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精一杯の甘え

「ところで、お兄ちゃんたちはどこに行くつもりなの?」

旅に加わって間もない、どころか、たった今旅に加わったばかりのエリゼの問いかけに、ティアナが鼻で笑った。

「ふん、お子ちゃまは黙ってついて来なさい。」

「こんなおばさんについて行くなんて、とっても不安で……。」

「死んでおしまい!」

二人はきゃあきゃあと騒ぎ立てる……。いい加減に構うことも面倒になり、他の五人は二人を無視して話始めた。

「この先なんだが、まず、海を渡らなきゃならない。次の精霊の聖具、そして、闇の子を探すために……。」

「はい、そこまではわかりました。それでは、次は?」

フェリドの言葉に、アランは真剣な目をして頷き、問いかけた。どうやら、彼はエリゼとは違って常識人のようだ……。

「次は南の大陸、最初の国はアークだな。そこで問題なんだが……。」

フェリドのその言葉に、くだらないケンカをしていたティアナとエリゼも休戦した。全員の注意深い視線が自分に注がれていることを確認してから、フェリドが続きを話した。

「困ったことにこの国は独立独歩の国でね、友好を結んでいる国がないんだよ……。そこへ各国の姫や王子として乗り込むのは色々とまずいと思うんだ。下手に刺激したら、僕たちが連合を組んでアークを攻めるんじゃないか、その下調べに来ているんじゃないか、とか向こうが考えるかもしれないからね。」

全員がその言葉に黙り込んだ。おそらく、彼のその考えは正しい。しかし、アークに闇の子がいるかもしれないのだ。それに、その次の国に行くとなればアークは通らざるを得ない場所にある。

「それに、まずは大地の聖具を探してからにしたいんだ。港からそんなに遠くない所に、アーク砂漠があるだろう?ここは、世界で一番大きい砂漠なんだ。だから、きっとこの砂漠のどこかに大地の聖具が眠っていると思うんだ。」

「ちょっと、私は嫌よ!そんな砂漠を、当てもなく彷徨い続けるなんて。埃塗れになるじゃない!それに、もし道に迷ったら七人全員で干物になるのよ?この若さで干物になんてなりたくない!どうにかしなさいよ、フェリド!」

「いや、どうにもならないですよ……。」

フェリドにすかさず食ってかかったティアナに、アランが冷静なツッコミを入れた。リラは、その様子を見て密かに喜んだ。今まで、彼女は一人で三人にツッコミを入れていたのだ。ジュリアは決しておかしなことは言わないのだが、彼女の場合はいまいち説得力がなくて、ツッコミもツッコミととってもらえなかったのだ。そして、エリゼという要注意人物が増えたことで、彼女は計り知れない不安を感じていたのだった。

「良かったわ、アランがツッコミ役になってくれて……。」

リラがしみじみと言った言葉に反応したのは、名指しされたアランだった。

「どうしてですか?」

「今まで、私一人で色魔と天然さんと女王様にツッコミを入れてたのよ。この上エリゼまで増えたらどうしようかと思っていたけれど、ツッコミも増えたからなんとか頑張れそうだわ……。」

「色魔、天然、女王様……。心中、お察しします。」

リラのこれまでの苦労を察したアランは、それしか言えなかった。フェリドが口を開いたので、二人は無駄話を中止して彼の方に注意を向け直した。

「いや、聖具の導きもあるだろうし、大地の精霊の声を聞きながら行けば迷うことはないよ。問題は、どうやってアークの城に潜入するかなんだが……。」

「お兄ちゃん、何かいい考えがあるんでしょう?そうだよね、ないなんて言わせないもの。」

エリゼのその言葉に苦笑して、彼は続けた。

「あるにはあるんだが……。名案とは言えないかもな。」

「何よ、もったいぶらないでさっさと話しなさいよ!」

「そうよ、お兄ちゃん。」

話の続きを急かす声が、今までの二倍……。どうやらこの二人、実は気が合うようだ。

「皆何か一つ位楽器はできる?」

それぞれが口々に答える。ジュリアとティアナが横笛、エルリックが太鼓、フェリドがリュート。

「すみません、俺はちょっと……。多分、エリゼも……。」

アランが遠慮がちにそう切り出したのを、フェリドが止めた。

「いや、君たちには荷物の番をしてもらおうと思っていたから、楽器の方はいいよ。そっちの仕事、頼めるかな?」

「わかりました。」

アランは安心したかのようにそう答えた。その横で、リラがこちらも遠慮がちに口を開く。

「フェリド、私は竪琴位しか……。」

「いやいや、君こそ楽器はしなくていいよ、リラ。」

「何が言いたいのよ!これでも竪琴の方はそれなりに得意なのよ!」

赤くなって憤慨するその様子に、フェリドは危険な物を孕んだ笑みを返した。彼がこんな笑顔を見せるのは、何かろくでもないことを考えている時……。

「ほら、城に流れの民が稼ぎに来ることって、あるだろう?それを装って城に潜入しようと思うんだ。君まで楽器を扱うことになったら、踊り子が一人もいなくなるだろう?踊り子のいない旅一座なんて、おかしいじゃないか。」

「わ、私に踊り子になれって言うの?」

リラのその言葉に、フェリドは唇を噛み締めて重く頷いた。

「適材適所だよ、リラ。そして、アーク王の目に留まって欲しい。王が気に入った踊り子を寝所に招く、というのもよくある話だろう?君はそこで王に催眠術をかけて、闇の子の存在について確認して欲しいんだ……。」

「フェリドさん、あんまりです!お姉様に、そんなっ……!」

あまりにもリラに重い負担を強いる作戦に、珍しくジュリアが強い語調で抗議の声を上げた。

「もちろん、アーク王にはリラに指一本、髪の毛一筋も触らせない。ただ、普通に訊ねたところで真実が返ってくるとも思えないからな、仕方ないことなんだ……。」

彼は、その言葉を痛む自分の心、その奥深くにも言い聞かせていた。仕方のないことなんだ。そうは思っても、心のどこかで納得できない。

「……いいわ、わかった。」

リラが、フェリドが難しい顔で考え事をしている様子を眺めながらそう言った。その声で顔を上げたフェリドの青紫の瞳が、エメラルドの瞳と結ばれる。彼女は頬を赤く染めながら、続きをこぼした。

「ただし……何があっても、絶対に私を護ってよ。アーク王の愛妾になんて、死んでもなりたくないもの。」

彼女の精一杯の甘えの言葉に、フェリドは柔らかい笑みをこぼした。

「……了解、姫君。」

フェリドのその言葉に、リラは赤い頬をほんの少し膨らませて、そっぽ向いた。

異国恋歌~風空の姫~第二十二話、いかがでしたか?

レポートの締め切りに追われる毎日を過ごしています。更新が非常に遅くなっていますが、どうぞお許し下さい。

ここまでお読み下さっている皆様、更新をお待ち下さっている皆様、本当にありがとうございます。

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