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18

「さて、ブランザ公爵。この後、お時間を頂戴しても宜しいですか」


クラウディオは、ブランザ公爵に向き直るとそう言った。瞬間彼は、身体をピクリと震わせた。


「父上から、お話ししたい事があるそうですよ」


「へ、陛下が……」


放心状態になった。この後の自身の運命を悟って絶望しているのだろう。


まあ、爵位を剥奪され何処か遠方へ飛ばされる事は目に見えている。自業自得だ。同情はしない。


「わ、私は無関係ですわ。この人が勝手にしていた事です」


公爵の妻、レティシアの義母はクラウディオにそう言って踵を返す。すると義母の手を、ブランザ公爵が掴んだ。


「お前だけ逃げるなど、許さんぞ」


「私は、関係ないわ!貴方が勝手にした事でしょう⁉︎巻き込まないで頂戴!」


皆が見ているというに、互いに罵り合いを始める。クラウディオは、やれやれと肩をすくませた。



「そんな事仰っても、夫婦ですからね。しかも、貴女は騙しとった金銭を使ってますよね、その出所を知りながら……僕の見解では、同罪だと思いますよ」


「っ……」


唇を噛み締め小刻みに震えながら、彼女は黙り込んだ。そこに、数人の兵が現れ、ブランザ公爵とレティシアの義母を連れて行った。


「お父様?」


それまで状況がまるで分かっていなかったレティシアが、声を上げた。


「ディオ様、お父様達はどこへ……」


「父上が、お2人に話したい事があるみたいでね」


「陛下がお父様に……どうして……それに、兵が」


不安そうなレティシアに、そっと口付ける。すると、彼女は顔を真っ赤にしながら俯き口を閉じた。


「心配しないで」


強引に誤魔化し押し切る。

今は、話すべきではない。きっと、優しいレティシアは傷つくだろう。後で2人きりになったら、思う存分彼女を、慰めてあげればいい。


クラウディオは、ロザリーを見遣る。



「ロザリー嬢、君1人になってしまったね。これから、どうするのかな」


「……っ」


何か、言いたげにしているがロザリーは黙り込みクラウディオを睨みつけるだけだ。


「病弱なフリは、もういいのかな?今の君、全然か弱く見えないよ」


その言葉に一気に顔を真っ赤に染めるロザリーに、クラウディオは彼女の耳元で、囁いた。


「公爵は爵位を剥奪され、辺境へと飛ばされる。無論君の母君もね。娘の君には責務はない故、ついていく必要はない。だが、ここにはもう君の居場所はないよ。残念だったね、折角公爵家のお姫様になれたのに。残るなら経済力のない君は、平民に混ざり生活するか、若しくは修道院かの2択しかない。心して考える事だ」


「そんなの、嫌‼︎私は公爵令嬢なのよ⁉︎貴族のお姫様なの‼︎」


ロザリーは気が触れた様に、叫んだ。参列者は一様に、彼女を見る。レティシアも、驚き顔を上げた。


「ズルいわ‼︎お義姉(ねえ)様ばっかり‼︎」


ロザリーは、レティシアに掴み掛かろうとする。


「ロザリー⁉︎」


クラウディオは、レティシアに触れさせないようにロザリーを突き放した。


「ディオ、様……ロザリーは……」



彼女は、程なくして兵に取り押さえられると、何処かへと連れて行かれる。引き摺られながらも、レティシアへの暴言は止まらなかった。





ようやく、静かになった。


「彼女、精神的に不安定みたいだね」


まあ、これから彼らにはそれ相応の罰を受けて貰う事になる。


全ては、僕のシアを蔑ろにした罰だ。


クラウディオは、レティシアに優しく微笑んだ。



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