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ジークハルトの決意

毎日19時投稿予定です。

アトレイディス家の屋敷の廊下を金髪に濃いめの霞色の瞳をもった少年が足早に歩いていた。


「くそ。なぜ父上は俺よりもフレイのことを気にかけるのだ!」


大体、適性なしの落ちこぼれがまだこの屋敷にいることが気に食わない。早いところどこかに売り飛ばされればいいものを。


あまつさえこの俺を差し置いて、騎士団長のギルバート様から直接指導を受けるという破格の待遇もされている。父上も次期当主は俺だと認めているだろうに……


そもそも、あいつは俺が5歳の時に突然、父上に連れられてやってきた。急に弟だと言われても納得出来ない。


母は何も言わないが、どうせ卑しい身分の女との間に出来た子供だろう。


それにあいつは”黒髪”だ。そんな奴に俺と同じように教育を受けさせ、適性なしだと分かった後も変わらずに面倒を見ている。


フレイは家督を継がないと言っていたがそれを決めるのは父上だろう。適性魔法がないということは貴族にしては致命的な欠点がある。


しかし、忌々しいことにあいつにはそれくらいしか欠点らしい欠点が見つからない。


昔からあいつは大人びていて、いくら俺が嫌がらせをしても気にする素振りも見せない。あの態度が憎たらしい……どこか俺を見下しているような。もっと嫌がったり泣いたりすれば可愛げがあるものを、何をしても平然としている。気に食わない。


そして昔から俺よりも剣術ができ、勉強もできた。すべてをそつなくこなす。


「兄より優れた弟なぞ存在しねぇ!」


フレイのことを考えると思わず感情的になってしまう。


俺が学園に戻るまでに一度、痛い目を見せておいた方がいいだろう。


適性なしのあいつに、どちらが上かはっきりとさせておく必要がある。


あいつがもし家督を継ぐようになればアトレイディスの名声も落ちるだろう。


中庭に出ると走っているフレイが目に入った。


ちょうどいい。屋敷の裏の雑木林のあるあたりで待ち伏せをしておくか。あそこなら邪魔が入る心配もないだろう。


完膚なきまでに叩きのめして、あわよくば再起不能にしてやろう。人目につかないのであればケガをさせても兄弟喧嘩で事故が起こった程度で済ませられる。


「家督争いはもう始まっているんだぞ? フレイ……」


所詮は適性なしだということをわからせてやる。



ーーーー



「わかりました。兄上。ご教授願います」


「いいだろう。手合わせは木剣での勝負だ、決闘のルールでやろう。どちらかが降参するか戦闘不能になるまでだ」


適性魔法のないフレイにとっては不利な勝負だ。遠距離からいたぶってやる。


「準備はいいか?」


少しフレイが何かを考える素振りをする。


「準備できました。お手柔らかにお願いします」


一方的な勝負になるのが分かっているだろうにこの余裕な態度はなんだ。こいつのこういうところが気に食わない。剣術によっぽど自信があるのだろう。その自信ごと叩きのめしてやる。


「多少、剣術が上手いお前でも魔法の前では無力だ。精々あがいてみせろ!」



ーーーー



結果は引き分けで終わった……


いや! ギルバート様に止められなかったら俺が勝っていた。はずだ……


最初は間違いなく一方的だった。俺の魔法を避けることに精一杯で、実際に避け切れていなかった。


しかし、途中から人が変わったようにすべての魔法を避け出した。しかも、何かを考えるように目線はどこか遠くを見ているようだった。そのまま無表情で剣の間合いまでゆっくりと近づいてきたのだ。


あの瞬間、俺はあいつに恐怖を覚えた……


いや……恐怖などしていない! 気のせいだ。まぐれで避けたのだろう。


木剣で斬り結んだ時も大したことなかった。一撃も食らう気がしなかったし、それどころか大技を空振り、隙だらけだった。あいつが大したことない証拠だ……


しかし、最後の一撃を防がれたことには素直に驚いた。あいつは木剣を落としていたはずだ……


なのに俺の渾身の一撃を木剣が防いだ。間違いなくケガをさせるつもりの威力を込めていたのに。


あれは魔法か? だがあんな魔法聞いたことがない。それにあいつは適性なしだ。


いや……? あいつが適性なしではないとしたら?


父上は知っているのだろうか? 適性検査には父上も同行していた。


知っていて隠している? なんのために?


父上は昔から謎が多い人だった。口数は少ないし、表情からは何も読み取れない。


俺が小さいころには屋敷に何度か怪しげな連中が出入りしているところを目撃したこともある。


何かやましいことでもあるのではないか? まあそれはいい、俺が家督を継げば全て分かることだろう。


しかしだ、フレイに何らかの適性魔法があるのだとすれば大問題だ。さらに、父がそのことを知っていて隠しているのであれば、俺ではなくフレイに家督を継がせようとしている可能性もある。今までのフレイへの待遇を見ているとむしろそうなのではないか?


……父上は何を考えているのだろうか? 何かを企んでいる?


いつかは、俺にも教えてくれるのだろうか……


いや、俺が何も知らない間にフレイを当主として立てしまう可能性もある。


父が何を考えていようとそれだけは避けたい。フレイが当主になることは外聞的に、アトレイディス家の名誉を貶めるだろう。


帝都にいる間は出来るだけ多くの貴族とのコネクションを作っておこう。それに、父についての噂なども集められるならば集める。


そして俺が卒業して戻ってきたら、領地内で父がなにか企んでいないか調べることとしよう。


万が一、父にやましいことがあるならばすぐにでも俺がアトレイディス家の当主に取って代わる。


アトレイディス家は長男の俺が引っ張っていく。



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じゃ、ぎ

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