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五章プロローグ・『痛みの書庫』
許されないこと。
・物を盗ること。
・火を放つこと。
・外に出ること。
・明かりを消すこと。
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待ち人望みて幾星霜。
面影薄れて痛みが募る。
名残の場所すら護れぬ盲、無力を嘆いて痛みに喘ぐ。
ひたすらに、見えぬこの目が恨めしい。
盲目の闇に埋もれて、愛しい記憶が薄れていく。
書庫を荒らす盗人を取り逃してしまう。
約束の場所を焼く、忌々しい火を消すことさえ叶わない。
研ぎ澄まされた耳がもたらすしんとした孤独の中。
永い闇の内側はくまなく痛みで埋め尽くされた。
故にいつしか姿を変える。
誓いは呪縛に。
使命は自責に。
全てが絶望に。
女は異形に。
 




