7 . 何故か友人の勘が鋭いです
棗視点に戻ります。
時間的には、前話と同じです。
前話と今話は時間が同じで、視点だけ違うものだと思ってくれれば大丈夫です。
ああ。
やっぱり杏哉は先にいた。こりゃ約束に遅刻したな。
とりあえずちゃんと謝っとこう。
「遅れてごめん杏哉。待たせた。すまんな。」
それを聞いた杏哉は、一瞬驚いた顔をして、歩き出した。
何だ?
そんなに謝る僕が珍しかったか?
珍しくてすいませんね。
そんな時だった。杏哉にこんな事を聞かれたのは。
「なあ、棗。お前昨日何かあったのか? 何か様子がいつもと違うぞ?」
こいつ何故か妙に勘が鋭いな。エスパーか?
でもそりゃそうだ。様子がおかしいのは多少なりとも仕方がないことだと思う。
だって僕は昨日の夜、ロリ子に会ったんだ。しかも人外で訳ありの。
そんな子どもに出会って、様子がいつもと同じわけないじゃないか。
逆にあんな奴に会って驚かないやつのほうが異常だよ。
「え、え? と、特に何もないけど?」
だから、返答がしどろもどろになってしまったのは、まあ、許してくれ。
何せ図星だったんだ。動揺しても仕方がないだろう。
大事なことは二回言う。
だってほとんど図星だったんだから。
それにしてもヤバい。杏哉の視線が鋭い。どうやって言い逃れようか。
ここは正直に、
「昨日の夜にね、人外のロリ子に会ったんよ。 で、今は一緒に暮らしてるんだ」
って言おう!
いや言えるか!却下!
間違いなく頭がおかしくなったと思われるし、そもそもそんなこと言いたくない。
変なこと疑われるだろうが。
うーん。どうしようか。
そう思っていた矢先。またしても杏哉にすごいことを言われた。
「彼女でも出来たか?」
そんな訳無いじゃないか。
それに、彼女だったらすぐお前に自慢しているところだ。
それにしても。それにしてもだ。
か、彼女?
いや、あれは絶対に彼女ではないな。
でもじゃあ、どういう扱いなんだ? どういう扱いに区分すれば良いんだ?
そもそもの話、杏哉にはアイツの事は言わないほうが良いよな...
ただ単に親戚の子を預かったとかそういうことにしておくか?
いや、それだといつかはバレる。そうなった時に一番困るのは自分だ。
うーん。悩ましい。
ま、とりあえずこのままうやむやにしよう!
次聞かれたら、その時はその時で考えようじゃないか!
そう思ってたら、杏哉が爆弾を投下してきた。
「ま、昨日の夜お前昨日何があったのかは知らんが、俺に教えてくれたって良いんだぞ?」
「え? あ、うん。わ、分かってるって。」
わーお。
これは本当にヤバいかも。
こういう時の杏哉ってすぐに何かを掴むんだよな。
だから杏哉にはすぐにバレそうな予感が...
ああ、寒気がするなぁ。
あははあははあははっ。
気のせいだと良いなっ。ははっ。
果たして杏哉は本当の事を話した時、どういう反応をするのだろうか。
杏哉の反応が気になりつつも、その瞬間ができるだけ遅く来ることを願っていた、今日この頃の棗だった。
もちろん、最後の最後まで心の中で考えていたことが口に出てしまっていたことには棗は気付いていなかったのであった。
杏哉「俺の友人は困った奴だなあ。」