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舞台袖の邂逅

毎日19時頃投稿予定です。

講堂の照明が舞台に集中し、いよいよ公約宣言が始まる。俺はセレスティアの緊張を和らげるため、そして彼女の「真価」を間近で見届けるために、候補者支援者にだけ許された舞台袖へと移動した。


薄暗い袖裏は、表の喧騒とは隔絶された、嵐の前の静寂に包まれていた。


「……随分と、盛り上がっているようだな」


不意に、背後から声がかけられた。振り返ると、そこに立っていたのはユーリ・フォン・リヴァルト生徒会長だった。その声には、冷たい響きの中に、わずかな、しかし明確な苛立ちのようなものが含まれているように感じた。


「そうですね。想定以上です」


俺は素直に答えた。ユーリの整った顔立ちには、いつもの完璧な笑みが張り付いているが、その瞳の奥には、俺たちの活動がここまでの注目を集めたことに対する、複雑な感情が揺らめいているのが見て取れた。


「貴殿の策略は、見事と言う他ない。特に、緑属性魔法のデモンストレーションは、一部の愚かな生徒たちの心を掴むには十分だったようだ」


「策略、ですか。我々はただ、緑属性魔法の可能性を示し、現状を変えたいと願う生徒たちの声に耳を傾けたまでです」


俺はあえて、挑発するように言い返した。ユーリは一瞬、眉をひそめた。


「所詮は貴族ではない、平民の呪い師の戯言だ。貴殿がどれほど巧妙に扇動しようとも、この帝立学園の秩序は、血統と実力に裏打ちされた貴族によって守られる」


彼の言葉には、揺るぎない確信があった。しかし、その瞳には、かつて俺が感じたような単なる傲慢さだけでなく、彼なりの「正義」への固執が見えた。彼の信念は、学園という小さな世界の枠を超え、帝国全体の構造にまで及んでいるように感じられた。


「その秩序が、本当に盤石なものなのかどうか。それは、今日、明らかになるでしょう」


俺の言葉に、ユーリの完璧な笑顔が初めて崩れた。彼の目が、鋭く俺を射抜く。


「……面白い。貴殿のその異端な思想が、どこまで通用するか。見せてもらうとしよう。だが、所詮は小石だ。どれほど波紋を起こそうとも、大河の流れを変えることはできない」


ユーリはそう言い放つと、視線を前方に向けた。その言葉は、俺たちを認めつつも、その影響力は限定的だと決めつけているようだった。


「小石、ですか。しかし、その小石が、時に巨大な岩を砕くこともある。そうは思いませんか、ユーリ生徒会長?」


それにユーリは反応せず、ただ静かに俺の前へと進み出た。


その背中には、彼自身の揺るぎないプライドと、これから始まる「代理戦争」への、静かな闘志が満ちているようだった。


(やはり、彼は一筋縄ではいかない。だが、彼の『正義』が、俺の道の邪魔をするなら……)


俺は、静かにセレスティアへと視線を向ける。


いよいよだ。これはただ、学園内で繰り広げられるだけの代理戦争で終わらない。


咲き誇るため地面を突き破り、はじめて空を仰ぎ見る。


そんなイメージが脳裏をよぎった。

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