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-8- スバル

 

 それから麓に降りて、馬屋に会いに行ったのですけど、交渉はほとんど中でおこなわれたので何があったのかはよく分かりませんでしたわ。

 しばらく待つと立派な体躯をした馬が一頭現れて、それが車を引いていました。

 レンとレニーがそこに乗り込んで、わたくしも乗り込むよう指示されましたけど、断りましたわ!

 そんな死亡フラグしか発生しないような馬車には乗りたくありませんの!

 あと気まずい! 他に誰かいて欲しい!


 馬車はそのまま王都に向かいましたの。

 途中で馬が一頭追加されたりもしましたが些末な問題ですわね。

 ああ、わたくしの屋敷が近付いてくる。

 でも、その前に最後の攻略対象に会わなくてはいけませんわ。

 テクニカルスペシャリスト、ノア。

 この世界のノアはどんな人なんでしょう?


 王都の大きな宿を一つ借りて、わたくしたちは集結しましたの。

 今回は相手が国の魔術師であるということで、本拠地には突撃しないそうですの。

 向こうからこちらに来てもらう、ということですわね。

 ……そういうことを言うと、王族のトキワだったり貴族のヴァージルだったり、表向きはいないはずの暗殺者のレンドールも同じ対応をしなくてはならないはずなんですけど。

 深く考えないでおきましょう。

 マイカ? あれは庶民でニートなので、突撃が正しい判断ですわ。


「あらかじめ話しておくが、ノアは一番危険だ。地雷が分かりにくい上に戦闘力が高い」

「地雷?」

「踏み抜いてはならぬ相手がいる。ノアの逆鱗と言ってもいいな。そいつはノアについてくる従者で、ソール・エルムという。緑髪の男だ。ノアは金髪だ」

「従者を大事にしているのね。要はレンが私を大事にしているようなものね」

「おまえらにはそれが一番分かりやすいな。ヴァージルも、ノアはおまえの幼馴染枠だと思っていればいい。ゼロはテルと同類だと分かれば十分だろう? スバル、おまえは同類だから説明を省くぞ。そして、リリア。おまえの認識が一番肝心だ」

「どういうこと? レンとレニーの関係に似てるのでしょう。刺激すれば死ぬということではないの?」


 レンが驚いてるけど、実際そういう関係でしょうに。

 あとスバルって呼ばれた男の子、見たことない顔ね。

 ゲームにいたかしら? 立ち絵はないとしても、名前も聞いたことないなんてね。

 わたくし、『花散る』をやりこんでたつもりでしたけど、ちょっと自信をなくしちゃうわ。


「それは間違いないが、どちらかというと男女の恋愛に近い感じだ。両方男だが相思相愛だ。だから女性が、恋愛関係の話を振るのは危険だということなんだ」


 要はホモというかゲイだな。

 トッキーがあっさりと言う。

 乙女ゲームで攻略対象が同性愛者!? いや、驚くことじゃないわね、よくあることよ。

 設定としてはよくあるけど(そしてヒロインに攻略されちゃうけど)、実際に存在するとなるとやっかいね。

 しかもこの年で相手が近くにいるって、遊び人タイプじゃなくて一途タイプよね。

 こじれたらやっかいだわ。


「わたくしは黙っていればいいかしら?」

「いいや、普通に話してくれて構わない。アレ以外は気さくな男だからな。向こうから話しかけてくるかもしれないし、そのときに答えないのは変な話だろ?」

「そうね……相手は日本人なの?」

「日本人ではないはずだ。ただ、現代日本的なあれそれはだいたい通じるぞ」

「まだ何も言ってないじゃない! 心を読まないでったら!」

「顔に書いてあっただけだ」


 トッキーの平然とした顔に腹が立ちますわ。

 いいですの? その顔色を見るってスキル、結構成功率低いんですからね!

 だいたい、わたくしは使えませんし!

 その顔でトッキーが何を考えているかなんて見当もつきませんわ!

 怒ってたらどうしましょうね!


「来たぞ」


 わたくしはわずかに緊張して、扉から目をそらしますわ。

 一番最初に目が合ったら、わたくしから話をしなくてはいけませんもの。

 そんな言い出しっぺならぬ見出しっぺの法則なんて、嫌ですわ!


「おー、思ったより人がいる。これが全員攻略対象なのか?」

「俺が攻略対象じゃないくらいだし、いくらかは違う人が混じってるんじゃないか」

「ソールが攻略対象だったら、ヒロインは消さなくちゃな。そうじゃなくて良かったよ。そういう手間よりはソールと一緒に居たいし」

「極端な奴め。……あのさ、心配しなくても俺はおまえ以外を好きにはならないよ」

「好き! 付き合って!」


 もう付き合ってるだろ……。という呆れた声が響きますわ。

 それが緑髪の方、ノアの逆鱗と言われた方ですね。

 なんかこの人はまともそう、というか苦労してそうな感じ。

 あと、ノアは根暗っていうか自由人みたいな感じですのね。

 学者気質なのは変わらないのかしら。きっと変わらないのよね。

 今も国の魔術師のトップであり続けていると言うことは。


「話はできるようだな」

「こいつが暴走したら俺が殴って止めるからさ。大丈夫だよ」

「おうよ。任せとけ」

「殴られる側のセリフじゃないな」


 それが殴られる方のセリフですの?

 って、もうトッキーが突っ込んでましたわ。ナイスデース!


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