外伝 何でもない日常……
「ちょっとおばさん、邪魔しないでよー!」
「だーれーがおばさんですってぇー? こんなぴちぴちの美人捕まえて何を言ってるのよ、このガキンチョはっ!」
「……自分でぴちぴちの美人だなんて言うかしら、普通……」
ある日の夕食の準備中、食器を運ぶエリゼと盛り付けにかかろうとしたティアナが鍋の前でかち合い、先程の会話が発生した。そして、ジュリアの隣で彼女の料理を見よう見まねで学んでいるリラが、呆れ半分で最後の台詞を口にしたのだ……。
そんなリラの様子は華麗に無視して、ティアナは再び矛先をエリゼに向けた。
「大体ねー、あんたにおばさんなんて呼ばれる筋合いはないわよ! この先も、ね! あんたと血がつながることなんてないんだから!」
そう言う意味の「おばさん」じゃないような、と思いつつ、リラは自分に矛先が向けられることを恐れて、仕方なくエリゼを犠牲にした。いや、彼女ならきっと、この女王様と対等に渡り合うだろう……。そんなことを一人で考えながら。
「そんなことわからないわよ! ほら、ジュリアとエルリックが結婚するとするじゃない?」
エリゼはそんな爆弾発言をしながら、拾った木の枝で地面に何かを書き始めた。それをティアナが、隣にしゃがみ込んで覗き込む。
「そうしたら、ジュリアはおばさんの弟のお嫁さんでしょ?」
「そうよ、それがどうかしたの?」
自分が話題に上っていることなど露知らず、とうのジュリア本人はシチューの仕上げに取り掛かっていた。
「そして、そのお姉ちゃんのリラが、お兄ちゃんと結婚する……」
この子密かにそういう色恋沙汰には敏感なのね、などと、ティアナは内心舌を巻いていた。そんなことで感動しなくても良いはずなのだが……。
「ほら、そしたらおばさんは、私のお兄ちゃんのお嫁さんの妹の旦那さんのお姉さんってことになるでしょ?」
「うん、多分そうね……。なんか複雑すぎて嫌になって来ちゃったわ。さりげなく二回もおばさんって言われてるのも腹立つし」
聞いていなかったふりをしながら、しっかり数は数えていたようだ……。エリゼは、その部分については笑って誤魔化した。
「ほら、よくわからないことになるし、面倒くさいからおばさんってことでいいじゃない。ね?」
「いい訳ないでしょー! それに複雑な言い方をして誤魔化したみたいだけど、それって結局、あんたは私の義妹の姉の義妹ってことじゃない! つまり私の妹ってことよ! 多分!」
多分、所までしっかりと力を込めて言い、ティアナはそう開き直った。どうやら、おばさんにだけは絶対になりたくないらしい……。
「もう、わかったわよー! そんなにむきにならなくてもいいじゃない、おばさん!」
「また言ったわねー!」
先に譲歩する態度を見せた分、もしかするとエリゼの方が大人かもしれないな、などとまたもや一人で考え、リラはシチューを盛り付けるのであった……。
旅の間の何でもない日常は、いつかは大切な思い出に……。
お久しぶりです、霜月璃音です。
二カ月も更新ができませんでした……。
どうかお許し下さい。
今回は短い外伝を投稿させていただきました。
そしてまったくの私用で申し訳ないのですが、学期末のレポートが溜まっていて、今月中の更新は難しいです……。
本当に申し訳ありません。どうか見捨てずお付き合い下さい……。
それでは、ここまでお読み下さった皆様、本当に、本当にありがとうございました。