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-4- クローディア

 

「と……いうことですの」

「へえ、ここは乙女ゲームの世界だったんですね。通りで自分の顔がいつもより輝いていると思いましたよ。テルさん並みですよ! イケメンなんですねえ」

「おまえの周り、一般的なイケメンいなくないか。ショタ系イケメンか美少女系イケメンしかいないだろう」

「精神的イケメンならいるので相対的にバランスが取れます。あと、若かりし頃のハンマーさんとかエッッシーさんとか、現実世界のセルさんとかはちゃんとイケメンです」


 えー、と全部話したけど、この人たちに伝わったのかしら?

 乙女ゲームの説明から入れるべきだったかもしれませんね。

 あ、でもあの男性がやるっていうちょっとエッチな奴とかはやってるのかしら。

 よく知らないけれども。

 暫定マイカから色んな人名(?)が飛び出してますけど、転生前の知り合いでしょうか。

 これは覚えなくてもいいかしらね。

 まさか、転生先でも知り合いが転生しているはずないでしょうし。


「ヒロインが攻略対象を選ぶと、自動的にカラミティ嬢はその攻略対象の婚約者となる。その後ヒロインがたどり着いたエンド次第では、カラミティ嬢は死んでしまう。それを何とかしようとしているところだったんですね」

「と言っても何も対策はなくて、これからどうしようと考えていただけなのですわ」

「簡単だ。おれたちがヒロインとの恋をしなければいい。あるいはリリア、おまえが攻略対象ではない相手と婚姻関係を結べばいい。それの手伝いならできるぞ」

「裏工作とか得意ですもんね。でもあれですよ、流行りの婚約破棄されたらどうするんですか? カラミティ嬢のお父さんはやり手の領主だそうですよ」

「そいつはおれの計画に邪魔だから消す。婚約破棄は……そうだな、対処はある。リリア、第二王子を知っているか? 今世でも前世でも構わん」


『第二王子』。その言葉にドキリとします。

 当然、貴族のたしなみとして今世でも第二王子には会ったことはあります。

 でも、色濃く記憶に残るのはゲーム内にあるとあるスチル、そして立ち絵。

 そうです。第二王子はゲームに登場するキャラクターの一人なのです。


 そして大サービスですわ!

 これをご覧の現代日本人の皆様にはお伝えしますが、わたくしの中身の最推しは攻略対象の五人ではなく、面倒な男の介護に忙しいヒロインでもなく、どうしてそうなるのか不明な尻軽令嬢リリアでもなく、第二王子のクローディアなのですわ!

 二番目は作中屈指の癒しキャラ、ヴァージルです。


 クローディアはゲーム起動初回時のみ登場する立ち絵ありキャラクターで、よくも悪くも普通の王族ですわ。

 ただ、攻略対象の癖の強いルートを攻略しているとふと普通が欲しくなるというか、クローディアの対応はまともで常識的だなあって思うときが来るんですの!

 普通に恋愛するなら、ニートも俺様も吸血鬼も人殺しも陰湿学者もお断りですよね!

 だって、普通に考えたら王族って玉の輿ですわよ。

 しかも第二王子で、次期国王の第一王子と関係が良好。

 あと、クローディアは攻略対象じゃないから病んだりしない。

 自分がハッピーだからって人を不幸にしたりしない。


 そういう人と恋愛を楽しむ、そういうことがしたくて乙女ゲームを遊んだんです。

 どうせリアルではぼっちだよ、ってわたくしの中身が言ってます。自棄です。


「……知っていますわ」

「じゃあ第二王子と婚約しよう。リリアもまんざらじゃないようだし」

「え? 王子様って小さいころから婚約者がいるもんじゃないんですか?」

「ゼロはなんで微妙に詳しいんだ? 次期国王ともなれば割と真剣に選ばれるが、第二王子はそうじゃないからな。それにこの国、そこまで制度がかっちりしてない。よって第一王子にも今のところ婚約者はいない。好いている女はいるようだがな」

「へえ。ああ、僕が詳しいのは、知り合いの妻や知り合いの妹に流行りだからってざまあ小説やら婚約破棄小説やら読まされたからですね。そのあとのことはあんまり思い出したくないです。なんでわざわざ男に聞くんですかね? 自己完結してほしいんですが」

「ああ、そういう……お疲れさま」


 暫定マイカとトキワの間になにやら奇妙な連帯感が生まれますわ。

 その男特定の仲良し空間やめてくださらない?

 この空間の女性はわたくし一人ですのよ? ボッチ感が増すじゃありませんか。

 というか、この人も暫定トキワなのよね。

 見た目完全に立ち絵そっくりだけれど、もしかしたらそっくりさんかもしれないし。

 俺様を絵に描いたようなトキワが、監視員に好かれているとは考えにくいし、あのルートのヒロインへの依存具合からして屋敷の主人になれるほど自立しているとは思えないし。


「考えているところ悪いが、おれはトキワ・シャルトルーズだ。なんでゼロはマイカなんだろうな? ゼロのままで良くないか」

「えっ、うーん、庶民でゼロっていう名前がありえなかったんじゃないですか? そういうトキワさんだって、結構日本的な名前ですよね。ここ中世ヨーロッパ風ですよね?」

「そうだなあ。なんでだろう。あ、おれは日本人じゃないからな」

「じゃあ外人さんですか。どこの国ですか?」

「おまえらの感覚からするとアラビアあたり? 地球で日本があるけど、架空の国が存在する世界観から転生してきた異世界人だ」


 えっなにそれ、どういうこと? 誰か説明して。

 確かにトキワだけ日本の単語っぽいのは、プレイ中から不思議に思ってたけど。

 トキワのルートでちょっと明らかになるんだっけ?

 推しじゃないからよく覚えてないわー。


「それにしてもヴァージルに、レンドールに、ノアか。たぶんあいつらだとは思うんだが、確信が持てないのでちょっと調査してこよう。ドルジア、おれは出かけてくる。二人を客間に案内しておけ。ディルメス、着いてこい」

「はい。お供します」

「はいはい。承りましたよ」

「だが良かったな、リリア。おれの想定している通りなら、ヒロインがどんなやつであろうと攻略対象の方から断りが入るだろう。おまえもわざわざ第二王子の婚約者になる必要はないかもしれないな」


 からかうような口調に、わたくしは首を振りますわ。

 万が一で死ぬくらいなら、推しの婚約者になった方がいいに決まってますわ!

 今の今までクローディアのこと忘れてましたけど、推しが誰かと結婚するのは嫌ですわ。

 わたくしと婚約することが果たしてクローディアの幸せになるかは不明ですけど、少なくともわたくしは幸せにするための努力をしますわ!

 その辺の玉の輿や権力に夢見る令嬢とは違うとこ見せてやりますわよ!


「僕も女性には色々苦労してますし、恋愛ってキャラじゃないですね」

「その苦労ってわたくしは入っていませんわね?」

「ええ。前世の記憶ですよ。一生童貞でしたし」

「享年23才が何を言ってるんだか」

「やだなあ。僕が死後も活動してたゲームは一応そういうことできるゲームですよ。相手いないと無理ですけどね!」


 ちょっとナイーブな話題ですわね。

 ここで口を出して、心の傷とかになると嫌ですから黙っていますわ。

 心の傷なんか作ったらヒロインの手管にあっさりなびいてしまいますもの。


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