51話 真珠湾攻撃
歴史上有名な奇襲ですが、今回は開戦1カ月前にキッチリ宣戦布告していますのでサブタイトルを『奇襲』ではなく『攻撃』としました。
日本時間 1941年12月3日 0:00
ハワイオアフ島真珠湾攻撃に参加する艦隊の内訳は、空母3隻、イージス艦6隻、巡洋潜水艦3隻、補給艦2隻、空母艦載機(F-18改150機、F-2改60機)合計210機、対潜ヘリ25機が一つの空母機動艦隊を構成していた。
「残り1時間で出航だな」
「ああ、武者震いがするぜ」
「うん、それはこの場所が寒いせいだろう」
「それもそうだ。ワハハハ!」
この真珠湾攻撃部隊空母機動艦隊の待機場所は、択捉島単冠湾で、正史地球上の史実通りの場所といえた。
だが、単冠湾に集合した艦船全てには核融合炉(NF炉以下略)を搭載しており、艦船全てにステルス素材及び光学迷彩機能を搭載し、さらにNF炉で生成される豊富な電力を利用した電磁バリア機能を搭載することで、船体が受ける水流抵抗が半減し、巡航及び最高速度が倍増し、一番遅い補給艦ですら巡航速度約35ノット(約65km/h)をキープ出来る程であった。
これが史実通りであれば、11月26日に艦隊が既に出発済であるはずだが、先程の電磁バリア機能により各艦隊の船足が向上して、行動日程が大幅に短縮して、出発日も史実より遅くなり12月3日にずれ込んでいた。
「しかし、この船は船足が速いな」
「艦長。巡航速度で35ノットだと、車の法定速度を軽く超えていますね」
「そうか、副長。早く目的地に到着することは、それだけで充分余裕が出来るというものだ」
「その通りですね。早く到着する分だけ航海日数が短くなるため、敵との遭遇も少なくて済みますし、何よりも乗組員の負担が大幅に少なくなります」
「そうだな、何でも速いことは良いことだ」
ある艦船の艦長と副長は、艦船の性能向上について改めて驚くとともに好感を抱いていた。
日本時間 12月8日 1:00 ハワイ時間 12月7日 6:00
オアフ島北東沖500kmの座標に空母機動艦隊が日本時間12月7日0:00の開戦日前日に到着、洋上停泊していた。
そして開戦日当日までの間、作戦会議と乗組員が交代で休憩を取っていた。
開戦日の作戦開始時刻になり、空母トカチからF-18改75機全機が発艦し、その内の10機がミッドウェー島攻撃へ、残り65機がオアフ島攻撃の第1波として向かっていた。
そして、空母トカチの横に停泊していた空母キタミは第2波攻撃のため待機していた。
一方、監視衛星で真珠湾外にいた敵空母エンタープライズ、レキシントンの2隻を中心にした太平洋艦隊の動きを事前に掴んでおり、この太平洋艦隊を攻撃するためにF-2改60機を搭載していた空母信濃は、イージス艦2隻、NF炉潜水艦1隻を同行させて、敵空母がいる海域に向かった。
今回の真珠湾攻撃に向かった空母機動艦隊よりも、半日ほど早く日本から出発した部隊があった。
その部隊は、強襲揚陸部隊で艦船を動かしている乗組員は、海軍所属であるが揚陸艦に乗船している部隊は海兵隊員であった。
日本時間 12月3日 12:00
強襲揚陸部隊の部隊編成は、5万トン級強襲揚陸艦1隻、3万トン級軽空母2隻、イージス艦2隻、巡航潜水艦2隻、補給艦1隻で積載兵器は航空部隊がF-35B 10機、V-22改10機、CH-53改10機、AH-1改10機、対潜ヘリ10機であった。
上陸部隊は、10式改戦車10両、19式改装輪自走155mm榴弾砲10両、AAV7改20両、機動戦闘車20両、LAV改20両、高機動車改20両、中型トラック20両、他LCAC型エアクッション艇4隻を搭載していた。
部隊人員は国防軍海兵隊で、総数5,000人で各艦に分乗してハワイの上陸を目指していた。
だが、オアフ島真珠湾を目指していたのは、空母機動艦隊や強襲上陸部隊だけでは無かった。
千島列島幌莚島柏原空軍基地に待機していたB-1s 10機が、ハワイ爆撃部隊として日本時間12月7日 22:00に空軍基地から離陸し、一路オアフ島を目指していた。
オアフ島上空に一番乗りに到着したのは、B-1s 10機の爆撃部隊であった。
B-1sは超音速飛行により、柏原空軍基地から約2時間半でオアフ島上空に到着し、爆撃のため低速低空飛行を実施するため可変主翼を前進状態にした。
「さて、そろそろ目標座標か」
機長が独り言のように呟いた言葉を、副長は爆撃手にスタンバイするように伝えていた。
爆撃手は副長からのスタンバイの指示を聞きながら、出発前の基地内で実施したブルーフィングを思い出していた。
『我々の今回の目的は、空母機動艦隊に先行して支援爆撃を行うことである。
爆撃目標は、敵レーダー施設、無線施設、陸軍航空隊基地、海兵隊基地、陸軍基地であり、市街地への無差別攻撃は絶対行わないこと。
また、各攻撃目標へはピンポイント爆撃に徹すること。
なお、B-1sはステルス光学迷彩機能、電磁バリア機能を搭載しているので、敵に発見されることは皆無であり、バリア機能があるため敵の流れ弾等の攻撃を受けても全く問題は無いと思うが、同士討ちを避ける為に偏光フィルターを必ず活用すること。
攻撃開始時間は日本時間12月8日 0:30で、現地時間は7日 5:30である。
作戦時間は30分間、それ以上だと空母艦載機の邪魔をすることになる。
それでは各機の健闘を祈る。以上だ。』
「爆撃手、開始時刻だ!爆撃開始」
「了解、第1目標ロックオン。爆弾投下!」
今回、B-1sが搭載した爆弾はGPS誘導爆弾で、1機当たり144個搭載していた。
なお、転移事象当初は航法衛星は『みちびき』しか無かったが、日本製GPS衛星を1カ月3個ペースで打ち上げし、転移1年後には地球全体をカバー出来る24個体制を確保して開戦前には36個のGPS衛星が宇宙上に存在していた。
このGPS衛星運用システムの完成により、正史地球で使用していたGPS機器はPW地球上でも全て使用可能となっていた。
B-1sの爆撃は凄まじく、海軍関係以外の軍事施設を次々とピンポイントで爆撃し、ほぼ原型をとどめない程の威力であった。
なおB-1sの爆撃は、敵側にすれば見えない恐怖との戦いといえた。
つまり、レーダーに映らず人間の眼で確認することも出来ず、ただキーンという高い金属音がしたかと思うと、突然目の前に爆弾が現れて軍事施設を破壊するわけで、レーダーに映らず眼に見えないモノに対し対空兵器を闇雲に使用することも躊躇せざるを得ず、恐怖以外の何者でも無かった。
この真珠湾攻撃を全てB-1s爆撃機に任せてしまうことも検討されたが、戦争はあくまで人間同士の戦いであり、姿が全く見えないB-1sからの爆撃は神か悪魔の所業、または超常現象か天災みたいなモノと解釈する者がいることも否めなかった。
そこで、海軍施設がメインである真珠湾ヒッカム海軍基地及びその周辺施設の爆撃は、日の丸入りのF-18改が光学迷彩機能をオフして、海軍施設や艦船への爆撃をあえて見せるようにし、日本軍の圧倒的な軍事力を敵兵士に見せ付けることで、敵に挫折感を感じさせる狙いがあった。
ハワイ時間 12月7日 6:00
B-1sの支援爆撃は約30分間にわたり、アメリカ軍の陸海空海兵隊基地の各施設、兵器類等はほぼ全滅状態であった。
次にB-1sと入れ替わるように第1波攻撃隊のF-18改がホノルル上空に現れ始めた。
F-18改は真珠湾内にいる戦艦、巡洋艦、駆逐艦等の全ての戦闘艦船を目標にし、1回の攻撃でその半数以上を撃沈していた。
次に第2波攻撃隊のF-18改 75機全機が空母キタミから発艦した。
第2波の攻撃目標は、輸送艦と民間船等の非武装艦船を除く戦闘艦船で、第1波の攻撃で撃沈しなかった残り半数近くの艦船を撃沈させ、さらに対空兵器等の排除であった。
結果は、アメリカ海軍の戦闘艦船全てが撃沈し、輸送艦と民間船以外は動く艦船は一つも無かった。
また、ミッドウェー島攻撃に行っていたF-18改の別働隊10機も、敵基地施設、兵器類等を全て破壊し、全機損傷無く無事帰還していた。
今後の物語展開は戦闘が主となります。




