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7

シアは、ディオから距離を取り座っている。


人肉を食べる趣味はないことは、分かってくれた様だが、まだ人攫いの疑いは晴れていない。


「違うって言ってるのに。どうしてそんなに離れて座るのかな。離れ過ぎて、よく声が聞こえないんだけど……」


あの後食堂から移動して、シアの希望で広間にて話し合いをしているが……広間の端と端に椅子を置き互いに座っている為、物凄く声が聞き取りにくい。シアの言葉が途切れ途切れにしか聞こえない。多分彼女も、同じ筈。


「人攫いかも知れないのに、隣になんて座れません‼︎」


「だから、それも違うってさっき話したよね‼︎」


距離がある為無意識に、段々と互いに語尾は強くなる。


「だって、身体で払って貰うって言ってました‼︎」


凄い用語を大声で話すシアに、ディオは苦笑するしかない。半ば冗談のつもりだったのに、かなりの大事になってしまった。まあ、自分にも責任はあるのだが。



「ディオ様、如何なさるおつもりですか」


黙って2人の様子を眺めていたセザールに、そう問われた。


「ハハッ……彼女の様な女性は初めてだから、どうしたら良いものかと、今思案しているところだよ」


自分で言うのもなんだが、女性の扱いは慣れているし上手いと自負している。これまで散々社交の場などで経験を積んできた。だが様々なタイプの女性を見てきたが、シアの様な女性は初めてだ。


正直どうしたらいいか、分からない……。


「ディオ様らしくございませんね。どんなご令嬢も手のひらで転がされていたディオ様が、シア様にはお手上げですか」


「別に、思案しているだけであってお手上げなんて言ってないよ。僕にかかれば、彼女なんていちころだよ」


ディオは、余裕そうに鼻を鳴らす。だが、内心では汗をかいていた。


売り言葉に買い言葉、思わず口をついて出てしまった……。


ディオは徐に立ち上がると、シアの元へ歩いて行った。シアはそれに気付き慌てて逃げようとするが……。


甘いっ‼︎


「ほら、捕まえたよ」


途中少し走ったせいで、息が荒いままシアの腕を掴んだ為、些か変態じみて見えるのは、致し方がない。

シアは腕を掴まれジタバタと動くが、ディオは自分へと引き寄せ腕の中に閉じ込めた。


「は、離して下さいっ。私、帰ります!」


「あれ、いいのかな?行くところ、ないんじゃないの?この時期はどこも宿はいっぱいだから、野宿するしかなくなるけど……大丈夫かな?」


ディオは淡々と現実を丁寧に教えてあげた。我ながら親切だと思う。


「ゔぅ……」


かなり悩んでいるのだろう。唸り声をあげ、急に大人しくなった。


彼女は本当に、何処ぞの貴族の令嬢なのだろうか……。自分で断言しておいてなんだが、自信がなくなってきた。


確かに身なりはいい。かなり上物の衣服を身に付けている。それにシアの手や肌はとても綺麗だ。真っ白で陶器の様に美しい。平民なら日に焼けて、肌が濃いし、手だって水仕事で荒れている筈だ。だが、自信がない……。


ディオは、腕の中にいるシアを見る。まだ、唸っていた。


本当に変わった()だな……。


「分かりました……諦めます」


唐突にそう答える彼女に、ディオは眉根を寄せた。


「何を、諦めるのかな」


「覚悟を決めました」


相変わらず、話が噛み合わない。


「私を、煮るなり食べるなりして下さって、結構です!なので……私を、拾って下さい」


ディオは、意外な言葉に目を見開いた。



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