私がつかんだ大金星
その日のAランチは私の大好きなクリームコロッケだった。
気の置けない友人とランチを楽しみ、昼休みの残り時間はいつも通り一人図書室へと向かった。
今日は月に一度の新刊が届く日だ。リクエストを出している本も届いているかもしれないと、私は足取りも軽く図書室への道を進んでいた。
図書室の手前の渡り廊下まで来たとき、私は急に腕を掴まれた。
転けそうになるのを何とか踏みとどまり、驚き振り返ると、そこには侯爵令息のアラン様がいた。
「君に大事な話がある。少し時間をくれないか?」
いつになく真剣な顔でアラン様がこちらを見つめている。
大事な話……私には思い当たるものは何もない。
新刊への未練は若干あったが、アラン様があまりに真剣なので、私はアラン様に従い、付いていくことにした。
私、男爵家の娘であるマリアが、侯爵家のご令息と顔見知りなのにはある訳があった。
それを語るには私がこの学園に来た経緯から話さなければならない。
私は田舎の男爵家の五人兄弟の長女として生まれた。両親は素朴な人柄と言えば聞こえはいいが、のんびりとしたおおらかな性格で、小さな領地は毎年ギリギリ自転車操業だった。
見かねた私は10歳を少し過ぎた頃から仕事を手伝い始めた。
子供に出来ることはもちろん限られていたが、領地を駆け回り、気になることはどんどん調べていた。
そんな生活を数年続けていたある日、我が家の最高権力者であるおばあ様に呼び出され、私は王都にある学園へ通うか気があるかどうかを聞かれた。
「お前はこういうのが好きなんだろう。ちゃんと勉強してみる気はあるかい?ただ、学園の学費はうちの家計にとって決して安いもんじゃない。ちゃんと家にとって利益になるものを得て来なきゃなんないよ。それでも行く気はあるかい?」
重い責任のあることだと思ったが、私はこのチャンスに飛び付いた。
こうして期待と責任を持って、私はこの学園にやってきた。
しかし学園に入学してすぐ、私はある壁にぶち当たってしまった。
領地のこと、経済のこと、学びたいと思っていた項目はことごとく男子生徒しか受講できないことになっていた。
女子に許されるのはマナーなどのいわゆる淑女教育のみ。
もちろん社交には知識が必要なので全く学べない訳ではなかったが、一番学びたかったことは門前払いを食らってしまった。
地方に住む私たちはそんなこと知らなかった。おばあ様との約束は社交のための教養でもある程度は得られる。
でも折角入学したのだから何とかそっちも勉強したいと諦めきれず、先生という先生に掛け合ったし、男子より成績が優秀になればもしかして、と思って男女共通科目も必死に勉強した。
それでも結果は変わらなかった。
その日も先生に掛け合った後、参考書すらも手に入らないことに打ちひしがれて、俯きながらベンチに座っていた。
泣きそうな気持ちでぼんやり座っていると、すっと目の前にシルクの綺麗なハンカチが差し出された。
驚き顔を上げると、知らない男子生徒がハンカチを差し出してくれていた。
「急に驚かせたよね。でも女の子が泣きそうになっているのを見過ごすこともできなくて。よかったら私に理由を話してみないかい?吐き出すだけでも楽になるって言うし」
無理にとは言わないよと、目の前で柔らかく笑う男子生徒を見て、私はいつも寮で同室のリミアに言われていたことを思い出した。
「私があなたのルックスなら、それを最大に利用して玉の輿に乗って、大金星を掴むわね。その大きな瞳をうるうるさせて、上目遣いで可愛くお願いすれば大概の男はあなたのお願いを叶えてくれるわよ」
普段はリミアは相変わらず大袈裟ねと聞き流していたことだったが、そのときの私は正直もうやさぐれていた。
どうにでもなれと思いながら、自棄っぱちでリミアのいう上目遣いのお願いを実行してみた。
「領地経営の参考書を弟のために買いたかったんですけど、先生方にダメと言われてしまって……」
目に涙を溜め(というかさっきから悔しさですでに滲んでた)、下から彼を見上げるようにしてじっと見つめて言ってみた。
弟のために、と嘘をついたのはこれもリミアによるものだった。曰く、賢い女は煙たがられるわ、多少バカを演じる方が物事は円滑にすすむのよ、とのことだった。
私が学びたいというよりスムーズになるのかしら?と半信半疑で言ってみた。
まぁこんなことしたところでどうにもならないわよねと思って、聞いてくれたお礼だけ言って立ち去ろうと思ったとき、目の前の男子生徒は鞄から一冊の本を私に差し出した。
それは私が喉から手が出るほど欲しがっていた参考書だった。
「家で勉強するためにとでも言ってもう一冊買わせてもらえば済むだけだから、これは君の弟さんに譲るよ」
目の前の光景が信じられなかった。半年以上がむしゃらに努力をしてもどうにもならなかったことが、私のお願い一つで解決してしまった。
「その代わりというのでもないんだけど、よかったら名前を聞いてもいいかな?」
まさかの効果に私は戦慄していた。今まで大袈裟だと聞き流していてすいませんリミア様!!今日は彼女にプリンを買って帰ろう。そう思いながら、私は名前を告げ、今回のお礼としてお茶をご馳走する約束をして寮へと帰った。
夜、献上したプリンを食べながらリミア様はこうおっしゃった。
「だから言ってたじゃない。あなた黙ってれば庇護欲を誘う可憐な美少女だもの」
低い背も、すっきりまとまらないふわっとしたピンクブロンドの髪も、目の大きい子供っぽい顔立ちもそんな評価をされるものだとは思っていなかったが、どうやら世間一般の評価はリミアに軍配が上がるようだった。
「でも二人で会うというのは今後はやめた方がいいわよ。そんなつもりないんでしょ?」
「先生、『そんな』とは?」
「ほら、やっぱり。今回だけは約束しちゃったから仕方ないけど、次からは絶対やめときなさい」
よく分からないけど、先生はきっと正しい。私はその教えに真摯にはいと答えた。
そこから私はリミア先生に教えを乞い、戦略を切り替えた。
領地経営コースの男子に「実家の弟が治水のことで困ってるみたいだけど、私じゃ力になれなくて。こういう難しいこと分かる人って本当にすごいですよね」とちょっと上目遣いで言うと、嬉々として治水に関連する資料を説明してくれた。
放課後サロンで開催される経営学の先生の特別講義も、「一生懸命勉強に励む姿って素敵ですよね。お近くで見られないのが残念です」なんて言えば、特別にサロンの後ろに座らせてもらえた。
「女の子にはこんな難しいこと分からないだろう?」とか、「君みたいな子はそういうのよりケーキとか甘いものの話が好きなんじゃないの?」とか言われて、上手くいかないことももちろんあった。自尊心みたいなのもゴリゴリ減ったけど、背に腹は代えられなかった。
こうして相手を煽てつつ、迷惑をかけない範囲でお願いを聞いてもらう。でも、友人から知り合いの距離感は維持する。踏み込んでくる相手からはそっと遠ざかるようにしながら、私は自分の欲しい情報を得ていった。
学園の本来の勉強をしつつ、ときに愛想を振り撒き、そして隙間時間に授業で習えない分野を勉強する多忙な日々を私は過ごしていた。
テスト前は目が回りそうなほどだったけど、勉強できなくて焦っていた頃よりは気持ちはずっと楽だった。
そう、説明が長くなったけど、あのとき最初に声をかけてくれたのがアラン様だったのだ。
そんなアラン様に連れて行かれたのは中庭のはずれにある静かなガゼボであった。
そこのベンチには先客が座っていた。侯爵令嬢のクラウディア様だ。
腰まである黒い髪は艶やかで、クールな印象を与える澄んだブルーの瞳は同色のまつ毛に縁取られ、凛としながらも可憐さも同居している。
そんな雲の上の存在のような方の前に、私はアラン様に伴われ立っていた。
なぜ侯爵家の令息、令嬢と一緒に男爵家の娘に過ぎない私がいるのか、状況が全く読めてない私を置き去りにして、アラン様が話し始めた。
「クラウディア、済まない。君という婚約者がありながら、私は真実の愛を見つけてしまった」
ん?
んん?
目の前で急に始まったこれは、いわゆる修羅場というやつですか?
確かにこれは大事な話だろうけど、なぜ私がここに立ち会わされているんだろう。こういう話には第三者的な立場の人間が必要なんだろうか。
アラン様とも知人ぐらいの仲だし、クラウディア様に関しては恐らく一方的に存じているだけだ。そんな人間が立ち会うのでいいのだろうか?
いや、むしろそれぐらいの距離感の人間の方が片方に肩入れしなくていいのか?そうだとしても爵位が違いすぎて出来れば別の人に頼んで欲しい……。
そんなことを考えていると、アラン様は急に私の肩を抱いてきた。
「このマリアを愛してしまったのだ。君とは違い、彼女は私が守ってやらねばならない存在なんだ。
慰謝料はもちろん払う、どうか婚約を解消してくれないだろうか」
寝耳に水。青天の霹靂。事態は急転直下である。
ちょっ、ちょっと待って欲しい。ぜひ待って欲しい。え?あ、愛して?アラン様が?私を?
いくら記憶を検索しても私たちの間にそんな雰囲気はなかったはずだ。最初のお礼のお茶だって、念のためリミアに同席してもらったので、二人きりになったことすらないはずだ。参考書の代金も無理矢理だったけど受け取ってもらった。プレゼント一つ貰ったことはないはずだ。
そりゃあ同じ学園にいるからたまに会ったら話すことはあった。けどそれだって、少し立ち話をする程度だった。
一体この関係のどこから愛が発生したのだろうか?
そしてそれも一大事だけど、もう一つ大きな問題も起きている。
今、この状態、もしかして私クラウディア様の婚約者を略奪した女になってない?
侯爵令嬢のクラウディア様から?地方の男爵家の娘の私が?
目の前の現実がとんでもなさ過ぎて涙が滲んできた。とりあえずアラン様を止めなければと彼を見上げると、彼はまたすっとんきょうなことを言い出した。
「泣かないで愛しい人。大丈夫、君のことは私が守るよ。私を信じて」
信じるにはまず根拠を示して欲しい。そして何より守ると言うならまずこのとんでもない誤解を何とかして欲しい。
とにかく私は無関係だと説明しようとしたが、その言葉はクラウディア様に遮られてしまった。
「分かりましたわアラン様。このお話承ります。後の詳細は父を通じてお話しすることでよろしいですか?」
「ありがとうクラウディア。そうだな、詳細はそうしてもらえると助かる」
承られてしまった!!!侯爵家同士の婚約が解消されてしまった!!!
つい数十分前に幸せな気持ちで食べたクリームコロッケが帰って来てしまいそうな気持ちだった。いや、このままだと本当に物理的に胃から帰って来かねない状況だ。
何も言えず真っ青になった私に声をかけてきたのは、意外にもクラウディア様だった。
「そろそろお昼休憩も終わりますわね。マリア様、次の授業は家庭科室でしょう。よければご一緒に行きませんか?」
「絶対に嫌です」などと言える訳もなく、結局私は心配そうに見つめるアラン様に見送られながら、クラウディア様と共に教室へと向かうこととなった。
「マリア様、お話をするのは初めてですわよね」などと声を掛けられ、必死に返事をしながら歩いていると、ふと私たちの向かっている方向が家庭科室の方向ではないことに私は気付いた。
焦る気持ちを押さえ込み、恐る恐るクラウディア様を見ると、彼女はにっこり微笑みながらこう言った。
「ごめんなさい。でも少し貴女とお話をしたくて」
それはもう可憐で、美しくて、私が男性ならきっと心を射抜かれるような微笑みだった。けど、その美しい唇から紡がれる言葉が私には死刑宣告に聞こえた。
連れていかれたのは個人で利用できる小さなサロンだった。小さいといっても設備は整っているため利用するにはそこそこの料金が必要になる。そのためギリギリ貴族の私はここに入るのは初めてだった。
テーブルは既にセットされていて、私たちが部屋に入るとメイドが手際よくお茶を淹れる準備を始めた。促されるままに着席すると、目の前に香りのよい紅茶が置かれた。
ティーカップを手に取ったクラウディア様にならい、私も紅茶に口をつけた。きっと飛びきりいいお茶なんだろうけど、味はさっぱり分からなかった。
「さっきのアラン様のお話なんだけど、貴女には今2つ選択肢があると思ってるの」
カップを置いたクラウディア様はそう話を切り出した。
クラウディア様の綺麗な瞳を見つめ返しながら私は目一杯考えた。けど私に残された選択肢に何があるのかはさっぱり分からなかった。だけど、今の私に出来ることだけははっきり分かっていた。なので私はぐっと足とお腹に力を込めた。
「ご迷惑お掛けして申し訳ございません!!!!」
ガタンと私は勢いよく立ち上がり、机に頭が付くんじゃないかってぐらい頭を下げた。謝罪だ。私に出来るのはこれだけだ。アラン様が何を考えてあんなことを言い出したかは分からないけど、私に関することでクラウディア様にご迷惑を掛けたのは確かなのだから。
自分の爪先をしばらく見つめていると、すぐ側からふふっと吹き出したような笑い声が聞こえてきた。
「ごめんなさい、でも、ふふっ。貴女って本当に見た目と全然違うのね」
驚いて顔を上げると、目の前にクラウディア様が立っていた。
「貴女面白い。ふふ、やっぱり貴女を選んだ私の目に狂いはなかったわね」
そう言って私の目の前でクラウディア様はにっこりと口角を上げた。おかしい、さっきまでその笑顔は天使のようだと思っていたのに、その瞬間にはまるで女王様のように映った。
「マリア様、今回のことで貴女が謝ることなんて何もないでしょ?
だってあれはアラン様の一方的な先走りなんだから」
「えっ!?な、なんでそれを……」
「なんで知ってるかって?マリア様のことはちょっと調べさせてもらったの。
アラン様はあれで侯爵家の嫡男だから、私がいても玉の輿狙いの女が次々側に現れてたの。最初は貴女もそういう人なのかと思ってたけど、調べてもらったらアラン様が勝手に熱を上げてただけだったし、貴女は貴女でアラン様を上手に利用してるんだもん。それも付かず離れず上手に距離を測りながら。私驚くよりも感心しちゃったわ」
にこにこと笑顔で語られる内容に私は絶句してしまった。固まる私の目を見ながら、クラウディア様は更に続けた。
「その上でさっきの話に戻るけど、貴女には2つ選択肢があるわ。一つ目はこのままアラン様に嫁ぐこと。ああ、私のことなら大丈夫よ、アラン様は既にある程度話を通していらっしゃったから何も問題はないわ。私たちは円満解消だし、貴女とのことは運命の恋を成就させたってストーリーに侯爵家がするはずよ。貴女の目的からはずれるけど、家のためにはなる話よ。
そして二つ目……その話をする前に一つ聞きたいんだけど、マリア様貴女お生まれはいつ?」
「は?え、えっと12の月の3日目です」
「ならよかった。2つ目はね、私の義妹になることよ」
「い、妹!?」
「そうよ。私は8の月生まれだから、貴女は姉じゃなくて妹よ」
「生まれの順の問題ではなくて……え?ど、どうして?」
「だって貴女も思ってたでしょう?憤ったでしょう?なんで男にしか学べないものがあるのかって」
その瞬間、クラウディア様はそれまでの雰囲気を一変させ、真剣な目で私を見つめてきた。
「私はふざけた話だとずっと思ってきたわ。私よりやる気もない、努力もしない、ビジョンも持ってない、けど性別が男ってだけでうちの跡取りは弟なの。私はいい家に嫁いで男児を産むことだけしか期待されなかったわ。
他の皆はそれを当然のことと言ったけど私は納得できなかった。だから色んな努力をしたわ。けど何も変えられず諦めかけてた。でもそんな時にがむしゃらに努力していた貴女を知ったの。
本当に嬉しかったわ。自分と同じ事を考えている人がいるってこんなに勇気付けられることなのね。ね、だからマリア様、貴女私の味方になる気はない?」
「……それが妹になるってことなんですか?」
「そうよ。侯爵令嬢になれば選択肢はぐんと増えるわ」
私はクラウディア様の話に圧倒されていた。侯爵家の養子になる。アラン様の愛の告白並に私には考えたことのない話だった。私のしたいこと、家のこと、これまでのこと、色んなことが頭の中をぐるぐる回っていた。
しばらく黙り込んだ私の手を取り、クラウディア様はあの女王様のような微笑みのまま私にこう言った。
「世界を変えるのは難しいわ。だから成功の保証はできない。けど楽しいことだけは保証してあげる。やりたいことに貴女を没頭させてあげる。後悔はさせないわ。だからマリア、私と手を組みましょう?」
「で、クラウディア様の妹になることにしたと」
その日の夜、寮の私たちの部屋で呆れた顔でリミアは呟いた。
「でもそうね、アラン様の恋人よりマリアらしいと言えばらしいわね。
貴女は侯爵家に入る可能性ぐらいはあると思ってたけど、この方法はさすがに予想外だったわ。でもどっちにしろ大金星を掴んだわね。おめでとう」
「ありがとう……なのかな?」
「それはマリア次第じゃない?」
そう、クラウディア様も言っていたがこの道は茨の道だ。きっと苦労も多いはずだ。不安もある。けど私は今までにないぐらいワクワクしていた。
「そうね、私がんばるわ!」
不思議な高揚感を胸に、私はそう宣言した。
マリアが寮でそんな会話をしていた頃、両親に婚約解消と養子の話をするためクラウディアは家に戻っていた。既に根回しは済んでいたので話はスムーズに進んだ。
「お嬢様、とてもご機嫌がよろしいのですね」
話を終え、自室に戻り寛いでいたクラウディアの前に紅茶を置いた侍女のサーラがそう声をかけた。
「そうね。久々に悪巧みが成功したのだもの、悪くない気分ね」
「例のマリア様はお眼鏡に適うお方でしたか」
「ええ、本当に面白い子よ。見た目はふわふわのか弱い乙女なのに、信念があって、行動力があって、度胸があって。あの子、あんな婚約解消に巻き込まれた後も死にそうな顔をしつつもちゃんと私の目を見て話をしてきたわ」
「それは中々見込みのあるお嬢様ですね」
「でもまだまだ危なっかしいわ。私がアラン様を裏で焚き付けてあんな告白劇をさせたことにも気付かないし、こんな分の悪い博打にもまんまと乗せられちゃうんだもの。素直なのはいいけど、それなりの淑女としての嗜みは身に付けてもらわないといけないわ。これから忙しくなりそうよ」
「クラウディア様、楽しそうでございますね」
サーラにそう言われたクラウディアは、口角をにんまり上げ、マリアに見せた顔よりも更に悪い顔でこう言った。
「ええ、楽しいわ。はしたないけど久しぶりに高揚してるわね。だってこんな無謀な夢を一緒に見てくれる子ができたのよ。ワクワクしちゃうわ。
でもまずはあの子を徹底的に磨き上げなくちゃね。ふふ、本当に楽しみ。
あの容姿、性格に加えて、貴族らしい騙し合いに勝てるようになったら、あの子はぐっと化けるわよ。本当、この窮屈な世界に風穴を開けてくれるかもしれないわ」
目を細め、悪い笑みを深めながらクラウディアは続けた。
「私の掴まえたあの子はきっと私の大金星になるわ」
悲しさの欠片もない楽しい話を書きたくて書きました。
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