昭和への遡り戦記
「あれっ?」
高校の同級生と、さっきまで福岡中洲の海鮮居酒屋で飲んでいた。今は朝日があたる川の土手に寝ているからだ。
ゆっくりと仰向けの身体を起こすと、俺以外の8人の同級生は昨夜の服のまま未だ寝ている。
「おい みんな起きろ」と大きな声を出すと、みんなもぞもぞと身体を起こしながら目をしばつかせ、辺りを見回しいる。
「何だ!」 「ここどこ?」 「何が起こった?」
先程まで飲んでいた全員が途方に暮れながら騒ぎ始めた。
ここで同級生を紹介する。福岡の高校を卒業して8年皆それぞれの進路を歩んでいる。
少弐大輔(俺)東京の国立大学文学部を経て近代 史を専攻する大学院生である
川上陽子(俺の連れ)福岡の国立大学薬学部を経 て大手S製薬の研究部門に勤務している
松岡 実 東京の私立大学政経学部を経てM総研 に勤務している
橋口 徹 大阪の国立大学医学部を経て大学病院
に勤務している
古賀慎一 福岡の国立大学工学部を経てM重工に
勤務している
古賀啓二 東京の国立大学工学部を経てPソニ
ックに勤務している
吉田克也 京都の国立大学理学部を経て核分子学
を専攻する大学院生
佐藤大吾 福岡の国立大学医学部を経て抗生物質
を研究する大学院生である
鈴木 恵 福岡の国立大学教育学部を経て文部科
学省に勤務している
盆休みで地元に帰省した福岡中洲でプチ同窓会を
していたはずの9人が、現在途方に暮れ絶賛川の土手で大混乱している。
大吾が
「木製の電信柱、笠がついてる電球!」
と叫んだ。いつも落ち着いた彼が戸惑い、混乱している。
誰かが
「中洲に木製の家にコンクリートの建物」
「県庁がある」
令和の県庁は中洲の近くにはない。
そこに 着物を着ているおばさん?が、土手の向こうから歩いてきた。
「あんた達は誰ね?おかしな服着てなんばしよっとね」
その言葉を聞いて自分達が博多にいることに気づいた。
俺はおばさんに
「今日は何日ですか? 今は明治、大正、昭和の
どの時代ですか?」と尋ねた。
「おかしかことば聞きんしゃあね。今日はお盆の中日で昭和11年ばい」
とおばちゃんが言った。
俺たちは呆然自失状態になってしまった。
誤字等ご指摘いただければ幸いです。