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拾ったつもりが、逆だったと気付いた。拾われたのは、彼女ではなく僕だったんだ。


「本当は僕が、君に拾われていたんだよ」


クラウディオはベッドに横になりレティシアを、抱き締めた。彼女は、小さく寝息を立てている。その寝顔は安心した様に、笑みを浮かべてた。


「君と、出会えて僕は変わった。君が、僕を変えてくれたんだ。今こうしてシア、君を抱き締めている事が酷く嬉しくて、幸せだよ」


クラウディオは、レティシアのおでこに口付けをする。


ずっと、満たされなかった。どんなに女性を抱いても。身体が満足しても、心は空っぽだった。


「ありがとう、シア」


君が教えてくれた。空っぽだった僕を、こんなにも満たしてくれている。


婚儀まで、あと数日。


「君を必ず幸せにするからね」


クラウディオは、そのまま眠りに就いた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




鳴り響く鐘が、レティシアとクラウディオを祝福する、歓声と共に。



「綺麗だよ、シア」


彼女は恥ずかしそうに、微笑んだ。純白のドレスに身を包んだ彼女は、いつもとはまた違う美しさに見える。


誓いの言葉と口付けを交わした瞬間、クラウディオは歓喜に満ち溢れた。これで、名実ともにレティシアはクラウディオの妻となった。



不意に視線を向けると、沢山の参列者の中に見覚えのある顔を見つける。


レティシアの父ブランザ公爵だ。その隣には妻と娘のロザリー、レティシアの元婚約者であり妹の現婚約者エドモンがいた。


「お父様……」


ブランザ公爵達の姿を見つけたレティシアは、涙を浮かべる。


「シア、行こう」


クラウディオは、レティシアの手を引きブランザ公爵達の元へと向かった。



「お父様、来て下さったんですね」


レティシアは、泣き笑いの様な顔をしていた。


「あ、あぁ……」


ブランザ公爵の顔色は見るからに悪い。


「屋敷を出てから色々ありましたけど、私今とっても幸せです」


今度は満面の笑みを浮かべる。その姿に、ますますブランザ公爵は顔色が悪くなり、隣にいた夫人も明らかに動揺していた。


きっとあの手紙を思い出しているのだろう。本当ならば、参列などしたくなかった筈だ。だが、国王からクラウディオとレティシアの結婚について話をされ、まさか参列しない選択など出来る筈もない。




「そ、そうか……それは、良かった。それでだ、レティシア。この通りだ、許して欲しい……すまなかった、心から反省している」


突如嘆願し謝罪をするブランザ公爵にレティシアは、目を丸くした。


クラウディオは心の中で、鼻で笑った。差し詰め、国王に自分の悪事をバラされたくないのだろう。見え見えだ……我が身可愛さに、情けない。


「お父様……」


レティシアは、今度は涙を浮かべ感動しているようだ。きっと、彼女を屋敷から追い出した事への謝罪だと勘違いしているに違いない。




「お義姉(ねえ)様」


その時ずっと横で見ていたロザリーが、話に割り込んできた。こちらは顔色が悪いというより、怒っている様に見える。


「ロザリー、貴女も来てくれて嬉しいわ」


「何が嬉しいよ、この嘘つき!あの手紙なによ⁉︎その所為で私は婚約破棄されるわお義父(とう)様からは怒られるわで、最悪だったのよ‼︎」


レティシアは、ロザリーに怒鳴られ身をすくめた。

かわいそうに……クラウディオは、彼女を抱き寄せる。


「義理とはいえ、自分の姉に対する態度としては感心出来ないね、ロザリー嬢?」


クラウディオの唇は弧を描いているが、目はまるで笑っていない。ロザリーは、クラウディオの鋭い目つきに怯み俯いた。




「レティシア!君とやり直したい!」


そして婚儀の最中だというのにも関わらず、不謹慎な言葉を叫んだのは他でもないエドモンだ。


「俺は、ロザリーに騙されていたんだ!彼女は病弱なフリをして、俺から同情をされるように仕向けていたんだ……それにまんまと引っかかってしまった。だが、気が付いたんだ。本当の愛に!俺には君しかいない!今からでも遅くない、俺と予定通り結婚しよう」


これは、僕に喧嘩を売っていると捉えるしかないね。まさか、僕に喧嘩を売る様な人間がいるなんてね、驚くよ。


エドモンの発言に、怒りを通り越して呆れてしまう。エドモンというレティシアの元婚約者は、随分と頭が弱いようだ。クラウディオは、不敵に笑った。


「君、随分と遊んでいるみたいだね。人妻にも手を出しているみたいだし。大丈夫?」


クラウディオの言葉の意味を理解する前にエドモンは後ろから、肩を叩かれた。そして、絶句する。そのまま彼は、有無を言わせずに引きずられ連れて行かれた。


レティシアは、訳が分からず呆然としていたので、クラウディオは、優しく頭を撫で「シアは、気にする事ないよ」と話した。




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