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二人の決意


 王子と王女にすぐに事情を聞きたかったが、私にはクラブ長としての仕事がある。とりあえずみんなにはさっき劇中で起こったことは黙っててもらって、予定通りに着替えとあと片付けに向かってもらう。

 私は練習室の近くに設けた女性更衣室でササッと自分の服に着替えると、レンファイ王女の着替えをイリーナとともに手伝っていたホンファを呼び出した。

 

「ホンファ先輩、先輩は今回の事情をご存知ですよね?」

「! 気づいていたのかディアナ」

「こういう事態になって一番に反応するのはホンファ先輩じゃないですか。それなのになにも言わずにレンファイ様を見守ってたので、なにか知っているのかなと思ったんです。あとは、アードルフ先輩もそうですよね?」

「……ああ。今回のことは彼と私、そしてイバン様だけが知っていた」

「ではレンファイ様もご存知なかったことなんですね?」

 

 私が問うと、ホンファはキュッと口を結んでコクリと頷いた。

 

「……となると、まずはお二人でお話する時間を設けた方がいいのではないでしょうか。私に説明しようにも、ご本人の気持ちが混乱したままでは難しいでしょう?」

「……確かにそうかもしれないな。こうなった以上、考えなければいけないことは山ほどある」

「ホンファ先輩とアードルフ先輩は元々片付け要員には入っていませんし、今のうちに四人で話し合ってください。お二人が自由な時間を取れるのは多分この公演会が終わったばかりの今だけだと思いますから」

「しかし、話し合うにも場所が……。寮の内密部屋を使うとなると学生に知られてしまう。どこでやれば……」

「私がいい場所を知っています。使用するにはオリム先生の許可が必要ですが、どうしますか?」

「……私の一存では決められない。アードルフと話をしてきていいか?」

「もちろんです。では私は大教室の方に行ってますので決まったら言ってください」

「わかった。ありがとうディアナ」

 

 ホンファはそう言うと先に自分の着替えを済ませ、シャオリーにレンファイ王女についているように指示して部屋を出て行った。

 私は片付けの様子を見に大教室へ戻る。中を見るともうほとんどの学生の退出が済んでおり、天井の光虫も元に戻されていた。

 

 おお、さすがシムディアクラブ、仕事が早い。

 

「クドラト先輩、ありがとうございます」

「おう。光虫の方は終わったからこれからアクハク石の回収を始めるところだ」

「仕事が早いですね。助かります」

「フン! 約束だからな。ところでその、あ、あれはおまえが考えたのか?」

 

 クドラトは少し照れ臭そうに聞いてくる。

 

「あれとは?」

「さっきの劇だよ。おまえはその、あんな感じの話が好きなのか? 絶対に結ばれない二人がああいうことになるっていう……」

「へ? さっきの劇みたいな話が好きなのかってことですか? まぁ物語としてはありがちですけど面白いなとは思います」

「いや、そうじゃねぇ。おまえ自身にそういうことが起きたらどう思うのかって話だ」


 は? 私に起きたら?

 

「そんなこと言われましても、全然想像できませんね。劇的な恋愛をしたいとも思ってませんし。それに先輩、今回の物語を考えたのはうちの脚本家ですよ。私じゃありません」

「脚本家? そんなのがいるのか?」

「そうです。それに彼は男性です」

「はぁぁぁぁぁ⁉ 男があれを考えたのか⁉ なんだそいつは‼」

「ヤティリは天才脚本家ですよ。ふっふっふん、すごいでしょう」

「信じられねぇ……!」

 

 クドラトはそう言うと一人で赤くなったり青くなったり勝手に百面相を始めたので、私は客席に座っているオリム先生の方へ向かった。

 

「オリム先生」

「ああ、ディアナお疲れ様でした。とても素晴らしい劇でしたよ。学生もみな感動していたようです。ところで昨日観たものと少し違っていた部分があったようですが、もしかしてなにかあったのですか?」

 

 う……さすがオリム先生。マイペースでにこにこしているが、やはり副学院長だ。鋭い。

 

「……はい、ありました。そんなにわかりやすかったですか? もしかして他の学生にも……」

「いえ、違和感に気づいたのは私とソヤリだけでしょう。それで、なにがあったのです?」

 

 私はオリム先生にまだ詳しくは私にもわからないこと、その説明を二人から受けるためにいつも私がソヤリと会っている内密部屋を貸してもらう必要があることを告げた。

 

「ふむ……なにやら大変なことが起こってそうですね。わかりました。他に話し合える場所はないでしょうし、あそこを使ってもらっても構いません。ソヤリには私から伝えておきます」

 

 オリム先生はそう言って内密部屋の鍵を私に渡してくれる。そのタイミングでホンファが大教室にやってきた。

 

「ディアナの言った通りにしたいとのことだ。オリム先生、よろしいでしょうか」

「ええ、今ディアナから話を聞きました。その部屋は普段は誰も立ち入らないところなので、出入りを誰にも見られないように気をつけてください」

「はい、ありがとうございます」

 

 内密部屋へは私が案内した。ルザに先に人がいないかチェックしてもらい、ササッと四人に部屋に入ってもらう。部屋の鍵をホンファに預け、私とルザはそのまますぐに大教室に戻った。

 それからはシムディアクラブの人に指示をしたり、暇そうにしていたイシークに音出し隊の片付けを手伝うように言ったり、ハンカルから観客に関しての報告を聞いたり忙しく働いた。

 そこではわかったのは、劇でイバン王子が掲げた誓いの布が本物だったと気づいたのは舞台上にいた役者と、舞台袖にいたメンバーだけだったということだ。音出しのメンバーや遠くにいたハンカル、そしてイシークは劇の中で起こったことに気づいてない様子で、「いつもと違うところがあったけど、概ね予定通りにいって大成功だったな」と言っていた。

 

 思ってたより気づいた人が少なくてよかった……。

 

 大教室の片付けが終わり、シムディアクラブの人にお礼を言って帰ってもらいオリム先生と一緒に大教室の鍵を閉める。

 

「ディアナ、話がついたらすぐに報告してください」

 

 と言ってオリム先生は副学院長室に戻っていった。

 練習室に戻ると、ケヴィンとシャオリーの姿がなかった。どうやら彼らも内密部屋に呼ばれて行ったらしい。あちらの話はまだかかりそうなので、みんなで集まってのお疲れ会のようなものは今日は出来なさそうだ。

 

「イバン様とレンファイ様の時間が取れないようなので、また後日みんなで集まりましょう。今日はみなさん素晴らしかったです!」

 

 私がそう言って笑顔で拍手をすると、みんなも嬉しそうに一緒に拍手をしてくれる。

 

「大成功だったよな!」

「倒れてる女性もいたね。僕の魅力にやられてしまったかな」

「音出しも照明も完璧でしたわ」

「イリーナの衣装もよかったよ」

「失敗しなくてよかったです」

「頑張ったなエルノ」

 

 メンバーから次々と感想が出てくる。「本当に素晴らしかった!」と何故かイシークが部屋の隅で号泣している。それを見て、私もようやくやり切ったんだなと実感してほっと息をついた。

 それから演劇クラブの最後の集まりの日を決めてその日は解散になった。その時にラクス、チャーチ、イリーナの三人にはさっき見たことは黙っているようにお願いする。

 

「わかってるよディアナ」

「あんなこと、おいそれとは口に出来ないからね」

「誰にも言えませんわ、こんなこと」

 

 三人は神妙に頷いて、練習室をあとにした。

 

「ディアナは帰らないの?」

「うん、まだちょっとやることがあるからファリシュタはラクスたちと先に帰ってて。ザリナにどうだったか感想を聞いといて欲しいな」

「うん、わかった」

 

 みんなが帰ってルザと練習室で休憩していると、ホンファが私を呼びにきた。どうやら話し合いが終わったようだ。

 

「ディアナ、すまないな」

「いえ、大丈夫です」

 

 私はホンファと一緒に内密部屋へと向かう。ルザがさっと周りを確認して私とホンファを中に入れた。ルザはそのまま外で待機だ。

 部屋の中の机の向こう側にイバン王子とレンファイ王女が並んで座っていて、その後ろにケヴィンとシャオリーが控えて立っていた。少しだけケヴィンの目が赤くなっている気がする。アードルフは出入り口近くの棚でお茶を入れていた。

 私は二人の向かいに用意されていた椅子に座る。

 

「君の大事な劇の中で勝手なことをしてすまなかった、ディアナ」

 

 王子は開口一番私に謝った。王族は普通下の者に謝ったりしないものだが、前からイバン王子は私に謝りすぎだと思う。

 

「いえ、結果的に劇は大成功だったのでいいのですが……さすがに驚きましたよ。なにがあったのか説明してもらえますか?」

「……今回のことは、俺が勝手に計画して決めたことだ。彼女との繋がりが消えるのが、俺には耐えられなかったんだ……」

 

 イバン王子はチラリとレンファイ王女の方を見て、ゆっくりと語り出した。

 王子は私が呼出し権を使って二人と話し合いをしたあの日から、王女との関係を消し去ってなにも感じないようにしていたが、それがどんどん辛くなっていったこと。やはり自分には彼女が必要だと思ったこと。しかしどうすることもできなくて迷っていたこと。そんな時私の言った一言で気持ちが固まったことを話した。

 

「え? 私が言ったことですか?」

「ああ。俺は君にどうして劇をやろうと思ったのかと聞いただろう?」

「ああ、あれですか。ええと…確かそれには『好きだから』って答えましたが……」

「そう、それに『自分にとってはなくてはならないものだから』と言った。そして『それがないと生きている意味がない』とも。それを聞いて気づいたんだ、俺にとってはそれがレンファイだとね」

「えええ! そうなんですか?」

 

 王子のどストレートな告白を聞いてこっちが恥ずかしくなるが、言われた当の本人が顔を赤くして横を向いてしまったので私は思わずニマニマしてしまう。

 

 か、可愛いなレンファイ様……。

 

「それからどうすれば彼女とともにいられるのか必死で考えた。どう動こうと大きなことになるのはわかっていたからね。その結果、俺はレンファイが受け入れてくれるなら、リンシャークに婿入りすることを決めたんだ」

「む、婿入りですか⁉」

 

 王子から出てきた言葉に目を剥くが、考えてみたらレンファイ王女はすぐに王位につくのだから、一緒になりたいなら王子が婿入りするしかないのだ。

 

「で、でもザガルディの方はどうするんですか? イバン様も跡取りとして決まっていたんでしょう? 婿入りするなんてできるんですか?」

「ザガルディの方はユラクルに任せることにした。すでに彼には了承をもらっている」

「え……じゃあユラクル様がザガルディの跡継ぎになるということですか?」

「ああ。彼の了承をもらったあとでアードルフとホンファに協力をお願いしたんだ。他にも根回しが必要だったからね」

 

 王子側だけが勝手に動いてうまくいく話ではない。王女側にも味方が必要だったため、ホンファにだけ事情を話したそうだ。

 

「まさかホンファも協力していたなんて思わなかったわ……」

「申し訳ありませんレンファイ様」

「よくホンファ先輩を味方にできましたね」

 

 王族の決まりや立場に人一倍敏感なホンファに話したら「そのような無茶なことに協力できるわけがない」と断られそうなのに。

 

「……イバン様から直接レンファイ様に対する思いを聞きました。私はその誠実さに心を打たれたのです。レンファイ様がイバン様のことで悩まれていたのは私にもわかっていましたし、現状で決まっている自国の婚約者様と一緒になるくらいならば……と、側近の分際で思ってしまいました。私の願いはレンファイ様に幸せになっていただくことですから」

「ホンファ……」

 

 そこにアードルフがお茶を持ってやってきた。机に置かれていくカップを見ながら私はアードルフにも訪ねる。

 

「アードルフ先輩もすんなり協力したのですか? クドラト先輩に聞きましたが、イバン様とレンファイ様が近づきすぎないように見張っていたんですよね?」

「クドラトも案外鋭いですね……ええ、そうです。私はイバン様の護衛兼見張りの役目を負っていましたからね。しかし、私は側近である前に彼の幼馴染であり友人でもあります。主なら止めなければならない状況でしたが、友ならば応援することではないかと判断しました。彼があそこまで自分の望みを口に出すのは初めてのことでしたから」

 

 わざと王子のことを「彼」と呼ぶアードルフの顔は今までにないくらい優しい顔になっていた。そんなアードルフの言葉に王子は眉を下げてフッと笑う。

 

「アードルフが友として俺を見てくれてよかったと思ってる。彼やホンファの協力がなかったらこのようなことはできなかったからね」

 

 レンファイ王女に告白するのは簡単なことではない。まず二人きりになることができないし、タイミングを見て伝えないとレンファイ王女も受け入れてくれない可能性がある。そんな時、通し稽古でイリーナが作り物の誓いの布を持ってきた。それを見て今回の計画を思いついたそうだ。

 

「そこで改めて気づいたんだがシャハールとマリカと私たちの関係はよく似ている。それならばその劇中でレンファイに俺の気持ちを伝えたらいいんじゃないかと考えたんだ」

「……それであのアドリブですか?」

「ああ、その他にも仕掛けは置いたんだが、あのアドリブで全てを伝えようと思って台詞を考えた」

 

 私は今日の劇のシーンを思い出す。あの時シャハールがマリカに言った言葉は実はレンファイ王女本人に向けた告白だったのか。

 

「ではあの時のレンファイ様の演技はもしかして……」

「……演技をする余裕なんてなかったわ……イバンが急に私たちにしかわからない台詞を言い出すんだもの。でも劇を台無しにするわけにはいかないから、なんとかマリカという役を忘れないようにして乗り切ったの」

「でもあれで、俺の気持ちはちゃんと伝わっただろう?」

「……伝わらないわけないじゃない。あんなの……」

 

 レンファイ王女はそう言って自分の頬に手を当てる。

 

 うわぁ、照れてるレンファイ様、マジで可愛い。

 

 しかし、あのアドリブのシーンでまさか本当の告白が行われていたとは、びっくりだ。

 突然の告白に動揺していたレンファイ王女は、とにかくちゃんと劇が終われるように切り替えてそのあとも演技に集中したそうだ。

 それなのに最後の最後、ラストシーンでイバン王子がさっきの告白の返事を今欲しい、という意味の台詞を言ってきた。

 

 あ、最後の台詞が変わったところってそういうことだったんだ。

 

「イバン様、あの劇の流れではマリカが承諾する台詞しか言えないではないですか。なかなか確信犯ですね」

「いや、レンファイが断るつもりなら予定されていたマリカの台詞を言えばいいと思ったんだ。劇はそれで終われるし、私もそれで諦めがつくと思っていたからね」

 

 イバン王子は笑顔でそう言うが、多分最初から諦めるつもりなんてなかったと思う。もうすでに周りまで巻き込んでいるのだ、絶対にレンファイ様と一緒になると決めていたに違いない。

 そしてレンファイ王女はイバン王子に自分も一緒にいたいと返答した。それを聞いてイバン王子は本物の誓いの布を出して改めてレンファイ王女にその本気度を伝えた。レンファイ王女はびっくりしたが、イバン王子の想いを受け止め、あの場で婚約を決めたということらしい。

 

「はぁぁぁぁ……マジですか」

 

 頭ではすでにわかってはいたけど、改めて説明されると衝撃がすごすぎる。

 

 大国の王子と王女が婚約しちゃったよ、しかも劇の本番中に。嘘でしょ。

 

 でもこの衝撃はやがて公になるのだ。学院中が大変なことになるのではないだろうか。

 

 いや、でもその前に二人がやらなくちゃいけないことがたくさんあるよね?

 

「……お二人はこれからどうするんですか? 多分これ、世界中が大騒ぎになる案件だと思うんですけど」

「そうだろうね。それについてはさっきレンファイとも話したけど、まぁまずは私たちの親を説得するための根回しからだね」

「そうね。問題は山積みよ、本当に」

 

 レンファイ王女がもうどうにでもなれという空気を出しながら肩をすくめた。

 

「でも二人で力を合わせれば不可能はないと思っているよ。なんせ二人ともずっと優秀でいるために努力してきたからね」

 

 その優秀さを今度は自分たちの望みを叶えるために存分に使うのだと王子は言う。そんな王子を見てレンファイ王女がふふ、と笑った。

 なんだか二人とも今まで以上にわかり合っているような感じに見える。お互いの本当の気持ちを言い合ってスッキリしたのだろうか。そんな二人を見ていたら自然と口角が上がっていく。

 

 二人が幸せなんだったら、それでいっか。

 

「おめでとうございます、イバン様、レンファイ様。お二人が幸せそうで、私は嬉しいです」

「ディアナ……」

「ディアナは怒っていないのかい? 君が大事にしている劇の中でこんなことをしてしまったというのに」

「確かにびっくりはしましたけど、劇は大成功でしたし、私は怒ってませんよ。ただ、事前に知らせてほしかったなとは思いますが、それはいつも私がやらかしていることなので強くは言えません」

 

 今日ばかりはハンカルの気持ちが痛いほどわかってしまった。

 

 急なことは心臓に悪いね、うん。これからはハンカルの心臓のためにちゃんと事前に報告しよう、そうしよう。

 

 二人はこれからオリム先生にだけ報告するんだそうだ。二人の親の承諾が得られないと二人のことは正式には発表できない。それまで誰にも漏らせない問題のため、そういう噂が学院内で出たら収めてもらうように頼みにいくらしい。

 

「オリム先生に話すということは自動的に学院長にも話がいくと思うのですがいいのですか?」

「ああ、もちろん学院内で私たちが勝手に行ったことだからね、学院長であるアルスラン様にも報告しなければいけないことだと思っているよ」

「そうならないように計画を立てているけれど、もしかしたら私たちのことを知った親が学院の方に問い合わせることがあるかもしれない。そういうことでアルスラン様に迷惑がかかるんじゃないかと思って心配はしているの」

 

 レンファイ王女は学院を作ったアルスラン様のことをかなり尊敬しているらしい。その人に影響が及ぶのではないかと気にしていた。

 

 まぁ、問い合わせが来ても直接対応できるわけじゃないからね、アルスラン様は。ソヤリさんが上手く対応して終わりそうだ。

 

 今回のことを知ってしまった演劇メンバーにはホンファとアードルフが改めて口止めをお願いするらしい。

 私はチラリとイバン王子のうしろに立っているケヴィンを見る。きっとケヴィンもさっき初めて聞かされたに違いない。もしかしたらなぜ自分には知らせてくれなかったのかと怒ったのかもしれないなとその表情を見て思った。

 シャオリーはいつも通りの笑みを浮かべている。

 

 これからの二人は大変だと思うけど、私にできることは応援することだけだよね。

 

「私、お二人のことが上手くいくように祈っていますね」

「ありがとうディアナ。きっとすぐには決まらないことだと思うから、正式に発表できる日が来ることを願っていてくれ」

「はい」

 

 私は二人に演劇クラブの最後の集まりの日を告げて、周りに誰もいないのを確かめてから順番に部屋から出てもらった。

 最後に自分が部屋から出て鍵を閉める。

 そして内密部屋の鍵を返しに副学院長室に行った私はオリム先生に「二人からすぐに話があると思います」とだけ告げて寮へと向かった。

 

 ふぅ、なんかすごい一日になっちゃったな。でもまぁ、公演が無事に終わったからいいか。部屋に戻ったらご褒美にショコラド食べよ。

 

 ルザと一緒に廊下を歩きながら私はググーっとひとつ伸びをした。

 

 

 

 

二人から事情を聞きました。

実は本番中に本当の告白をしていたイバン王子。

レンファイ王女もその気持ちを受け止め、答えました。

まだ正式には決まっていませんが、二人の婚約をディアナは驚きながらも応援します。


次は 公演お疲れお茶会、です。

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