57話 対ル連戦 その2
日本時間 12月8日 5:00
満州国内各空軍基地から、A-10改200機で構成された陸軍攻撃支援の航空部隊が出撃した。
A-10改は、日韓戦争以前に当時の在日米軍が韓国から引き揚げする際に、日本国防軍が買い取りした攻撃機で当時のモデルはA-10Cであり、そのA-10Cのエンジンを換装してスピードアップを図り、最高速度はM0.9までアップしていた。
無論、A-10の特長である低速飛行はそのまま生かして、かつ地上掃討作戦以外の戦闘・移動時には高速移動が出来るように、主翼のテーパー翼形状から若干後退角を付けた主翼に作り替えていた。
さらに改仕様としての変更点は、ステルス素材及び光学迷彩機能と電磁バリア機能を搭載したことで、機体装甲を薄くして軽量化を図ることで最高速度がアップした他、航続距離が約1.5倍伸びた。
最大の変更点は、30mmガトリング砲はそのままだが、弾倉位置を後方に下げて、前輪が右側にオフセットされていたのを中心にした。
前輪を中心にした理由は、空母でA-10改を他艦載機と同様にカタパルト運用を可能にするためだった。
そして、同ガトリング砲のもう一つの変更点は、弾倉容量のアップだった。
通常弾数1,174発で最大弾数1,350発であったが、コレを4倍の5,400発に増やした結果、18秒前後しか連射出来なかったモノが、1分以上連射が出来ることになり、機関砲の活用でミサイルや爆弾等の節約に繋がっていた。
このA-10改を日本国内で500機製造して、そのうちの200機を満州国内の空軍基地に配備していた。
本来、陸軍進攻に伴う先行爆撃ならばB-1s爆撃機が最適であるが、当初予想されていた敵部隊は国境線付近に塹壕を掘り装甲車両と歩兵が国境線沿いに線上に展開していると思われていた。
そのため、B-1sの爆撃はピンポイント爆撃も可能だが、広範囲の敵を爆撃するのが得意技であるため、小規模の部隊展開には向かないと判断されA-10改の支援爆撃に変更したのである。
酒井将軍は沿海州方面攻略部隊の司令官として部隊が待機していた満州からに沿海州に向かい、石原将軍はノモンハン方面攻略の司令官を務め、その補佐として国防陸軍第7師団長が作戦参謀に就いていた。
石原は酒井将軍と相談し、1個2万人で構成されている機甲師団が5個ある内で、2つを沿海州方面に回して残り3つをモンゴル、ノモンハン攻略に活用しようと師団を分けていた。
その機甲師団に付随する形で機械化歩兵師団がいたが、コレも1個師団2万人で構成されていた。
酒井が指揮する軍団は合計20万人で、機甲師団4個と機械化歩兵師団6個となり、石原が指揮する軍団は30万人で、機甲師団6個と機械化歩兵師団9個の総計50万人の大所帯の軍団であった。
満州国内に配備されていたA-10改は200機で、各基地に40機ずつ配備される形で、今回は第1波攻撃隊として半数の20機ずつ各機甲師団の航空支援とに当たっていた。
「石原閣下、間もなくノモンハン国境20km手前の地点に到着します」
「ん?思ったより早いな、もうそんなところまで来たか。
全軍一旦停止させよ」
「了解、全軍停止!」
石原は帝国軍が先年敗退したノモンハンをこの目で見たかったため、あえて前線を指揮する指揮通信車に乗り込んでいたのだった。
なお、この指揮通信車は82式指揮通信車ではなく16式機動戦闘車を元に新開発の30式装輪装甲車のシャーシを利用した35式指揮通信車であった。
この指揮通信車の特長は、全高を3mに高くすることで車室内部を立ったまま歩けるようにしたことであった。
車室に余裕を持たせて部隊を指揮する幹部のストレスを軽減する他、車室内部に設置された映像モニターや大型スクリーンで前線の様子を逐次確認することが出来、かつ通信関係を充実させたことで部隊指揮がスムーズに行えるようになった。
また、当然ながらステルス素材及び光学迷彩機能と電磁バリア機能を車両に搭載済であり、敵攻撃や流れ弾等による不慮の攻撃に対処し、指揮官等の安全確保に寄与していた。
「佐藤師団長、この車には『もにた』なるモノがあると聞いたのだが?」
「ハイ、石原閣下。空軍が無人偵察機を使用して前線の様子を撮影していますので、リアルタイムで映像を受信して確認することが出来ます」
「それは凄い技術だな。それと宇宙から地上を見ることが出来ると聞いたが?」
「ハイ、監視衛星の画像ですね。オイ、アレを出してくれ」
「了解、師団長。1カ月前と昨日のノモンハン前線の画像を前面スクリーンに出します」
通信係は車室前部に設置されている大型スクリーンに衛星画像を出した。
「閣下、右が1カ月前で左が昨日の衛星画像です」
「うん?コレは明らかに違うな。師団長、敵部隊が集結しているよな」
「確かにそうですね。通信係、敵部隊規模を数値化してくれ」
「そんなことが簡単に出来るのか?」
「ハイ、画像内の敵部隊を画像処理して、コンピューターが数値化します」
「こん何とかというのは?」
「電子計算機です」
「それはタ○ガー手回し計算機を電算化したものか?只の数勘定ならば、算盤の方が早いだろう?何時間も掛かっていたら使い物にならないぞ」
「いえ、1秒前後で終わります。通信係、結果は?」
「戦車450両、装甲車両400両、砲門550門、兵士数78,000人になります」
「早っ!そんなことまで瞬時に分かるのか?それより随分敵の数が多いな」
「そうですね、閣下。本日の支援爆撃部隊を変更しますか?」
「それらの運用は師団長に任せるぞ」
「了解しました。副長、空軍にノモンハン国境方面のA-10改による支援爆撃を一時中止、A-10改はそのまま上空待機して、代わりにB-1s 5機による支援爆撃を要請する」
「了解、復唱します。空軍に要請、、、、」
ノモンハン国境方面に向かっていたA-10改は上空待機し、B-1s 5機が直ちに出撃した。
B-1s 5機が国境付近に姿を現したのは、変更要請を連絡してから約10分後であった。
A-10改が全機上空に待機し終わる頃、B-1sが現場に到着するというタイミングであった。
『速っ、もう着いたのか?あまりに速過ぎるよな』
『流石、M2.2ですね。羨ましい位の速度ですね、隊長』
『そうボヤくな、ウチのA-10も改仕様でエンジン換装されてM0.9までスピードアップし、以前の倍の速度になったのだから』
『速くなった分、エンジン以外に主翼の形も若干変更しましたけどね』
『だが、改仕様で空力抵抗の見直して低速度飛行の安定性向上と燃費が格段に向上したがな』
『それより、今回の爆撃はB-1s 5機で大丈夫なんですか?』
『ああ、あのスリムな機体でパイロン無しの機体収納分だけで約34トンの爆弾とミサイルを搭載出来て、B-52の倍以上でA-10の5倍弱の爆弾量を搭載することが出来、或る意味ではオーバーキルな爆撃機と言えるな』
『それじゃパイロンを装着したらどの位搭載出来るのですか?』
『全部で約60トン搭載出来るはずだ』
『うわ、化け物みたいな爆撃機ですね』
『そのとおりだ。まずは、お手並み拝見というところだな』
A-10改航空支援部隊の隊長と隊員は、B-1sのチートな兵器性能に唯々驚くしか無かった。
B-1s 5機は1機ずつ爆弾を換えて搭載してきた。
まず越境して来ている敵部隊の装甲車両には、対装甲車両用クラスター爆弾を敵上空に30発落とした。
そのクラスター爆弾は1発に10本の筒が入り、その筒に4個の子爆弾を搭載し、その4個が分散落下して越境してきた敵部隊の装甲車両を狙い定めるように次々と1発ずつ当たっていった。
次に対人用クラスター爆弾として、1発に子爆弾を202発内包されたモノを30発敵装甲車両上空に落とした。
仕上げに無誘導爆弾を1機当たり84発自由落下させて、絨毯爆撃みたいな形で敵の低空または地表で爆弾が炸裂した。
B-1sは爆弾投下の際も光学迷彩機能を効かしたまま行うため、敵兵士からは突然目の前で爆発する訳で、空爆されたとは思えずに何処からの地上からの砲撃を受けたものと勘違いしていた。
B-1s 5機が全ての爆弾を投下し終わった頃、ノモンハン国境付近には敵の部隊兵士の死体が数多く横たわる形で散乱し、生きて動いているモノは無いに等しく5機は爆撃任務を終了すると空軍基地に帰投した。
なお、このB-1sの爆撃データは今後実施予定のアメリア国内空爆に大いに役立っていた。
「石原閣下、この後はどうしますか?」
「うん?あ、ああ。師団長に当面の間、指揮を任す」
石原は、B-1sの爆撃の威力に改めて驚愕し、開いた口がふさがらない状態であり、無人機の映像を見ながら師団長に語り掛けていた。
「敵には爆撃機の姿は見えていないんだよな」
「ハイ、我々が見ている映像は無人機カメラに特殊フィルターを通して映したモノですが、敵さんは突然目の前が爆発するわけですから、空爆とは思わずに何処かの地上砲撃だと思うでしょう」
「だけど、この爆撃跡は火山が噴火したみたいに焼けただれているな。ここで生きていたら、まず奇跡だろう」
「残りはここから最短で西方20kmの地点のトーチカです。上空待機していたA-10改に各都市にあるトーチカ爆撃を既に命じていますので、私達はそのまま前進しましょう」
「ああ、そうしてくれ。だけど、この車両というか部隊全体の前進速度が速いよな」
「そうですね。機甲師団の他、機械化歩兵師団も兵士全てを車両に搭乗していますから」
「だけど、ノモンハンをたった一日で制圧出来るとは驚異だな。
我々が昨年4カ月以上も掛けて何一つ得られなかったのに、アッサリ国境線沿いのル連兵を簡単に始末出来るとは、新兵器とは如何に恐ろしいものかの」
「そうですね、コレが100年の技術差というところですね。それより酒井将軍の方は、ウラジオストクがかなり都市化が進んでおり、下手に街並みを破壊するのは白系ロシア人の反発を買うと思いますが、関東軍よりも先に国防軍海兵隊の強襲揚陸部隊が上陸占領を進めている頃だと思います。
それと、情報省の諜報部隊が白系ロシア人を味方にすることに成功しているみたいですので、沿海州全土の占領統治は時間の問題ですね」
「さて、我々はモンゴル全土を早期に占領統治しなければならないな」
「ハイ、そのとおりです」
「佐藤師団長、このままモンゴル制圧まで何日位掛かるのか?」
「今現在、情報省諜報特殊部隊がモンゴルの赤軍派が牛耳っている中央政府の反対派と接触中で、彼等を扇動してサポートしながら内部分裂を図っています。
彼等が武装蜂起して赤軍派を打倒しようと動いた時点で、我々は首都制圧に動きます。
その後、首都完全占領まで3日、モンゴル全土を一時的に占領するまで10日、完全占領で1カ月というところでしょうか」
「そんなに早いのか?」
「赤軍派の人民共和国政府を打倒し、元の民主共和制政府を復活させることが出来れば、駐留軍は小規模で済みますし、後は日本寄りの高官を据えて日本連邦に加入すれば連邦として統治は完了ですね」
「以前、帝国陸軍にも中野学校という情報機関が存在したが、新日本のモノはそれ以上で相当優秀みたいだな」
石原が率いる機甲軍団は、ノモンハンからモンゴル国内にいる赤軍を一掃して、モンゴル全土を占領統治まで1カ月以内に終了していた。




