表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

1

「レティシア、異論はないな」


どうして、私が……。


あの後レティシアは父に呼び出され、エドモンとの婚約破棄を改めて告げられた。父の後ろでは、まだ泣き真似をしているロザリーが立っている。だが、口元がニヤついているのが見えて、本当に腹立たしい。


「私は何1つ、良心に恥じる事はしておりません。寧ろ嫌がらせを受けているのは、私の方なんです!ロザリーが、私を陥れようとしているんです!お父様、目を覚まして下さい。最近のお父様はおかしいです。義母(あのひと)義妹(ロザリー)に騙されています」


レティシアは必死に訴えた。以前の優しい父に戻って欲しかった。婚約者エドモンなんていらない。欲しいならロザリーにあげてもいい。義母も義妹もいらない。だから、また前みたく父と2人で幸せに暮らしたい。


「レティシア」


「お父様……」


眉根を寄せる父を見て、分かってくれたとレティシアは、安堵した。だが。



「お前には失望した。自分の大切な母と妹をそんなふうに言うなど、情けない。挙句、この期に及んで人の所為にするなど」


レティシアは、黙り込んだ。これ以上話しても無駄だと分かったからだ。



もう、優しかった父はどこにもいない。



「お前の様な娘は、この公爵家には必要ない」


もう、幸せな日々は戻らない。


「出て行きなさい」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




頭が真っ白になった。取り敢えず、自室へ戻り必要最低限の物をトランクに詰め込んだ。荷造りなど生まれて初めてする。


一通り詰め終わると、レティシアは引き出しから母の形見の指輪を取り出し紐を通して、首から下げた。


部屋を見渡す。


幼い頃からずっと使っていたレティシアの部屋だ。思い入れがある。僅かだが産みの母との思い出も。


まさかこんな事になるなんて夢にも思わなかった。


父が義母や義妹を庇っても、最後には絶対自分の味方をしてくれると心の何処かで信じていた。だが、どうやらそれは自惚れだったようだ。


レティシアは、門を出た。その時、後ろから声をかけられる。



「可哀想なお義姉(ねえ)様。惨めね。でも心配しないで?お父様には、娘である私がついてるから」


満面の笑みで話すロザリー。いつもなら、苛っとする筈の嫌味も、今は何も感じない。今更どうでもいい。


レティシアは、無言でロザリーを一瞥するとその場を後にした。


「さようなら…… お義姉(ねえ)様」


ロザリーの冷たい声が、響き聞こえた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ