14話 ガイア降臨 その2
「中破さん、少し話題がずれてしまいましたね。
本題に戻しますね」
「さて、歴史改変をする前に準備しておくことがあるのですが、その前にもう少し神々の仕組みについて、貴男に説明しておきましょう」
「あ、ありがとうございます。それではお願い致します」
「私達神々と呼ばれている宇宙管理者は、、、、、」
ガイアはある程度の概略を中破に説明を開始した。
・自分が神族で太陽系の第1級宇宙管理神であること。
・地球上で第二次世界大戦後、人類滅亡の危険性は極めて高いこと。
・人類滅亡の主原因は核戦争と地球温暖化であること。
・中央管理局から人類滅亡回避策を取るための回避方法は、ガイアに任せるということ。
とであった。
そして次にガイアは歴史改変計画について、簡単に説明し始めた。
まず歴史の流れとして
・正史地球世界は、例え人類滅亡の危機に瀕しても何もせず傍観する。
・現在住んでいる地球世界は、2025年時点で太陽系丸ごとコピーしたモノで、オリジナルの正史地球世界と何ら変わらず、その世界をパラレルワールド地球世界(以下PW地球略)と名付ける。
・このPW地球の2040年時の状態をコピーし、片方は亜空間次元凍結状態で時間進行を停止させて保存し、PW地球の2040年時を1940年当時に上書き転移する。
・正史地球、PW地球1と2の3つで、どの地球で人類が滅亡しても良いように見守り、正史地球の人類が滅亡したらPW地球の1、2のどちらも歴史進行させて、人類滅亡しないように見守ること。
「以上、こんなところでしょうか」
「つまり、私達人類は神々と呼ばれている管理者のモルモットなのですか?」
「中破さん、ちょっと違うのよね。実は、、、、、」
中破は旧陸上自衛隊の幹部で、幹部レンジャー部隊に所属しながらも、或る事故で政府要人を救ったことで、退官してその政治家秘書に抜擢され、衆議院議員となり、現在は国防大臣まで出世していた。
ガイアはそんな才覚がある中破に目を掛け、数年前から夢枕等で天啓や恩恵を与えていた。
中破の日本への愛国心は高く、人一倍正義感が強いことはガイアは当然理解していたが、彼女が彼に目を掛けていた理由は彼の特異な趣味というか好みであった。
彼の少年時代の夢はヒーロー物であったが、進学するにつれてその夢は忘れがちになったものの、防衛大学校に入校して幹部レンジャーは少年時代の夢を呼び覚ます切っ掛けとなってしまった。
だが、自衛隊時代にいたアニメオタクがヒーロー願望が強かった中破の精神を汚染して、気が付けばSFと異世界モノ、それにアニメオタクが趣味の独身中年になっていたことだった。
それ故に天使、女神等への偏見が無く、理解が早いことは大いに助かっていたことだが、今回中破に直接会って話したことは、ガイアや天使達が夢の中で見せたビジョン以上に中破にはショックだったようである。
だがオリジナルとコピーが同一で、どちらも真であるということは、仏教でいう『一即多、多即一』という言葉を少年時代に読んだ仏教の本を思い出し、ガイアがやろうとしている歴史改変について理解しつつあった。
「つまり、2040年の日本が1940年の日本に上書き転移されるのですよね。
コレだと1940年の日本を消去して、2040年の日本と入れ替えた方が良いのではないですか?」
「中破さん、それも検討しましたが、それだと軍隊の人数があまりに少ないため世界への覇権効果が変わってくる可能性が高く、その計画は中止しました」
「つまり、上書きということはどのようになるですか?」
「私らの考えている上書きは、或る意味では転移による上書きだけでなくて、一種の転生といっても過言ではないモノです」
「国土転移ではなく、国土転生ですか?それは一体どういうモノで?」
「それは、、、、、」
ガイアは、中破に国家転移の上書きについて説明を始めた。
・1940年当時の建物、道路等の構造物は、2040年の新しい物に入れ替わる。
・1940年当時の構造物で、2040年時点でも現存している物は1940年当時のままで、新しいモノに再現される。
・2040年現在は空き地で原野状態ならば、1940年当時に構造物が立っていたならば再現される。
・特に東京は無くなる構造物は多いが、と同時に築100年以上古い建物は意外に残っている場合がある。特にリノベーション施工された物以外で1940年の方が新しい場合はそちらの物が優先される。
・2040年時点で廃墟になっている構造物で、1940年当時で健在ならばその構造物は当時の新しい状態で再現される。
・構造物は、建物、橋、道路、港湾、空港等以外に駐車場等の人工物も含まれる。
・1940年当時の人間は、2040年の人工物の横に移転する。
つまり、2040年の建物を避け、その建物の外側に移転する。
・1940年当時の人々と、2040年の人々とのタイムパラドックスは起きない。
・転移時に日本国籍以外の者は転移しない。
等々の大まかな説明を受けて、中破はある程度は理解した。
「簡単にいうと、増えるモノと減るモノがあるということですね」
「増えるモノはズバリ日本人の人口が倍になることで、減るモノは外国人ね。
これから行く時代は世界中の国々を相手にしなきゃならない。
そんな時に国内に不穏分子がいたら困るでしょ。
あ、それと海外渡航者と外国居住者は、国内に戻って来るわね。
それと、中破さん。減るモノを予想して見て下さい」
「外国人が減るということは、つまり日本国籍を持っていない者が消えることなのですか?」
「その通り正解です。
私も色々考えたのよ。日本が覇権を行う上で一番邪魔な存在を消したかったのは、欧米系外国人の他には在日韓国人の存在なのよ。
彼等は日本国籍を取るチャンスはあった癖に、あえて取得しなかった。
そして日本人のフリをして、自分の都合が悪くなったら外国人で被害者面をする一番卑怯な輩です。
だから、今回の転移時にあえて消去致します」
「消えた外国人はどうなるのですか?」
「どうにもなりませんよ。オリジナルとコピー1の世界に当人が残るだけで、コピー2の世界から消えるだけですから」
「凄いですね、神の御業は」
「だって、邪魔者はいない方が歴史改変がやりやすいでしょ」
「(ウワー!神様を怒らせたら『バチ』が当たるのと同じか。触らぬ神に祟りなしかな?)」
ガイアは中破に少し意味深な笑顔を向けたところ、中破は『しまった!』という顔をしたと同時に、神々達は人間の思考を読めることを忘れていたことを後悔すると同時に、自分の考えていたことをガイアに読まれてしまい、気不味い顔をしていたところに、ガイアに声を掛けられてビックリして声がひっくり返った返事をしていた。
「中破さん?」
「ハッ、ひゃあい!」
「そんなに私を怖がらないで下さい。
確かに私達神々は人間の思考を読めますが、そんなに四六時中読んでいる訳ではありません。
悪意や殺気のある場合は、リアルタイムで伝わって来ますが、難しい思考や中破さんは読みにくいタイプの人間といえます。
先程の中破さんの思考も、私を心の中を覗く化け物みたいに感じているようでしたから、せめてその誤解を解くためにあえて声を掛けました」
「済みません、神々の方々が全ての人間の思考を読み取れると思っていましたから、つい怖くなってしまいました」
「私は、貴男を歴史改変出来る中心人物であるからと選択しました。
そうで無ければこうやって直接お話ししませんから」
「ありがとうございます。それより人類滅亡することが分かって、何でこんな回りくどいことをするのでしょうか?
神々の能力を使用すれば、地球人類全体の思想をコントロールした方が簡単で、手っ取り早いと思うのですが?」
「過去、別惑星で同様の事を実施したのですが、文明の進化が超遅くなるの」
「それでは、何故正史地球をコピーし、オリジナルの正史地球の人類を放っておくのでしょうか?」
「それはね、中央管理局の意向なの。出来る限り人類自身が自己努力して滅亡回避するように見守ることが最優先なの」
「それで、正史地球の人類が滅亡する確率は?」
「2100年まで核兵器を根絶し、地球温暖化防止が進まなければ、99.999%の確率で滅亡ですね」
「人類滅亡しない確率は10万分の1ですか。
それではまず間違いなく絶滅しますね」
「そこで、貴方達は人類滅亡しないための保険なの。
だけど、正史地球と同様の歴史を繰り返しても意味が無く、そのための歴史改変事業をするわけなのです」
「ここまで神々の計画を私に話したわけは何故なんですか?」
「それは先程説明したとおり、貴男が神々に選択された人物だからよ」
「それは光栄なお話しですが、或る意味ではチト荷が重いのですが」
「その貴男の負担を軽くするための補佐を付けますから」
「え?補佐?」
ガイアは中破に補佐を付けるという話をした時点で、戸惑い始めていた。