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相思尊愛 ④

 彼は彼女を疑った末に、彼女の為に身を呈した。

 彼女は彼を信じ過ぎたから、彼を守ろうとした。

 まるでエゴイズムの押し付け合いだ。けれどそこに至るまでの二人の葛藤はどれほどのものだっただろう。

「人は愛情の為に、自らを犠牲にできる。君もそうなのかな、猪木」

 屋上へ続く小部屋の中で、一人静かに佇む人影が、誰に聞かせるでもなく呟く。彼は切れ長の瞳を細め、窓の外に見えるミス研の人間たちをしばらく眺めた後、肩に掛かる程の長い襟足を揺らしながら、そっと立ち去った。

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