73話 メキシカ防衛戦3(大和攻防戦その3)
F-35B改 10機は敵第2波攻撃の迎撃に向かうため、大和の後部甲板から順次離陸して行った。
「艦長、先程航空管制担当に指示していた『アレ』とは一体何ですか?」
「副長、砲雷長、話を聞きたいか?」
「「ハイ、是非!」」
「実は新開発の兵器をF-35B改に搭載したのだ」
「それは一体どんな兵器なのですか?」
「それを説明する前に、F-35B改は1機にミサイル10発を搭載出来るが敵の撃墜数は精々10機で、F-35B改の機関砲は弾数が少なく連続発射で3秒も持たない。
そこで最近国防装備庁が新たな超兵器を開発したのよ。
元々は電磁バリア発生装置を応用したもので、戦闘機の主翼は刃物のように鋭いところに目を付けて、主翼を刃として活用したわけよ」
「だけど、それでは戦闘機の機体が持たないのではありませんか?」
「その点は考慮して、機体全体を強化する他に特に主翼を含めたあらゆる翼を強化して戦闘機全体を電磁バリアで包み込み、このバリア層を超音波振動させることで戦闘機全体が剣のような刃物に変わるわけなんだ」
「はぁ、理屈は分かりましたが本当に戦闘機で航空機を切れるのですか?」
「当初、俺も半信半疑だったがF-35改テスト機が戦闘攻撃機の中で一番分厚い装甲を装備するA-10の古い廃機に向けて体当たりしたところ、俺の目の前でA-10が砕け散ったのだ」
「え?戦闘攻撃機の中で一番堅くて丈夫なA-10が一瞬でバラバラですか?」
「そうなんだ。何処まで堅いモノを突き破れるかという貫通試験では、テスト機の速度を音速にすれば200mm鋼板を突き破ることが出来るらしい」
「え?戦車並の装甲をぶち破ることが出来るのですか?」
「ま、そうなるだろうがコレには条件があって、音速飛行で且つ錐揉み飛行をすることで、ドリル効果が生まれるらしいがコレは現在テスト中らしい」
「ド、ドリルですか?」
「そう、1機だけでなく5機編隊で行うらしいが、今回はその実施プログラムが間に合わなかったらしい」
「それより艦長。この新兵器の名称は?」
「それは『スーパーソニックブレード』という名称で略称が『SSB』なんだ」
「艦長。その兵器の名前、実に格好良いですね」
「砲雷長もそう思うか。国防装備庁のネーミングはいつもダサいと思っていたが、今回の名称は俺も結構気に入っているんだ」
「艦長、戦闘機で敵爆撃機に衝突させたら絶対墜落します。だからこの作戦は中止して下さい!」
「副長、俺はこの新兵器のテストを何度も見ている。
パイロットが簡単に死ぬような兵器ならば俺は絶対許可しない。
それに、簡単に壊れる安っぽい兵器だったら絶対採用しない。
俺が絶対の信頼を確認した兵器だから、この作戦を実行する。
副長が俺のやる事に信頼が置けないなら、この大和から直ちに退艦せよ!」
「ううっ、艦長。出過ぎた事を言い過ぎました。申し訳ございませんでした」
「うむ、副長。取りあえず謝罪は受けておく。後は黙って見ておれ」
「ハッ!」
「艦長、先程の我が艦から発射した魚雷が全て20発が全て敵潜水艦に命中し、全艦撃沈しました」
「そうか、他の敵潜水艦は存在しないか?」
「今のところ現海域には艦船、潜水艦の類いは居なくなりました」
「よし、そろそろF-35B改が敵航空部隊と遭遇するはずだが、モニター担当、空中戦の様子をスクリーンに出せるか?」
「了解、先に飛ばしていた無人機からの映像を先程から受信していますので、空中戦の映像をスクリーンに出します」
艦長の指示により、艦内のモニターやCICの大型スクリーン等に空中戦の様子が映し出された。
F-35B改はステルス機能の他、光学迷彩機能を働かせて可能な限り爆撃機の中核であるB-17を狙って対空ミサイルを撃ったが、B-17の数だけでも500機いて10機のF-35B改のミサイル100発全てでもようやく1/5の数を撃墜するだけであった。
F-35B改は対空ミサイルを全て使い切ると、次にB-17に向かって体当たりするように自機主翼を敵機の片方側主翼の端に当てると、日本刀の試し切りみたく一瞬で主翼が真っ二つに割れて綺麗な切断面を見せた。
そう思ったのは一瞬で、B-17は主翼の一部を失うことで機体のバランスを崩して失速し海中に墜落した。
また、別のF-35B改は水平飛行をしているB-17の水平尾翼を狙って急降下状態から垂直に体当たりを実施したが、若干衝突ポイントがずれて水平尾翼ではなく後部胴体部に自機が体当たりしてしまった。
その結果、B-17の後部である尾の部分が千切れる形で切断されて、機体のコントロールを失い海中に墜落して行った。
だが、体当たりしたF-35B改は電磁バリア機能で全く損傷が無かった。
「おい、航空管制担当。モニターの画面を見る限りでは味方機が若干躊躇しているようだぞ。
B-17の機体装甲では全く問題なく破壊できるから、下手に主翼を狙うことは止めて敵機に体当たりしても絶対大丈夫だと国防装備庁のお墨付きだから迷うことなく敵部隊に突入して良いぞ」
「分かりました、艦長。そのように指示します」
『大和航空管制からアルファリーダー、並びにブラボーリーダー!』
『アルファリーダーです、どうぞ。ブラボーリーダーです、どうぞ』
『F-35B改に搭載されているSSB装置は、装甲車に体当たりしても決して機体が破壊することがないのでB-17に思い切り突っ込んでも大丈夫だ。了解か、どうぞ』
『アルファリーダー、了解。ブラボーリーダー、了解!』
『了解、両隊の健闘を祈る。以上通信終了』
航空管制から指示を受けた5機編隊2隊合計10機のF-35B改は、リーダー機の指示に従って、SSB装置を作動させながらB-17や戦闘機編隊に音速飛行で突っ込むと、編隊全ての航空機が一条の光の束が煌めくと同時に敵機の機体がバラバラになり、次々に墜落して海の藻屑に消えていった。
アメリア軍の航空編隊側から見れば、一条の光の束が編隊の中を通過する度に編隊内の自軍機が墜落して行くのを見て、何が起きているのか全く理解不能な状態であった。
F-35B改にはSSB装置の他に光学迷彩機能が当然搭載されており、この機能を作動させているためアメリア軍側には通常の飛行では全く見えない状態であり、音速で敵に突っ込んだ時点で空間が歪み光の屈折率が変わり一条の光の束のように見えたのであった。
「す、凄すぎる。トマホークやB-17が紙吹雪みたく次々とバラバラになっていく」
「副長!だから最初に言っただろう。帝国の常識を捨てろと」
「コレだと、戦艦も撃沈出来るのではないですか?」
「それは流石に無理らしいぞ、副長。
このSSB機能は元々ジュラルミン製の飛行機相手に出来るワザで、戦闘艦船を体当たりで突き破るには機体質量、強度、速度が必要であり、さらに機体の強度を上げるために鋼鉄系の鋼板を使用すると機体重量が重くなり、F-35B改本来の運動性能が損なわれるため、これ以上の改造で重量増加は出来ないとの国防装備庁の話だ」
大和から出撃したF-35B改 10機は、敵の戦闘機 P-40 トマホーク 1,000機、爆撃機 B-17 500機を全機撃墜し、何の損傷もなく無事帰投したことで、僚機から降り立ったパイロット達はフライト・メンテナンスクルーからヒーロー扱いであった。




