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一筋の光

「さあ、旅の仲間も増えたところで、この先をどうしようか?」

フェリドがそう口を開いた。彼の髪が、その動きに合わせてさらりと音を立てる。

「何よ?まさか、何も考えてなかった訳?先が思いやられるわねーっ!」

旅に加わったばかりのティアナが、そうフェリドに噛みついた。なんとなく可哀想にも思えるので、リラは助け船を出してやった。

「一応、考えはあるんだけど……。」

エメラルドの瞳が、全員を見渡す。二対の軽い青色の瞳と深い青の瞳、青紫の瞳が自分に向けられていることを確認してから、リラは続けた。

「まず一つは、このまま友好が結ばれている国から順に回って行くこと。そして闇の子と風の子を見つけるの。もう一つは私たちの聖具を探すこと。それから二人を探すの。まあ、どっちも一度にやるのが一番手っ取り早いんだけど……。」

「確かに、聖具があった方が安心できそうだ……。」

エルリックが、そう溜息をついた。聖具はそれぞれに精霊の恩恵を受けた物で、普通の武具などとは比べ物にならない程の力を秘めている。

「でも、場所がわからないならどうしようもありませんわ……。私の場合は、偶然でしたし……。」

確かに、彼女が聖具を見つけたことも偶然以外の何者でもない。たまたま避暑に行った場所が、たまたま彼女の聖具が眠る土地だったのだから……。運命の導き、と言えば、聞こえはいいかもしれないが……。しばらくしかめつらで考えていたフェリドがおもむろに口を開いた。

「……仮説を立ててみるのはどうだろう……?」

「馬鹿を言うな。私たちにはそんな時間はない。」

リラに視線を当てながら、彼が続けた。

「確かにそうだけど、このまま闇雲に突っ走るよりはマシなんじゃないかと思うんだ。仮説を立てて、正しいかどうかを確かめながら進んで行く。今、一つ仮説を立ててみたんだが……。」

ティアナが目で続きを促した。いや、詳しくはそんな生易しいものではない。早くしろ、と、目だけで彼を殺しそうな勢いだ……。

「ジュリアが水の宝玉を見つけたのは、悲しみの湖だったよね?あそこは、世界で一番大きな湖、しかも、水の透明度も世界一を誇る。つまり、世界中で一番水の精霊の力が強い所なんだ。もしかすると、精霊の聖具は精霊の力が最も収束された所にあるんじゃないだろうか?」

「っ……!」

確かに、その可能性はあり得る。聖具のような大切な物が、その辺の道端に転がっているとは到底考えられない。それなら、滅多に人が来ないような場所、あるいは、精霊の影響力が強く、そのありかを隠せるような場所に置かれていると考える方が自然だ。

「確かに、その可能性は大いにあり得るな……。ひとまず、その仮説に従ってみるか……。」

リラのその言葉で、大体の方針が決まった。

「じゃあ、こういうのはどう?」

エルリックが地図を指差した。その指が、世界の上を駆け巡る……。

「まず、ここから一番近い光の原野に行く。ここが、おそらく姉さんの聖具が封印されている所だからね。ここなら、ラッツィから定期船も出てるよ。それから、一度戻ってルクタシアにある怒りの火山で僕の炎の聖具、そこから、海を渡って別の大陸に行こう!」

筋道の通った考え方だ。ましてや、ハーバナントをできるだけ避けて世界を廻ろうとするところが、なおさら……。

「そうね、悩んでいたって仕方ないし。行きましょ!もし間違ってたら、その時に考えればいいのよ!」

全員がその言葉に笑顔で強く頷く。明るい姉弟は、今まで暗い沈黙に満たされていた一行を救う、一筋の光となっていた。そして、ある程度定まってきた今後の方針も……。誰が声をかけるという訳でもなく、彼らは立ち上がった。そして、歩き始めた。

こんにちは、霜月璃音です。異国恋歌~風空の姫~第八話をお届けいたします。

今回のお話は少々短くなってしまいましたが、いかがでしたか?もしよろしければ、ご意見、ご感想などをお願いいたします。

亀のように更新がのろい私ですが、飽きずにお付き合いして下さっている読者の皆様、本当にありがとうございます。よろしければ、今後も彼らの旅にどうぞお付き合い下さいませ。

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