63話 ドイツとの外交交渉 その4
~ベルリン空港に向かう途中の総統が乗り込んでいる車内にて~
「どうした?アリス。随分嬉しそうじゃないか」
「ハイ、三木さんと一緒に行動していたカトリーナ秘書官が私の学生時代の友人だということが判明し、久しぶりの再会だったのです」
「ふむ、それは良かったな」
「それと、その友人のカトリーナ秘書官が言うには日本に優れた不妊治療の医療技術があり、私のような者でも妊娠出来ると教えてくれたのです」
「そうか、それは我々の将来のためにもますます日本と交流を深めなくてはならないな」
「ハイ、将来の赤ちゃんのためにも」
~一方、三木達が乗った車内では~
「ガヴリエル、先程アリスさんと念話していたよな」
「ええ、ミカエルへの恨みはもう無いとの話でした」
「フーン、それとアリスさんの不妊治療の話で盛り上がったのかな?」
「え?どうしてそれを。まさか三木さんは私の心を読めるのですか?」
「まさか、俺にはガヴリエルの能力は無いぞ。
だが、図星だったようだな。実は正史地球ではヒトラーとエバの間には子供が出来なかったんだ。
それ故にあのような狂気に走ってしまったのかと思うのだが、これが子供が存在していたらまた違った歴史になったのかも知れないな。
だから、この世界ではエバ役のアリスことルシファーが天使達の受胎プログラムを実施すれば、ヒルラー総統の子供を妊娠して出産できるのではないかと予想したんだ」
「三木さん、超能力者ではないですよね?」
「ガヴ、洞察力に優れた男だと解釈して欲しいな」
「しかし、三木さんの能力が私が人間の心を読むこととほぼ同じなのに驚いていますが」
「ガヴリエルの能力はその人物の深層意識に働き掛けて記憶を操作するわけだが、その記憶領域に辿り着くまでに相手の心や意思を読み取るわけだろう。
俺の場合は、あくまで相手が過去話した言葉や態度等から判断し、次の言動や思考を予測するんだ。
また、相手の視線や顔の表情から色々な情報を読み取ることが出来るわけなんだ」
「つまり、私達の感情や思考を読み取って予測しているのですか?」
「うん、あくまで表層の感情思考だけだが、人間より分かり易いのは天使達といえるな」
「え?私達がですか?」
「そう、ある種の感情の塊と言っても過言ではない。
一番分かり易いのは玲実で、一番分かり難いのがガヴリエル。
先のルシファーは実に分かり易かったね。
次に女神ガイア様は人間より分かり易い。
他の神々にはまだ会っていないから何とも言えないが、全く読めないのはロイド連中で流石にロボット故に感情が無いからだな。
天使のようなAIの自己意思を持っているロイドも存在するが、意志と疑似感情が上手く連携していないから心が存在せず、読みようがないのは当然ともいえるが」
「凄いですね、三木さん」
「俺なんか全然凄くなくて、序ノ口みたいなモノだ。
中破総理なんか、俺より数倍洞察力と読心術に長けているぞ」
「あ、やはりそういうことだったのですか。私が睡眠時以外の中破総理へ意識トレースを実施したけど、心を読むのが難しかった理由はそういうわけだったのですね」
「人によっては思考をブロック出来る人がいるけど、中破総理は無心になる術を身に付けているんだ」
「それで中破総理が起きている時に心に入り込んでも、白い空間しか見えないのは無心だったのですか」
「以前総理がよく言っていたよ。居眠り中の夢に何度もガヴリエルが現れたと」
「その話は、起きている時に心の中を読めなかったため、総理が居眠りしている時がチャンスだったの。
それより、三木さんが天使の感情を読みやすいのは何故でしょうか?」
「以前総理に聞いたことだが、七つの大罪で『傲慢、嫉妬、強欲』の3つの欲望が天使の感情から抜かれ、天使達は人間の三大欲求である『睡眠欲、食欲、色欲』と『怒り』に忠実な存在であると」
「ハイ、そのとおりです」
「コレも以前総理に聞いたのだが、天使達は以前アンドロイド体で、先年ガイア様にバイオロイド体を与えられ、その時に感情を導入されて以来は感情の赴くままに生きていると」
「赴くままというのは少し違いますが、約1万年前後からガイア様の命に従いて様々な任務をこなしていましたが、感情を与えられてから15年位なのでつい感情を制御出来ずに顔と言動に出てしまうのでしょう」
「なるほど、天使達は人生の大先輩だが、こと感情に関しては俺の方が先輩と言えるのか」
「ハイ、そうですね。三木先輩!」
「(それより、ガヴリエル。先程から我々の会話が運転手に聞こえているはずだが、今更ながら大丈夫なのか?)」
「(ハイ、大丈夫です。私達が車に乗り込む時に私が彼の脳内をスキャンした結果、ドイツ語しか喋れず、日本語は全く理解不能みたいです。)」
「(私も車をスキャンしたけど盗聴マイク等の類いは一切無かったわ。)」
「(了解、ガブ、玲実。案外ドイツは信頼出来る国なのかも知れないな。)」
三木達を乗せたドイツ政府が用意した車は、先を走っている総統の車を追い掛けるように空港へ向かっていた。




