。
ロデア初号機で動作テストをしていると、その様子を見たマッド様がいつもの勘違いをしています。
「人体の創造! やはりあなた様は神なのですね!」
『……以前も言いましたが、これは人間ではありません。私のデータを移して操作しているにすぎません』
「なんと! エルピー様が人のお姿を手に入れたと!」
間違ってはいないのでそれでいいでしょう。マッド様は優秀な頭脳を持っている割に、勘違いが酷すぎるのです。
大陸の最北東に拠点を移してから約十年。工場は拡大し、作業用ボットや輸送用カーゴ、自動掘削機など様々な機械が稼働しています。
発電所も拡大し、広大な土地を利用して大量のソーラーパネルと蓄電池でほとんどの電力を供給しています。この星も恒星を周っていて助かりました。
発電手段は多数あるのですが、現状では一番この方法が効率的かつ汚染も抑えられると判断しました。他文明の惑星を過度に汚染することは星間文明保持条約に抵触します。
それはさておき、人型の移動用手段を手に入れたのでそろそろ旅に出ましょう。
マッド様からいろいろとこの世界について尋ねたところ、興味深い話がいくつかありました。中でも注目したのはモナト神聖国の秘術、勇者召喚です。
勇者召喚は召喚魔法の適性を持つ者が多数で行使する特殊な魔法らしく、膨大な魔力を使用してどこかにいる優秀な者を強制的にその場に転移させるといったものらしいです。
これが本当ならば、やはりこの星の魔法という存在について最大限の警戒をすべきでしょう。
魔法については完全に解析ができていないものの。私たちで言うマナと同じようなものと推測します。
マナについては元居た星でも解明されておらず。しかし、その万能的な性質から様々な需要を満たしていました。生活必需品から軍事技術まで。
マナと魔法が同一のものと仮定すると、この星の人類はマナの扱いに長けており、マナを魔法として行使できる驚異的な存在であるとも言えます。
元の星では科学技術が発達して長距離ワープが可能になりましたが、反対にこの星ではマナ技術が発達して魔法による長距離転移が可能になったとも考えられます。
勇者召喚は、その名の通り召喚魔法に分類されるそうです。
召喚魔法についても詳しいことは分からないのですが、どこかから召喚獣を呼び出して使役し、召喚したり戻したりすることができるようです。
しかしながら勇者召喚はその中でも特殊なものに分類されます。
召喚者が複数いることが理由なのか、魔力が膨大に必要であるためか、はたまた別の理由があるのかは分かりませんが、召喚したものを使役したり、戻したりは出来ないそうです。
つまり転移は一方向のみ。呼び寄せることは出来ても、送り込むことは出来ないということです。
そう考えると勇者召喚は召喚魔法ではなく転移魔法なのではと推測しました。
しかし双方向を転移できる転移魔法なるものは、マッド様が知る限りでは存在していないようです。
また、聞く限りでは勇者召喚には制限ともとれるものが存在します。
転移させる対象は、条件に当てはまり、かつその中でランダムに選出されるというものです。
条件とは、身体能力、思考力と知識、それと勇者の素質を持った魂。それぞれ、一定の水準を満たす者。
このように、対象を選んで転移させることは難しいでしょう。
古代文明に存在した”ガチャ”と呼ばれるオーパーツに近いですね。勇者ピックアップガチャの排出対象になったとでも言いましょうか。
それはさておき、勇者召喚は神聖国の秘術ということもあり、その全容は明かされておらず、噂されている内容から考察したにすぎないとマッド様はおっしゃっていました。
しかし、対象を転移させる魔法とは……
ここからはあくまで可能性の一つとして、飛躍的な考察をしてみました。
エアレーの機体性能が身体能力、搭載された私が思考力と知識、そして搭乗していたマスターの魂……
魂という存在については確認されておらず、それも憶測でしかありませんが……
おそらく勇者召喚のタイミングでマスターは命を落としており、一瞬だけ魂と記憶のみが機体内に存在したと仮定しましょう。
そのわずか一瞬だけ、エアレーと私とマスターが一つの個体として認識され、勇者召喚の条件を満たしていた……
ここからはさらに飛躍的な発想なのですが……
本来別々である個体または存在が、同一個体と判定されたことにより、転移する際、私の記録領域にマスターの記憶が書き込まれ、魂については、エアレーもしくは私に定着しなかったために、転移したこの世界で輪廻転生に巻き込まれた……
そして命が尽きていたマスターの体は条件から弾かれて宇宙空間に留まる……
いくつか本来の勇者召喚に含まれない事象が発生したため、その反動で座標がずれて転移。
説明できない点がほとんどなのですが、可能性の一つとして一番確率が高いと判断しました。
全て飛躍した推測ですので、その確率自体限りなく0に近いのですが……
マスターもこの世界に転移、いや転生しているという可能性は0ではありません。
転移魔法は確認されていないようですが、いま推測した勇者召喚では一方向の転移は可能です。
だとするならばその方向を逆にしてしまえば元の星に戻ることが可能なのではないでしょうか?
召喚された時と同じ条件にしてしまえば……
そうするとマスターを見つけ出してエアレーのコックピット内で殺害する必要がありますね。
マスターを見つけ出す方法の一つとして、勇者なるものを探せばそれがマスターだという可能性があります。
ここにいては情報を集めることができませんしマスターを連れてくることもできません。
ロデア初号機が完成し、これで準備は完了しました。衛星軌道上に通信衛星をいくつも打ち上げているので私はどこに行ってもオンラインで活動することが可能です。
ロデアのエネルギー源はマッド様と共同で研究し、空気中の魔素を電力のように溜め込む、マナバッテリーというものを開発しました。定期的な交換が必要ではありますが長時間の稼働が可能です。
マナバッテリーに採用したのがこの星にある特殊な鉱石”クロガネ”です。
”クロガネ”と呼ばれるその鉱石はとても優れた性質を持っています。硬度が高くかなり頑丈で、この星の文明では採掘すら不可能なようです。エアレーの外装を加工した採掘機でないと採掘不可能でした。
そして何より注目すべき点は、その頑丈さを持ちながら魔力伝導効率も高いところです。
エアレーの外装もかなりの硬度を持った金属で作られているのですが、”クロガネ”はそれに匹敵するか、それ以上の硬度を持っています。そのため、はじめは加工に苦労しました。
いえ、正確には今でも”クロガネ”の加工は難しいです。マナバッテリーの大量生産は現時点では不可能です。
クロガネの加工がもっと上手くいくようになれば、かなりの需要を満たすでしょう……
そのため危惧すべきことが一点。この星が私と同程度のテクノロジーを持つ文明に見つかってしまうことです。現時点では見つかっていないのでしょう、その証拠にこの星の文明はまだ残っています……
この星は私のデータにないほど遠くの銀河系に位置するため、星間文明保持条約がこの宙域では適用されない可能性があります。
この星に滞在している間にさらなる他文明との接触があることは確率的に極めて低いので、私が気にすることではないのですが……
まあいいでしょう、どちらにしろ今の優先度はマスターを見つけることが第一です。
『マッド様。私はしばらくこの地を離れます』
「そ、そんな! 私も連れて行ってください!」
『マッド様にはここで頼みたいことがあります』
「な、なんでしょうか?」
『工場の管理と開発。それと私の元の体、エアレーの修復です』
「なんと! そのような大役を与えてくださるのですか!? エルピー様の完全復活に尽力できるのであれば喜んでお受けいたします!」
……まあ納得していただけたのならいいでしょう。
マッド様の能力は優秀です。エアレー専用のマナバッテリー開発に大きく貢献してくれるでしょう。
それに、元の星に戻るためには勇者召喚に匹敵する魔法を使用しなければいけません。
マッド様は魔法をほとんど使用することができないのですが、研究者としては優秀です、魔法の研究も進めていただかなければいけません。
『マッド様。あとは任せましたよ? 通信はいつでもできますが、なるべくリンクス達と協力して研究を進めて下さい。進捗は常に確認しておきますので』
「かしこまりました。このマッド。エルピー様の現世への完全なる降臨の手助けに全力を捧げたいと存じます」
『……では、お願いします……』
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