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日本国転生  作者: 北乃大空
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68話 アメリア反攻準備


1942年3月上旬


ホワイトハウス大統領執務室にて



「海軍長官、ハワイ奪還作戦はどうなっているのだ?」


「大統領、それどころではなくなりました。国内の石油を産出する油田が全て枯渇しました。残りは石油製品に精製した備蓄量のみです」


「な!何?それは一体どういうことだ?我がアメリアは石油産出国であったはずだが」


「豊富にあると思われた石油埋蔵量が、先日の資源探査の結果では無尽蔵に石油があったはずの石油層は全て地下水であったのです。

 このまま我が国民が石油を大量消費すればおそらく3カ月後に石油が枯渇すると思われます」


「むむむ、国民にひもじい思いをさせよというのか?」


「背に腹はかえられませんし、我が国の国民が世界中で一番豊かな生活レベルを保っています。それを戦時中という理由で少し生活レベルを下げさせることで、当面軍部が使用する石油量を確保するのです」


「分かった、それについては国民統制令を発しよう。

 問題はその後だ。一体何処から石油を手に入れるのか?」


「身近なところではメキシカでしょう。またアメリアの盟友である英国からも仕入れることが出来るかと思います」


「うむ、早急に石油確保に向けて外交努力を続けてくれ」


「分かりました」




1942年3月下旬



「大統領、メキシカと英国の外交交渉の結果、英国はドイツと講和し休戦協定を結んだようです。

 なお、英国は講和条件として自国の石油をドイツ本国及び占領地に供給する代わりに、ドイツから鉄鋼、各種金属製品を輸入するらしいです。

 オマケに英国はドイツの占領地に石油を供給しており、我がアメリアに売却する分の余裕は無いとの回答でした」


「うぬぬ、英国の三枚舌め。寄りによってドイツと手を組むとはな。

 それよりメキシカの件はどうなったのだ?」


「メキシカは石油売買には前向きでしたが、あまりに法外な値段を提示されてしまいました」


「戦時中だから、多少高いことは目は瞑るが、一体どの位の値段なのだ?」


「アメリア国内で取引されている石油製品価格の約5倍です」


「はぁ~?何だと?何処まであの国はがめついのか」


「国全体の税収が少ない分、石油で儲けざるを得ないらしいです」


「それより、日本はマレー半島とインドネシアを占領したが、そこから石油を得ているのか?」


「我が外交筋の情報では、マレー半島とインドネシア占領前に別の場所で石油を得ていたようです」


「それは何処の場所なのだ?」


「日本の傀儡国家である満州と占領地の樺太であると」


「何?それでは日本は石油を使い放題ではないか」


「そのとおりですね」


「マ、マズイ、まずい、不味い、非常に不味いぞ。

 このままでは、我が国はチェックメイトを掛けられていると同じことだ。

 むう、このまま手をこまねいていても仕方がない。

 その法外な値段でもメキシカから石油を購入するしかないな」


「分かりました。何とか値段を下げられるよう交渉してみます」


「頼むぞ、エドガー」



 ハル国務長官の後任に当たっていたエドガー・ステティニアス国務長官は、大統領の命により再びメキシカ政府との石油提供の交渉に臨むのであった。




1942年4月上旬



「どうかな?エドガー。メキシカから石油は手に入れることが出来たのか?」


「そ、それがまだです。メキシカは先日提示した5倍の価格から、さらにその価格を10倍に吊り上げて購入が不可能になってしまいました」


「10倍とは平時の価格から10倍なのか?」


「いえ、先日の5倍価格に10倍を掛け平時価格の50倍を提示したのです」


「ふへっ!50倍の値段だと?」


「5倍程度ならば多少値が張ったとしても問題無いのですが、50倍では我が国の財政が破綻してしまいます」


「分かった、もう良い国務長官。

 商務長官、国内の石油備蓄量はどの位あるのだ?」


「国民統制令を掛ける前は3カ月しか持ちませんでしたが、統制後は半年後に0になる計算です」


「了解した、商務長官。

 陸軍長官!国内にある爆撃機と戦闘機はどの位製造出来たか?」


「ハイ!B-17は約5,000機を新たに製造、戦闘機は各州から集めて総数は約1万機用意しました」


「戦車はどの位あるのか?」


「M3戦車は2,000両、新開発のM4A1戦車は20,000両製造しました」


「よし、長官。これだけあれば楽勝でメキシカに攻め込むことが出来るぞ」


「しかし、大統領。確かにメキシカに勝てるでしょうが、一つ懸念事項があるのです」


「何だ?その懸念事項は?」


「メキシカ国内に潜入させている陸軍諜報部員の報告では、メキシカ軍に日本軍が肩入れしているとのことです」


「フン!イエロー・モンキーがどれ程のものか」


「大統領、日本を侮ったらコチラが痛い目に遭うかも知れませんよ。

 実際、真珠湾や太平洋艦隊にしろ、全て壊滅状態じゃないですか」


「海軍長官、貴様からそのようなセリフを聞くとはな。

 真珠湾攻撃は日本の奇襲攻撃じゃないか。それに海軍側が真珠湾の防衛体制を軽視していたからあのような結果になったわけだろう。

 オマケに太平洋艦隊は、完全に戦術ミスだと報告を受けているぞ。

 この事実は間違いないと思うが、違うのか?長官!」


「ハイ、確かに大統領にご指摘に相違ありません。

 確かにハワイ真珠湾の防衛体制は甘く見ていました。

 しかし、太平洋艦隊は、、、、、、」


「どうした?海軍長官」


「大統領!不躾ながら真珠湾攻撃と太平洋艦隊の壊滅は、ハッキリ言って兵器差です。あんなジェットエンジンで飛ぶ航空機は見たことがありません」


「海軍長官、貴様は臆病風に吹かれたか?」


「いえ、事実を客観的に述べたまでの話です」


「実に不愉快な話だな。君の顔は今後見たくはないので、処遇は追って沙汰をする。下がって良いぞ!」


「ハッ!失礼します」



「さて、陸軍長官。何時までにメキシカの石油は手に入るか?」


「懸念事項が無ければ、3カ月前後でメキシカ降伏に導けるかと」


「その懸念事項はイエロー・モンキー共の日本軍か?」

「ハイ、そのとおりです。ただ懸念事項は日本軍だけではなく、日本の技術力なのです。以前大統領に日本刀の小刀を見せましたよね」


「あ、ああ。あの魔剣みたいな切れ味の刃物だろう」


「ハイ、そのとおりで現在ドイツはブリタニア(英国)と和平し、ル連壊滅へ全力を注ぐようですがこの和平の裏には一枚日本が噛んでいるようです」


「何!本当か?」


「ハイ。陸軍諜報部の話では日本軍は既にシベリアまで侵攻したとのこと」


「だからどうした?それはル連領土の大半が殆ど人が居ないから容易に占領出来たのだろう」


「確かにそのとおりですが、開戦から半年も経たない内にシベリアまで侵攻して占領出来るのは、長距離移動出来る機動力を所有していると予測され、多分日本は戦車を主体とした機甲師団を所持しているのではないかと推察出来るのです」


「陸軍長官、つまり君は何を言いたいのだ?」


「我々の軍隊も万を超える戦車数を備えたわけですから、ドイツの戦車雷撃戦運用による素早い戦闘、占領を見習い、我が軍に機甲師団を創設して航空機による支援部隊も創設することを提案したいわけです」


「ほおう、機甲師団か。それは名案だな。その機甲師団なり航空機部隊を使用して確実にメキシカに勝利出来るわけだな」


「ハイ、仰せのとおりでございます」


「よし!部隊創設から侵攻まで、どの位の期間を必要とするのか?」


「最低限3カ月の期間は必要かと」


「分かった。メキシカとの開戦日は我がアメリアの独立記念日が終了した次の週の火曜日にするぞ」


「ハッ!直ちに準備に取り掛かります」



「大統領、我が軍は勝てますよね?」


「国務長官、何寝ぼけたことを言っているのだ?

 我がアメリアに『敗北』の二文字は存在しないのだ。

 確かに今のところはハワイ、アラスカを占領され、パナマ運河を破壊されたが、最終的に我が国が勝利すれば全てOKなのだ」


「ハイ、了解しました」



 ルーズベルトと陸軍長官の2人は、来たるメキシカとの戦争に向けて軍備を整えると共に、メキシカとの戦争でアメリアが勝利して豊富な石油を手に入れられることを夢見ながら、ほくそ笑んでいた。


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