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拾って下さい……。


そう嘆願して来たシアの姿は、実に愛くるしい。

女性から、拾ってとおねだりされて断るなど紳士たるもの出来る筈はない。


「仕方がない子だね。僕が、拾おう」


初めに言い出したのは自分だ。それに、言われなくとも拾う気満々だったとは言えない。


ディオは、あくまでシアから要請を受けて仕方がなくという事にする。その方が後々、何かあった時に有利になるからだ。


「では、シア。改めて、宜しくね」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



シアを拾ってから、早くもひと月が経つ。


「ディオ様、起きて下さい」


毎朝こうして起こされている。いや、起こしているの間違いか……。


「全く仕方がないね、君は」


ディオはため息を吐き、シアの身体を揺する。すると、ふにゃと笑い寝返りを打った。


「ディオ、サマ……むにゃ」


「どうして、僕が君を起こす事が当たり前になっているのかな」


本当なら逆の立場だったのだが、彼女は朝が弱いらしい。始めは起きているかと疑ったが、大きな寝言だった……きっと、自分を起こす夢でも見ているに違いない。



「ほら、シア。朝だよ、起きて。起きないと……食べちゃうよ」


彼女の耳元で、そう囁くと効果は抜群だ。次の瞬間ガバッと、跳ね起きた。


「はい、おはよう」


「お、おはようございますっ」


顔を真っ赤にして恥じらう姿は、愛らしい。


「私としたことが、また……申し訳ございません」


しゅんとなるシアの頭を撫でる。


「別に怒ってないよ。だから、謝らなくていいから」


毎朝の事だが、甘いと思いつつも、つい許してしまう。


シアは今、ディオ専属の侍女だ。屋敷に置く代わりに、()()()()()()貰っている。まあ、形だけだが。


どう考えても、彼女に侍女の仕事が務まると思えない。現に、これが現状だ。


因みにシアとは、毎日同じベッドで寝ている。無論手を出したりはしていない。流石に、こんな純粋無垢な少女に手など出せない……。


シアの希望で仕事を与えているのだが……。

一緒に寝るだけも、彼女の立派な仕事の一つだ。他には、一緒にご飯を食べる、一緒にお茶をする、一緒に散歩をするなどがある。


当たり前だが、どれも侍女の仕事ではない。そもそも、屋敷の使用人の数は十分足りている。


ぐぅ~。


不意に、彼女のお腹が鳴った。


「ハハッ、朝食にしようか」


「はい!」


シアは、恥ずかしがりながらも、嬉しそうに返事をした。


ディオは、部屋を出ると外に控えていた、本物の侍女に声を掛ける。


「後は、頼むよ」


「かしこまりました」


侍女は、丁寧に頭を下げると部屋の中へと入っていった。暫くすると、楽しそうな声が中から聞こえてくる。シアは、侍女とはすっかり打ち解けているようだ。


ディオは、くすりと笑いそのまま先に食堂に向かった。

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