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9/19

-9- ノア

 

「まあ、用件は伝えた通りだ。おまえが担当している国護の儀の魔法陣から、女性が召喚び出されるらしい。そして、それはヒロインだ。ヒロインが現れると、おれたちは攻略対象と言う、ヒロインと恋愛する男性の役に割り当てられる可能性が高い。そうなるとおれの計画が狂うし、そこにいるリリアも生命の危機にさらされるそうだ」

「ありゃりゃ、お嬢さまなのに若いうちから苦労してるんだなあ」

「国護の儀は国の行事だから止める訳には行かないが、その後の展開をスムーズに進めるためには、おまえの協力が必要だ」

「まどろっこしいことはなしで行こうぜ。召喚する場所を神殿じゃなくて、そこら辺の草原にするか? そうすれば召喚び出した直後にそっちも会えるだろ」


 そこらの草原で召喚されるヒロイン……。

 そういうシチュエーションもありですけど、それって別ジャンルのゲームみたいね。

 そもそも国護の儀って、儀式が通常通り行ったら幻獣が召喚されるですけど……。

 幻獣に失礼にならないかしら。

 まあ、ぱいろーにあんな態度を取ったわたくしが言えることじゃありませんけれど。


「それも考えたんだがな。あまりゲームとは違う展開にするとヒロインに感付かれる恐れがある。という訳で、ノアの役目はゲーム通りの進行、およびある程度の時間がたったタイミングでヒロインを草原に呼び出すことだ」

「適当に草原って言ったけど、本当にそこでいいのか……。ゲーム通りの進行については、リリアさん? に聞けばいいんだよな?」

「すまんな。攻略対象がそこそこ面倒な奴しかいないもんだから、あまり公的な場所には集まれないんだ。ゲームについてはその通りだ。リリア、出番だぞ」


 ああ、はい。分かりましたよ。

 本当に命令することに慣れてるわね。

 わたくしみたいな表面上だけ令嬢とは格が違いますわ。

 言われたことをするだけですから、気は楽ですけどね。


「そういえば僕も聞いておきたかったんですよ。いつヒロインと会うのかとか」

「おお、そういうことならオレも聞いておいた方がいいな。カラミティ嬢、いいか?」

「ええ、構わないわ」

「レンはどうするの?」

「レニー、余計なお節介だぞ。そうだな……。興味はないが、耳だけ傾けておく」

「お礼を言ってもいいのよ? ふふ、冗談よ」


 う、うわあ。急に大勢の前で話すことになってしまいましたわ。

 で、でも! 考えようによれば初対面のノアだけではなく、それなりに会話したことのあるゼロもいますし、今日会ったばかりとは言えジルとレンもいますわ。

 ええ、一対一で話すよりもずっと気楽なはず。たぶん。


「そうね、ゲームでは国護の儀は神殿の最上階、天窓のある部屋でおこなわれていましたわ。立会人は、国王、あとモブ大臣、それと儀式を執り行うあなた、それとモブ魔術師ね」

「モブ多いですねえ」

「個人製作の乙女ゲームだもの。使わない立ち絵を量産する暇はなかったのよ、きっと」

「一つ作って色違いにすれば良かったのに」

「それは手抜きじゃないかしら。他は、本当はトキワとかヴァージルとか、天井裏にレンドールとか、儀式を見に来た国民の中にもしかしたらマイカが混じってたかもしれないけれど、描写はないわ」


 僕だけ雑じゃないですか?という声が聞こえたけど無視よ。

 だって、ゲームのマイカはお金のない田舎者だもの。

 わざわざ王都まで来るお金を貯められるとは思わないし、女の子が出る訳でもない国の行事に興味があるとも思えないわ。

 ゲームではその儀式から女の子が出てきちゃうんだけど、ゲーム開始前にそのことをマイカが知る術はないし。


「本来、幻獣を召喚して一年の安全を祝う儀式だから、女の子が召喚された神殿は大騒ぎよ。ヒロインはとりあえず神殿の一室で預かることになるわ。その間、あなたたち魔術師は召喚するはずだった幻獣の力を探すの。それがないと国が危ないらしいから」

「ふーん、その流れからすると、間違って召喚び出した異世界人に幻獣の力が宿ってんのかな? それをおれたち魔術師が解明すると」

「ええ、その通りよ。国の方でもヒロインは自国民ではないという調べがついて、ヒロインは国で保護されるわ。次の国護の儀は一年後だから、少なくとも一年は国にいてもらわないといけないから。それで、幻獣の力を持つ少女を異世界の都合で国から出さない代わりに、ヒロインにはそれ以外の自由がすべて与えられるの。あなたたち攻略対象なんかがいい例ね」


 本来なら身分上の問題とかで結婚できないマイカとかトキワとか。

 顔がいい男性と好きに恋愛できる、ってのがそもそもその特典ね。

 あと、好きな男性の婚約者となるリリアの処分を好きにできる辺りも、実はそうなのかも。

 国としては、あわよくば自国民と結婚してもらえれば、幻獣の力は一生国に留まることになる。

 その間にヒロインが召喚された経緯や、異世界人の知識について調べられるとでも思っていたのでしょうね。


 残念ながらヒロインは、どんな男性とでも恋愛できる類まれなスキルぐらいしか持ってないのだけれど。

 でも、敵国とかにスパイとして潜り込ませたら、案外国が傾くかもしれないわね。

 その前に幻獣の力を失った我が国が傾いているかもしれないけど。


「僕はいつヒロインと会うのです?」

「ノア以外の攻略対象と会うタイミングはみんな一緒よ。神殿に閉じ込められたヒロインが外に出たいと言う時があるの。最初は許可されないのだけど、幻獣の力を持つことが分かってから、幻獣の機嫌を損ねる訳には行かないから許可が出るのね」


 そこで国王の目が届く王都内を散策するのだけれど。

 そこでスチルが何枚か公開されるわ。

 そこがヒロイン=プレイヤーが攻略対象の姿を見ることができる初の機会。

 そのあと誰に近付いてイベントを発生させるかは、プレイヤー次第ね。

 どの攻略対象も立ち絵があるからそうだと分かるのだけれど、ゲーム上の表記としてはこの時点では街を歩く一般人よ。

 神殿に戻ってヒロインは出会った立ち絵付き一般人に思いを巡らせて……そこから乙女ゲームの真髄、恋が始まるのよ。


「じゃあ、外に出たいって言ったらチャンスって訳か」

「幻獣の力があると分かったら許可を出すのですわ。それまでは我慢ですの」

「あとは全員が簡単に集まれる広場的草原があればいいんですね」


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