64話 ドイツとの外交交渉 その5
~C-2改が駐機されている格納庫にて~
総統一行は、ベルリン空港のエプロン部に駐機してある3機のC-2改、F-2改の護衛機2機、KC-767改の空中給油機1機を見て、その大きさと流線型の滑らかな機体、それにプロペラの無いジェットエンジンに驚嘆していた。
「コチラの飛行機は本当に大きいな。それに比べると青い機体の戦闘機が実に小さく見えるが、我が国のプロペラ戦闘機より大きいのだな」
「オマケに全機プロペラが無いのは凄いです!総統」
「総統、コチラにどうぞ」
三木はC-2改の1機は機体の前部が乗客用、後部を貨物仕様として、貨物室に隠密ロイド10体を自立する形で貨物スペースに隠蔽搭載していた。
次に1機については後に述べるがレストランバー仕様とし、もう1機に16式改機動戦闘車(簡易型)1両、他に迫撃砲、無反動砲、自動小銃等を搭載して、さながら移動ミリタリーショップの様相を醸し出していた。
「コレは凄い!装輪装甲車に戦車の砲塔が装備されているとは」
総統一行に同伴していた技術将校と思われる人物が、早速機動戦闘車に乗り込み、砲塔の照準装置関係を調べ始めていた。
「総統、この車両には主砲の照準装置関係の部品が旧型です。
車両が新型なのに照準装置が旧型というのは納得出来ません」
「(コイツ、もう気付いたのかよ。だがアレに気付くとは流石にドイツ人で技術大国と呼ばれるだけはあるな。)」
「三木殿、コレはどういうことですかな?」
「ハイ、この機動戦闘車は市街地、ハイウェイ等の舗装路等の道路環境が良い場所で運用できる装甲車で、装輪式なので速度が出せるので高速移動が可能な他、中戦車以上の火力を持つ砲塔を備えています。
この砲塔には本来はFCSと呼ばれている射撃統制システムが装備されており、走行中でも主砲射撃が可能でほぼ百発百中の命中率を誇ります。
今回、この車両を持参しましたが日本政府側がまだドイツを信頼出来る国家であるかを見極めることが出来ず、技術漏洩を防止するために新型照準装置を外してあえて旧型照準装置を取付したのです。
でも、流石にドイツの技術者です。一目で矛盾点を見抜かれてしまいました」
「それでは三木殿。我がドイツと日本が軍事協定を締結することが出来るならば、その新型照準装置は手に入るのか?」
「ハイ、新型照準装置はウチの秘書官が技術指導官も兼ねていて、今すぐにでも取付することが出来ますし、この装輪装甲車を寄贈致しますよ。
また、軍事協定締結後に日本国内で使用していた74式戦車を100両単位で提供する用意があります。但し、それには約束を守って頂ければの話ですが」
「約束とは、ル連をドイツの手で叩き潰すことか?」
「それより先に英国との講和ですね。
英国と手を結ぶことで全力を持ってル連と対峙出来ると思いますし、日本側から提供した戦車が役立つと思いますので」
「うむ、分かった。明日、三木殿の宿泊先になっているベルビュー宮殿へ私とリヒターが行き、その場で軍事協定を締結したいと思う」
「え?総統自ら私の宿泊先に赴くのですか?」
「そうだ。その代わりに三木殿は美味い日本料理をご馳走してくれないか?
英国滞在の外交官等から大変美味な昼食があると小耳に挟んだのよ」
「分かりました。その昼食については明日御用意致します。
それと、私共の飛行機の内で1機が料理を出せるようにレストランバー仕様に改造しており、既に中で料理人が調理を始めていますので、ディナーとしてのおもてなしが出来ると思います。
隣に駐機してある飛行機がレストランバーになっておりますので、そちらに御足労願います」
隣に駐機してあるC-2改は、キッチン付きレストランバー仕様に改装されていた。
この改装は、ユニット仕様でテレビ局のスタジオみたいに内装部品を短時間で組立撤収が出来る優れモノで、内装の備品の中には厨房と殆どの食品を保管する冷凍冷蔵庫と、調理場で使用する水や温水、浄水装置を装備し調理する際に出る排水を下水処理する装置も備えていた。
この飛行機の後部ハッチがレストラン出入口の代わりとなり、飛行機前部に厨房があり、中には30名前後が座ることが出来るテーブル席を備え、さらにバーカウンターまで設置されていた。
総統一行は軍幹部や技術者等を含めて20名前後であったが、席には充分余裕があった。
「コレはまた驚かせられるの。とても飛行機の中とは思えない造りじゃな」
三木は、英国の時と同様にグルメ接待を実施して、懐石料理のフルコースと焼肉三昧に様々な酒類を提供していた。
その料理接待の甲斐があり、総統一行は実に満足した様子で帰途についた。
「後藤さん、明日の昼食が勝負です」
「任せて下さい、三木さん。今回はこの機内に水槽を持参してタップリと鰻を泳がせていますから」
次の日のベルビュー宮殿の厨房にて
そこの厨房には一通りの料理が出来る設備は揃っていたものの、肝心の炭火蒲焼き器と蒸しセイロが無かったため、C-2改の機内厨房から蘭子の手を借りて、鰻入りの水槽と料理器具一式ごと宮殿の厨房に瞬間転移させていた。
「やっと私の出番が出来たというところね。
玲実は機械を設置したかと思うと、いつもの病気でベルリン市内見物と博物館巡りに行ったのね。ま、彼女は食いしん坊だから昼までには戻って来るから心配無いけど」
「いつも助かります、蘭子さん」
「どう致しまして。それより今日のお昼メニューは何?」
「英国と同様の鰻三昧のフルコースランチで」
その日の午前10時、宮殿に到着した総統一行は三木との軍事協定の締結を行い、その後は昼食会の運びとなった。
「な、何という旨さだ。この世でこのような美味い魚があったのか?」
「ハイ、ドイツ国内でサンドウィッチに使用するウナギと同じ魚です」
「しかし、料理方法でこんなに美味くなるモノなのか?
昨日の懐石料理に出た焼魚や煮魚、それに刺身も美味かったがコレは次元の違う旨さだな」
「ヨーロッパでは如何に肉を美味しく食すかを追求した食文化が存在するように、日本では四方を海に囲まれ豊富な魚を如何に美味しく食すことを追求した食文化が発達したのです。
魚を美味しく食すことに関しては、世界中の国々を探しても我が国には及ばないと思います」
「成る程、確かに素晴らしく実に美味い料理だ」
ドイツ人は魚が嫌いな者が多いが、俗にいう『食わず嫌い』なだけであり、この時の鰻三昧のフルコースランチは全員全て完食する程、後藤シェフの料理に感動していたことは確かであった。
昨日とその日の食事会は見事に成功し、三木達はドイツとの軍事協定という成果を手土産として日本に帰国した。




