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ロストキルレシオ  作者: 湿った座布団
三章・黒炎の騎士
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二十一話・第四層『子殺し』

 



「……うるさい」


 ふと、アリスの声が聞こえた。

 その言葉は赤子の泣き声に対してか、あるいは彼女にしか感じ取れない何かにぶつけられたのか。

 事実は分からないが、彼女が吐き捨てるようにして呟いていた。


「…………」


 アッシュは少しだけ考えて、声をかける。

 なにがうるさいのか聞こうかと思ったが、もう魔王の心など気にしないと決めていたので聞かなかった。

 代わりに索敵を頼んだ。


「おい」

「はい?」

「偵察を頼みたい」


 すると小さくため息を吐いて、アリスは杖を握り直す。

 そして黒い鳥を飛ばし、目を閉じて調査を始めた。


「……なにか見えたか?」


 しばらくして聞いてみる。

 すると彼女は目を開いた。


「ええ、そうですね」


 言葉を選ぶような、あるいは濁すような間が空いた。

 続いて、不可解な言葉を口にする。


「……全員、一旦逃げた方がいいですよ。多分勝てませんから」


 言うやいなや竜に乗って空に逃げていった。

 ミスティアが狼狽した様子で手を伸ばす。


「ちょ、ちょっと!」


 まだなにか言おうとしていたようだが、その前になにかが現れた。

 気配を感じ、アッシュは反射的に目を向ける。


「…………!」


 夜に、一対の赤い光が尾を引いていた。

 眼光であるとすぐに気づく。

 凄まじい速さで地を蹴り、二足の獣が駆けてきていた。

 その獣は、他の異形と同じく、やはり少しだけ人に似ている。

 端的な印象を述べるなら、長い黒髪を振り乱しながら走る餓死死体といった様子だった。


 獣の二メートルを超える巨軀きょくは痩せさばらえ、骨と皮ばかりになった死体によく似ている。

 そして例に漏れず顔も、壮絶なまでに細っている。

 皮が張り付いただけの頭蓋骨……とでも言えるような顔で、落ちくぼんだ真紅の瞳がギラギラと輝いていた。

 さらに、顔の頬から下は皮さえ千切れている。

 剥き出しになった顎骨の中で、歪んだ歯列が剥き出しに露出していた。


 しかし無惨に痩せた体の中で、足だけは異常に発達している。

 いや、もはや発達しているという次元ではなかった。

 脚部はなぜか逆関節に変形していて、不自然なまでに隆起した筋組織に覆われている。


 獣はその異形の脚で力強く地を蹴り、前傾の姿勢で駆けてきていた。

 まさに人外の機動である。

 爆音のような足音を立てながら並外れた速度で疾走し、瞬く間に街を走破していく。


「……なんだ、こいつ」


 あまりに異様な姿を前に、アッシュは思わず呟いた。

 敵は、明らかにこちらを狙って駆けてきていた。

 細く萎びた長い腕の先で、長く鋭い爪を光らせている。

 あれを食らえばただでは済まないだろう。


 恐ろしい速さで近づいてくる敵に対し、アッシュは身構えて迎撃の姿勢を取る。

 しかし敵は……接触の前にこつぜんと姿を消す。


 ノインが目を見開いた。


「……なにが」


 その、彼女の手をアッシュは離した。

 続けて体を押して、突き飛ばす。

 同時にアッシュ自身も身をよじるが、避けきれなかった。

 不可視の刃に……恐らくはあの爪に、深く左脇腹を抉られる。


「…………っ」


 身をよじっていなければ、恐らく内臓をぶち撒けていたであろう。

 それだけの一撃だった。

 しかし、怯みはせずに背後に向き直る。


 だがそこに異形の姿はなく、ただ不自然に石畳が砕けた。

 何かが動く気配だけがする。

 応戦すべく、アッシュは魔術を唱えた。


「重く鋭い杭よ、穿て」


 詠唱し、砕けた石畳を頼りに『炎杭』を叩き込む。

 すると虚空が燃え、直撃したらしい異形は一旦いずこかに引いたようだった。


「…………」


 肩に蟲が這っているのを確認し、アッシュは口を開く。


「全員密集しろ。敵は見えない。背中を合わせて、僅かな兆候も見逃さないように。それからアリス、お前は赤子の声を探せ」


 見えぬのならば、散開すれば動きが読みにくくなる。

 密集すべきだった。

 またこの階層が子殺しの罪を主軸にしているのなら、攻略の糸口は赤子の声にあるに違いない。


 だから伝えると、その言葉にノインはすぐに従う。

 大剣を構え、アッシュの背に自らの背を合わせた。


 だが。


「悪いが、勝手にやらせてもらうぞ」


 そう言って、シドは杖を構えて前に出る。

 どこにいるとも知れぬ敵を、探すように視線を巡らせている。

 さらに、その杖の石突で地面を軽く叩いた。

 魔術を使用する。


「『響域サーチ』」


 叩いた音が、不思議と長く残る気がした。

 アッシュは油断なく周囲を見張りつつも、シドの様子も伺い見る。

 まさか無策でもないだろうから。


「…………」


 すると隙だらけの所作で立ち尽くしていた彼が、ゆらりと視線を動かした。


「そこか」


 杖を向けた先が、青い光で消し飛ばされる。

 何度も何度も雷光を迸らせた。

 それで、ようやくシドは攻撃の手を緩めた。

 獣は、恐らく建物の裏からこちらを監視していたのだろう。

 だが民家は跡形もなく粉砕され、更地になってしまっている。

 今や何者も蠢く気配はない。


「…………」


 しかし、死んでいないと判断したのかさらにシドが動く。

 再び杖で地面を叩き、彼は虚空に杖を向ける。


「隠れているつもりか」


 今度はさらに苛烈な攻撃を加えるつもりらしい。

 杖の先に巨大な稲妻が収束していく。

 夜を染め上げるような蒼を輝かせつつ、彼はゆっくりと口を開いた。


「さっきのは『射手』だ。分かるか魔獣? そして今度は、杭を撃つ」


 杖を振ると、それを合図に柱のような太さの雷光が飛んだ。

 一つではない。

 二つも三つも殺到する。

 命中の衝撃が地震のように地を揺らした。

 三秒ほどの掃射の後、シドはさらに地面を突く。


 そして歩いて後ろに下がりつつ、彼の従者の名を呼んだ。


「ミスティア」

「了解です!」


 二人して杖を抜き、前方にかざす。

 すると石畳が盛り上がり、瞬く間に重厚な土壁が現れる。


 が、異形の膂力の前にやすやすと……いや、違う。

 あれはアッシュもそうするように、あえて脆くしてあるのだ。


「『雷鎚サンダークラッシュ』」


 脆い壁により足止めされた異形は、叩きつけられた雷の塊でその身を打たれる。

 だがそれこれに飽き足らず、シドはまた敵の位置を探った。

 なおも次の手を講じてみせた。


「三時の方向だ、マーキング頼む」


 シドが言った。

 直後、また石畳が盛り上がる。

 今度は鋭い岩の槍が現れる。

 その槍をミスティアに軽く投げ渡した。

 すると、受けた彼女は低く構える。


 その横でシドが杖を掲げ、小さく呟いた。


「『灯光トーチ』」


 瞬間、夜の街は漂白される。

 異形は当然姿を消していたが、強い光によりほんのわずかに屈折が生まれる。

 位置があらわになった。

 そして位置を見切り、ミスティアが槍を投げた。


「――――!」


 声とも言えない甲高い音が聞こえた。

 投げ槍に貫かれた怪物が絶叫する。

 そしてまた隠れようとするが、不可視のはずの敵の位置は明白だった。

 太い槍が体を貫いているので、透明になったところで隠れることができないのだ。


「いい、僕がやる」


 飛び出そうとしたミスティアを制して、シドが杖を前に突き出す。

 そして無防備な敵へと不敵な笑みを送る。


「やぁ、こうして向かい合うのは初めてか。冥土の土産だ、最後に見せてやるよ。ロスタリアの魔術をな」


 槍は、先ほどの壁と違って本気の硬度なのだろう。

 岩を砕こうともがく異形だが、切っ先を折ることすら叶わない様子だ。


 さらにこうしている間にも、シドの杖の先には雷が収束していく。

 刻々と死の刻限は迫っている。


「矢も杭も超え、お前たちを砕くモノを人は『砲火ほうか』と名付けた」


 シドの、そしてミスティアの身の丈すら軽く超える雷の球体が現れる。

 とてつもない熱量が圧縮されていく。

 余波の風が吹き荒れて、ちりちりと音を鳴らす雷があふれる。


「お前如きには過ぎた代物だが……もらっていけ。『雷砲ライトニングブレイク』」


 甲高い雷鳴が頂点に到達した時、ついに膨大なエネルギーが解き放たれる。

 まさに落雷そのもの、いや恐らくそんなものを遥かに超える力だ。

 最終決戦で見せたツヴァイの閃光すら彷彿とさせる、極大の電撃が夜闇を穿つ。


「っ……!」


 音と光の氾濫を伴う雷の奔流を前に、薄く目を閉じたノインが小さく声を漏らす。

 そしてアッシュも、声こそ上げなかったが肌が粟立つような気がしていた。

 それほどに、目の前の破壊は常軌を逸していた。


 洪水のようにあふれ出す雷が、瓦礫を消し飛ばしていく。

 あらゆる物体を無に変えて、灼熱と閃光があらゆる障害を溶かしてしまう。

 魔人化したアッシュだとしても、あの中で無事で済むとは思えない。


「…………」


 やがて、ことごとくを薙ぎ払って蒼の閃光が消えた。

 雷撃が過ぎ去った夜は、元の静寂を取り戻す。

 だが酷薄なまでの破壊は、明確に街に爪痕を残していた。


「……これは」


 思わずつぶやく。

 薄く張る土煙の向こうの大地は、半月型に抉られてしまっていた。

 触れるもの全てを焼き尽くした、ロスタリアの魔術の名残だった。


「まぁ、こんなもんだ」


 シドが自慢げにこちらを見てくる。

 彼に歩み寄ろうとして、そこでアッシュは声を上げる。


「いや、まだ死んでない!」

「?」


 ロスタリアの二人が、訝しげな表情で振り向く。

 確実に消し飛ばした異形が生きているとは思いもしないのだろう。


 アッシュも、あれで敵が無事だとは思えない。

 しかし、それでも魂が吸い寄せられないのなら……死んではいないということだ。


「逃げろ!」


 叫んで、すぐにアッシュは走り出す。

 どこを守ればいいのかも分からない。

 人の姿のまま、魔物化する間もなく走る。


 だがそんなアッシュを追い越し、飛び出したのはノインだった。


 恐らくは身体強化をぎりぎりの上限まで引き上げたのだろう。

 剣すら手放して、地を抉るような踏み込みで駆け抜けた。

 そしてそのまま、シドに覆いかぶさるように倒れ込む。


「!」


 すると、その空間を風が駆け抜けた。

 比類なく鋭利な、一陣の風だ。

 するとシドを抱いていたノインの背が深く刻まれた。


「っ!」


 ノインが呻く。

 痛みはなくとも、衝撃は感じたのだろう。

 するとようやく状況を理解したのか、余裕のない声でミスティアが叫ぶ。


「お前ッ!」


 そのまま見えない魔獣に拳を振るう。

 しかし一撃は空を切った。

 隙を晒した彼女は反撃を受ける……ところなのだが、これは魔人化したアッシュが防いだ。

 とはいえ攻撃を見切るのは無理なので、大まかな敵の位置を把握して蹴り飛ばす。


 そして、敵の反撃が来ると予感していたのだろう。

 ミスティアは無理に避けようとして、体勢を崩していた。

 だから倒れる前に抱き寄せてやると、彼女は小さく息を漏らす。


「…………っ」


 アッシュは何も言わず、彼女をノインたちの方に突き飛ばした。

 続けて、倒れ込んだのを確認して鎖を振るった。

 広い範囲を薙ぎ払うように投げた鎖は、見えない魔獣に接触する。

 手応えを感じたところで標的に巻きつけた。

 さらに引き寄せて、その体に剣を突き刺した。


 だが。


「……再生、か」


 傷が塞がっていくのがわかった。

 透明の体から、溢れていた血がすぐに止まったからだ。

 きりがないので追撃を仕掛けずに退く。

 そしてノインたちの場所まで下がり、周囲を鋼鉄の壁で囲んだ。


「シド様! 大丈夫ですか!」


 ミスティアが言った。

 そしてシドは、倒れたノインの前に呆然と立ち尽くしている。


 個人的にはまずはノインを心配し、礼を伝えるべきではないのかと思う。

 だがミスティアに優先順位があることなど分かっていたからなにも言わない。

 ただ敵の気配を探ることにする。

 ろくに手当もできないし、ノインならすぐに治ると分かっていた。

 だから、おろおろと心配するよりは敵を見張っていた方がいいと思った。


「…………」


 シドは、ミスティアの手をするりと振り払う。

 そしてノインの側にかがみ込んで語りかけた。


「お前……痛くないのか? 死んだって、おかしくなかったんだぞ」

「痛くは……ありません。勝手に治りますし、血も……流れていない、ですよ」


 息が苦しそうではあるが、実際痛みはないのだろう。

 そして、血すら流さない彼女の傷はすでに塞がり始めている。


「…………」


 だが微笑んだノインを信じられないのか、シドは仰向けに寝る彼女の体を無造作に返す。

 すると蛙のように伸びた彼女は小さく声を漏らした。


「あうっ」


 痛々しい傷も塞がり始めている。

 確認すると、シドは心なしか安心したように息を漏らす。

 そして立ち上がった。


「ならいいか。だが、余計なことだ。今後は自重してくれ」

「シド様、そんな言い方……。助けてくれたんですよ。お礼を……」


 彼が無事だと分かったからか、多少冷静を取り戻したミスティアが渋い表情を浮かべる。

 だが鼻を鳴らし、シドはアッシュが作った壁に杖を向けた。

 恐らくは『構造強化』か。


 これで、この壁はもう容易には抜けないだろう。

 するとシドをよそに、今度はミスティアがアッシュに話しかけてきた。


「あ、わたしも。……アッシュくん、さっきは助けてくれてありがとう」

「気にするな」


 答えた時、右側の壁に魔獣が爪を立てた。

 轟音と共に壁が一枚わずかにひしゃげる。


「…………」


 だがその右側で即座に蒼い雷が爆ぜた。

 ほとんど壁を叩いたのと同時だった。

 だから、魔獣も不用意に近づけば反撃をもらうと悟ったらしい。

 一度、どこかへと退いていった。


「どうする?」


 シドが問いかけてきた。

 アッシュは答えず、上を見張りつつ思案する。

 奇襲で警戒すべきは、やはり壁がない上だろうから。


「…………」


 どうすればあの魔獣を倒せるのか……考えたが答えは出ない。

 だから現状を打開する糸口を求めて、アリスに語りかけてみる。


「……おい、アリス。まだ見つからないか?」

「ええ。泣き声はどこもかしこも聞こえ方は均一で、あまり位置が読めません」

「そうか」


 答えて、アッシュはシドたちに向き直る。


くだんの伝承とやらで、赤子の位置の手がかりになるようなものはあるか?」

「う〜ん……」


 反応したのはミスティアだった。

 シドはどうやら索敵と迎撃を繰り返していて、話をする余裕はないらしい。


「共同墓地かな」

「共同墓地?」

「そう。メリッサは赤子を殺す時、必ず墓地に行ったの。処理がしやすいし、他の()()も調達しやすかったみたいだから……」

「なるほど、ありがとう」


 頷いて、アッシュはそのままアリスに声を向ける。


「聞こえていたか? そちらを頼む」

「はいはい。……ところでノインちゃん、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」


 大丈夫だと言われ、それは良かったです、などとアリスは返した。

 その彼女にふと気になった疑問をぶつけた。


「ところでお前、どうして俺たちがアレに勝てないと思ったんだ?」

「え?」


 なんのことか分からないとでも言うような声を上げる。

 それにしびれを切らし、アッシュはさらに言葉を重ねた。


「言っただろう、最初に勝てないと」

「ああ……」


 思い当たったように呟いて、続けて彼女は独り言のように呟いた。


「この階層の意思と言いますか、なにか課題を果たさないと突破させないというか……そういうのがなんとなく分かったので」


 よく分からない内容だった。

 アリスに、というよりこの塔にうんざりし切ってため息を吐く。


「……ありがとう。今後も何があれば教えてくれ」


 聞き出した言葉にはやはり理解が及ばない。

 だが、少なくとも魔王の領域においてアリスの感覚は頼りにするべきだということは分かった。


 そしてやがて、彼女は赤子を見つけたようだった。


「……でっかい赤ちゃんがいました。めちゃくちゃ気持ち悪いです」


 異形との膠着状態は続いていた。

 実際に赤子を殺してどうなるかは分からないが、それでも迷うことなく答える。

 本当にしてはいけないことなら、アリスは察知して、したがらないと思ったからだ。


「殺してくれ」

「はい」


 蟲を通じて破壊音が聞こえて、赤子の泣き声が消える。

 一度戦ってみようと思った。

 だからアッシュはノインの方に視線をやる。

 すると、身を起こしていた彼女は力強く頷いた。

 傷はもう十分癒えたらしかったので、立ち上がったノインに『偽証』で作った剣を渡す。


 続けて、今度はシドに語りかけた。


「シド、敵の方向が分かっているなら教えてくれ」


 敵の位置を把握してから壁を消したかったのだ。

 だから尋ねると、彼はアッシュから見てちょうど右側を指さした。


「あっちだ」


 だから全員がそこに向き直ったところで壁を消す。

 しかし、もうあの異形はいなかった。

 代わりのようにして、痩せさばらえた人影が立ち尽くしていた。


「…………」


 強靭な足は見る影もなく細くなり、姿を消す異能すら失われている。

 振り乱していた黒髪も抜け落ち、鋭い爪さえも消え去っていた。

 だが、一糸纏わぬ姿だった怪物は、白いマントのついたボロ切れを纏っている。

 加えて、長大な骨を削って作ったような剣を手にぶら下げていた。


「『炎剣フレイムアーツ』」


 剣に炎を纏わせ、アッシュは走り出す。

 並ぶようにしてノインとミスティアも続いた。


「…………」


 三人の猛攻を前に、異形はあまり時を待たずして倒れることとなる。

 再生の異能だけは働いているようだったが、その機能も最早さほどの意味があるとは思えなかった。


 なにしろそれは遅いのだから。


 先ほどはシドの魔術を受けてさえ即座に反撃してみせていた。

 しかし、今はただ貫かれただけの傷すらすぐに再生することができない。

 無様な力任せで骨の剣を振り回し、防戦に回っているだけだ。

 当然、すぐに首を斬り落とされる。


 すると今度こそ異形は動かなくなる。

 さらに、その魂もアッシュに喰らわれる。

 少し他に比べて()()ような印象を受けたが、特に気にはしなかった。

 死亡を確認したアッシュは、人に戻って剣を収める。


 そして最後に、念の為死体を焼き、アリスを含む全員に向けて言葉を投げた。


「次に進もう」


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