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三章プロローグ・『罪科の塔』
とある男が罪を犯した。
しかしその罪は法では裁くことはできず、故に男は呵責に苦しみ続けることとなった。
待てども待てども罪に罰は与えられず、だから男は罪を重ねることにした。
重ねて重ねて、けれど罰には届かない。
ならばまた重ねよう。
重ねて重ねて、高く積み上げることとしよう。
気が触れた処刑人。
大義は空回りし、日々の仕事は罪へと成り果てた。
血染めの刃を振るう。
誰かに罪を認めてほしいという、致命的な矛盾を抱えて永遠に罪を重ねる。
こうしていつしか天を衝くほどに高く積まれた罪は、醜い塔となって魔獣を吐き出すようになったという。
そして人は、その塔を指して『罪科の塔』と呼ぶ。




