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日本国転生  作者: 北乃大空
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50話 宣戦布告後の諸外国の対応


アメリア側の対応



 ホワイトハウス内の大統領執務室では、先日欧米諸国等に日本国が発信した宣戦布告文書を、フレデリック・ルーズベルト大統領がスチュアート陸軍長官と顔を付き合わせて読んでいた。


「あの馬鹿がやらかした行為を、日本側の宣戦布告に使われるとはな」


「日本側はあの襲撃事件を記録していたようで、写真と映画フィルムを世界中のマスコミに配布しているようです」


「それは頭が痛いな。それが本当なら一方的に我がアメリアが悪者だと世界中に宣伝していることと同じだぞ」


「そうですね、この宣戦布告の内容を読むと日本が植民地解放の救世主みたいになってしまいますね」


「うむむ、困ったモノだな」


「しかし、コレは読めば読むほどに我が国に対する侮辱と挑戦としか思えない内容だぞ」


「だが、日本側はかなり歴史の真実を学んでいますね。アメリア建国は簒奪と略奪、それに先住民虐殺の歴史で成立しましたから」


「貴様は売国奴か!日本の言うことに屈して国土を売り渡す気か?」


「いえ、私はあくまで客観的に事実を申し上げたまでのこと。大統領、そんなに興奮したら身体に差し障りますよ」


「ハァ、ハァ、お前、随分冷静だな。愛国者ならば、こんな文書を読めば大概の国々の指導者達は怒り狂うぞ」


「まあ、私の現在の仕事は陸軍の猛者連中を如何に上手にコントロールするのが本業ですから、この位の文書でいちいち腹を立てて冷静さを失っては、海千山千の相手国と戦争なんか出来ませんので」


「それより、我が国の他にル連の共産主義を殲滅するといっているな」


「そうですね、日本はコミンテルンを思い切り嫌っているようですから」


「それは助かるな。それじゃ日本にル連叩きで活躍してもらわねば」


「その前に我々に突き付けた日本の矛先が問題です」


「ふむ、それでは長官は日本が何処に攻めて来ると思うか?」


「そうですね。石油が枯渇してジリ貧状態のはずですから、多分インドネシアの石油を目指して南進するかと」


「やはり陸軍長官はそう予想するか」



「コン、コン!」


「何だ?入れ!」


「大統領、報告します。日本の記者会見で我がアメリアの記者達が日本政府が配布した写真とフィルムを入手致しました」


「おお、そうか。早速拝見しよう」



 秘書官に映写機を準備させると共に、各閣僚達に映像を見せるため緊急招集するように指示した。



 指示から10分後に映写を開始した。


「ウォ!いきなり建物が爆発するのか」


「ハル前長官が事前に建物内に爆弾を仕掛けてみたいです」


「しかし、この爆発をどうやって脱出したのか?」


「日本側の秘書に忍者の末裔がいるらしく、脱出のプロらしいです」


「そうか、忍者か。伝説上の者と思っていたが日本に実在するのか」


「む、コレは酷いな。我がアメリア軍が一方的に外交団を襲っているのか?

 しかも、ハル長官が殺害指示する声までしっかり入っているじゃないか。

 だけど、何故ピストルや小銃の弾丸が出ないのだろうか?」


「コレも日本側の忍者秘書の仕業のようで、危機を予知できるらしく全兵士の弾倉を細工したとの話が伝わっています」


「むむむ、この映像が世界中に流れてしまったわけだな。

 皆の感想とこの事実への対策方法について意見を聞きたい」


「大統領、起きてしまったことは仕方が無いじゃないですか。

 ここはハル前長官が日本側からスキャンダルを追求された末に、頭が狂ってしまい正常な判断が出来ずに軍隊に命令を出したというのが一番無難な解決法だと思うのですが」


「今の意見を提案したのは、司法長官か?」


「ハイ、事実は事実として受け止めることが大事です。

 ハル前長官の行為は、軍紀に照らしても間違いなく犯罪行為でしょう。

 コレを隠し立てすること無く、長官を狂人とすることで国民達は納得するのではないかと思います」


「大統領、最後の長官と三木特使のやり取りはどうしますか?

 我が国のマスコミ分は一旦回収してカット出来ますが、他国に配布したモノが我が国に入ってしまえば同じですからね」


「郵政長官、マスコミ配布済のフィルムは回収しなくて宜しい。

 これ以上、政府が干渉するとマスコミ共が政府に反発するからな」


「よし、司法長官の意見を是としてマスコミ発表する。早急に報道官へ伝えてくれ」


「分かりました」



「さて、次は日本がアメリア側の植民地や領土に攻め込んで来た時の対処方法だな。


「大統領、ハル前長官が起こした行為は恥ずべき行為ですが、日本がアメリアに宣戦布告したことは、我々にも好機なのではないですか?」


「うむ、商務長官の言うとおりかも知れぬな」


「日本がアメリアに開戦することで、欧州戦線に参加出来る事ですか?」


「そうだ、一刻も早く欧州諸国をヒルラーの手から救出しなければならない」


「日本側は宣戦布告の期日が過ぎた段階で、我が国に対する攻撃は間違いなく実施すると思われます」


「つまり、日本が我々を攻撃すれば欧州諸国への攻撃をしていることと同じになるわけか」


「ハイ、そのとおりです。それを機に欧州戦線参加の大義名分が出来るかと」



 日米交渉の1回目で大統領と各閣僚達は、日本側が中国から撤兵して和平を結び、日独伊三国同盟を結ぶと予想していたが、逆に日独伊三国同盟を結ばずに、アメリア側の要求をほぼ受け入れたことに驚いていた。


 しかし、アメリアは要求を受け入れた日本側の実績を一切認めず、逆に日本を始めから叩き潰すためのシナリオが書かれており、そのシナリオに基づいて経済制裁や禁輸政策を取り、日本を苦しめて戦争への道に引きずり込もうとしていた。


 日米交渉の2回目で、当初ハル四原則を突き付けたアメリアに対して、逆に四原則を日本から突き付けられ、アメリア側のハル長官は自らのスキャンダル記事を隠蔽するために日本外交団の殺害を計画するも失敗に終わった。

 しかし、ハル長官の軍事行動は日本外交団に対する戦闘行為であり、コレはアメリアから日本に対する宣戦布告と取られても仕方が無い行動であった。


 日本は、これらの事件を含めて欧米諸国等が推進する植民地政策に反対する立場を取り、その欧米諸国等に対して植民地から手を引かない場合は、武力行使を行うという宣戦布告を発表した。


 だが、アメリア側は日本側の動きを大幅に読み違えていたのだ。

 つまり、日本はアメリアの石油禁輸措置により、石油を求めてインドネシアへ侵攻すると予想していたのだった。


 しかし後日判明することだが、アメリア側の予想は大きく外れていた。

 1つ目は、元々、満州と樺太から石油が産出していた。

 2つ目は、日本転移時に女神ガイアがPW地球上の石油埋蔵分布を大幅に変更し、日本に豊富な油田が発見されて消費国から産油国になりつつあった。


 なお、石油分布の変更は場所だけに限らず、地球温暖化防止のために埋蔵量を正史地球の1/100にしていた。


 また、正史地球上では産油国であった中東、南米、ル連邦地域からはPW地球上では一切石油は産出しなかった。


 加えて、アメリア国内の油田は1940年から約2年程で枯渇するようにし、他国へ石油を武器にした無双行為を出来ないように調整していたのであった。




場面を再びホワイトハウスに移す。



「海軍長官、日本の宣戦布告文書の内容を読んでどう思ったか?」


「ハイ、大統領。読めば読むほどはらわたが煮えくりかえる思いです」


「さて、海軍長官は日本が何処に攻めて来ると思うか?」


「おそらく南進策を取り、石油を求めてインドネシアに侵攻するかと」


「ふむ、陸軍長官と同意見か。

 それでは、敵の侵攻に対して我が国はどう対応するのか?」


「ハイ、グアム島とフィリピン駐留軍に対して警戒を怠らないよう指示を出す予定です」


「我々の軍は迎撃しないのか?」


「大統領、取りあえず日本軍を素通りさせてインドネシア奥地まで誘い込むのです。その後マレー、インドシナ両半島に駐留する欧州諸国の軍と協同して、日本軍を叩くのです」


「なるほど、敵の補給線が延び切ったところで一気に叩くわけか」


「ハイ、大統領。コレで日本軍も一網打尽です」


「開戦まで残り1カ月か。奴らの苦虫を潰した顔が見えるようだな」


「全くです」


「そうだな。ワ、ハ、ハ、ハ」




ドイツ側の対応



日本国駐在のドイツ大使館から、電信文を着信する。


「ヒルラー総統、大変です」


「どうしたかね?作戦参謀。私のお茶の時間を中断する程に重大な事件が起きたのかね?」


「ハイ、総統。日本がアメリア、ル連、欧州諸国に宣戦布告致しました」


「ほほう、極東の小国が強大な国々に戦いを挑むのか、実に面白いな」


「それで、宣戦布告文書の内容はコレですね」


「フフフ、この文書では我々には宣戦布告は無関係。読んでみよ作戦参謀」


「ハイ、この文書では植民地政策を取っている国家に対して宣戦布告しているみたいで、文書の中で

『ドイツ支配下になった欧州諸国については、ドイツ支配下になる以前に獲得した植民地は母国がドイツ帝国連邦の支配、庇護下にあるため植民地権利は全て無効であり、同植民地は即時放棄すること』

等と我が帝国を擁護するような記述があります」


「ほおう、それは素晴らしい。だが我が帝国にはこの宣戦布告は関係ないな」


「確かに我が国には植民地が無いですから」


「そのとおりだ、作戦参謀」



 正史地球では『ナチス・ドイツ』がユダヤ人を弾圧、民族浄化と称するホロコーストの悲劇を生んだ。

 しかし、PW地球では『ライチ・ドイツ』がゲルマン民族を中心に他民族を吸収した総統制職階級別民主国家が誕生していた。


 階級別に分けて民族差別しているように見えるが、職階級という人の仕事の適性により職業別に分離している社会体制であった。

 だから人種差別というより職業区分という表現が正しいのだろう。


 そのため、ヨーロッパ内で国家の生存すら危うい弱小国は、ヨーロッパ内で覇権を振るい始めたライチ・ドイツの動きには非常に好意的で、その覇権の庇護を受けるために、自ら進んで属国になる国々が多かった。




英国側の対応



「チャーリー卿。順調ですか?ドイツ機の迎撃は?」


「ハイ、エトレーヌ女王陛下。日本製戦闘機は抜群の性能です」


「それより、アレの開発は進んでいますか?」


「ハイ、日本から提供してもらった戦闘機設計図を参考に我が国独自の戦闘機が間もなく完成予定です」


「それと、Uボート対策はどうなりましたか?」


「コレも大成果を上げております。

 日本からの対潜哨戒機は実に優秀ですが、コレを開発する技術はまだ英国にはありませんので、当面は機体ごと日本から輸入する形になるでしょう」



「コンコン、会議中申し訳ございません。急ぎの連絡事項があります」


「入れ!」


「失礼します。只今、通信部から至急の電信文が入りました」


 軍服を着た青年将校が総理大臣執務室に入室し、電信文を持参してきた。


「何処の至急電信文なのだ?」


「日本からの電信文で、内容は宣戦布告とのことです」


「分かった、御苦労。それを置いて下がれ」


「ハッ!」



 チャールズ首相は、青年将校から渡された電信文を読んでいた。


「陛下、どうやらアメリアは日本が宣戦布告する以前に、日本外交団に軍隊を使用して襲撃を加えたようです」


「え?三木さんは無事なの?」


「ハイ、無事みたいです。これには助かった方法が書かれていませんが、おそらく天使の方々が守護したのだと思います」


「チャーリー卿は、何故そこまで分かるのですか?」


「普通国家が軍隊を使用した場合は、相手が99%確実に死亡する計画を立てます。

 ところが三木一行は無事なようですが、本来ならばあり得ないことです」


「だけど、チャーリー卿。コレにはSP2人死亡とありますが?」


「日本は人命第一に考える国家。例えSPでも可能な限り死なせないはずです。

 しかし、このSPはアッサリ殺されています。

 このことから、SPは日本政府側が事前に用意していた死刑等の極刑確定者を使用して名誉の戦死を演じさせたのだと予想します」


「なるほど。流石、深読みのチャーリーね。そこまで予想出来るとはね」


「それと、襲撃事件の状況を記録した映画フィルムが日本側から世界各国のマスコミに配布したようです」


「うわ、それ本当ですか?是非早く観たいですね。フィルムが手に入るのはいつ?」


「陛下、それよりも日本の宣戦布告内容は宜しいのですか?」


「だって、我が国と同盟を結んだ時から、日本とアメリアとの戦争は規定路線のはずじゃないですか」


「それは確かにそうですが、一応我々も後学のために拝読しませんか?」


「一理ありますね、チャーリー卿。私と一緒に読みますか」



 エトレーヌ女王とチャールズ首相の2人は、日本が発進した宣戦布告文書の内容について、顔を付き合わせて読み始めた。



 英国は昨年日本と同盟を結んでおり、日本からの兵器供与によりドイツとの戦いを互角にしていた。


 正史地球の時であれば、ナチスドイツが周辺諸国を弾圧したり、民族浄化を行っていたが、このPW地球のドイツは覇権国家として君臨していたものの民族融和政策を取り、以前の欧州よりも民衆の生活が向上しており、ドイツを盟主国家とする限りドイツ連邦として国家が維持出来るため、正史地球よりもドイツの勢力が拡大していた。


 ドイツに占領された欧州諸国の旧政府は英国内に駐留中であったが、ドイツ連邦の民族融和政策に旧国民が満足しつつある姿を目にして、自国領土を取り戻そうとするも、旧政府を中心とした祖国奪回運動が消極的になりつつあるため、援助しようとしていた英国政府も静観せざるを得なかった。




ルーシー連邦側の対応



「大元帥閣下、緊急で電信文が到着しました」


「同志よ、何処からのものだ?」


「日本からの宣戦布告で、内容はコレです」


「何?日本だと!その文書を貸せ!」



 スターリン書記長は、書記長執務室にて青年将校が差し出した電信文書を奪い取り、その文書の内容を読んでいた。



「ほおう、思い切り神聖なる共産主義を否定しているな。

 それにフィンランド侵攻は鬼畜的行為か。フン、言わせておけ。

 最後に我が国に宣戦布告で、期限は我が国だと12月7日か。コッチは冬だから日本側は来年春に我が国に攻め込む気だろうな」


「同志クラヴジー・ヴォログーシン、ヴォログーシン元帥を呼んでくれ!」


「ハッ、直ちに!」


 青年将校はスターリンの命令により、書記長執務室を飛び出して軍幹部控室に向かった。



「お呼びでございますか、スターリン大元帥!」


「日本が我が国に対して宣戦布告したのは知っていると思うが、貴様なら日本をどう対処するのか?」


「私ならば、我がシベリア奥地に日本軍を誘い込み、補給が追い付かないところで各個撃破します」


「つまり、同志が言うことはシベリア奥地まで補給線が届かず、シベリアの冬が我が祖国に味方してくれるというわけか」


「ハイ、大元帥。そのとおりです」


「フーン、分かった。日本が我が国に侵攻して来た時は同志に迎撃の任に付いてもらうからな」


「ハッ、了解です。お任せ下さい」


 スターリンは当面の敵であるドイツとの戦いに集中しなければならず、自国に宣戦布告した日本は殆ど眼中に無かった。


次回、いよいよ有名な出来事が始まります。

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