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ロストキルレシオ  作者: 湿った座布団
四章・底のない呪い
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三十一話・二人の夜(2)

 



 アリスはずっと、仰向けに寝転がって空を見ていた。


 服が汚れるのは嫌いだが、なんだか疲れてしまってそうすることにしたのだ。

 でも喪服と違って真っ白のマフラーが汚れては困るので、それだけは外して胸の上に乗せていた。


「…………」


 そうしてずっと寝転がっている。

 するといつしか日が暮れて夜が近くなっていた。

 草の地面は案外心地よかったが、空が曇っているのでおもむきがない。

 星でも出ていれば雰囲気があったのだろうが。


「アリス」


 やがて声が聞こえた。

 アッシュの声だ。

 寝たまま振り向くと、薄暗い中を歩いてきていた。

 いつも通り陰惨な顔をしている。


「…………」


 彼は黙ってアリスの右に、ちょうど上から顔を覗き込むような形で正座した。

 何も言わず俯いている。

 だからアリスも無視していた。


「…………」


 ずっと黙っているので、『なにか用事ですか?』と問い詰めるような目でアッシュを見据えた。

 すると彼は、いつもよりさらに沈んだ顔でアリスを見る。

 暗くて虚ろな、墓穴の目でじっと見ていた。


「…………」


 まだ何も言わない。

 でもやがて手が動いた。

 おそるおそる、アリスの首に手を伸ばしている。

 待ってましたと思って、自分で頭を浮かせた。

 寝たまま動くことで、彼の膝に膝枕のように頭を乗せて微笑む。

 首輪を外しやすいようにするためだ。


「…………危ないから、動くな」


 彼は絞り出すような声で言って、小さなナイフで首輪の金具を外していく。

 でも長年つけているので、錆びている部分もあるようだった。

 なので動くと本当に危険だと思った。

 アリスはごきげんで、身じろぎもせずに待っている。

 アッシュは慎重で丁寧な手付きで、ゆっくりと首輪を外そうとしている。


 しかし。


「……っ」


 アリスは首輪の痛みを予感した。

 こうして積極的に外させようとしていることが、首輪を外してはならないという命令に反応したのかもしれない。

 それが分かったのか、アッシュが目を見開く。

 出会ってから一度も見たことがない、焦って怯えたような顔になっていた。

 こんなにはっきりとした感情を彼から読み取れたのは初めてのことだ。

 でももう手遅れで、アリスは首輪の痛みで一瞬だけ意識が飛ぶ。

 悲鳴が出たのが分かった。


「……やめて」


 そして、自分でも思ってもみなかったような情けない声でアッシュに言った。

 喉が震えて、痛みでどうしても涙が出る。

 ただもう二度と痛みを味わいたくないと思って、アッシュの手を強く押さえる。

 しかし彼は、かすれ切った声で答えた。


「いや、外す」


 ひと思いに断ち切ることはできない様子だった。

 首輪には……特にルーンを刻んである部分には、厳重に金属のカバーもついている。

 あとは、なによりつけているのがアリスだからだ。

 非力で弱い、人間の女の首を壊さないようにするのに必死なのだろう。


「…………」


 でも彼は、外すと言ったくせに手を止めていた。

 かすかに呼吸が乱れていて、とても作業を続けられそうな様子には見えない。


「魔術を使う」


 やがて、長々と考えたあと彼は言った。

 首を傾げると、『土』のルーンを刻んだ触媒のメダルを取り出した。

 それで、なるほどとアリスは納得する。

 これで脆くしたのなら、彼の怪力で問題なく引きちぎれるだろう。

 一方で、最初からそうしろよとも思った。


「『構造劣化チープ』」


 魔術が効果を発揮するが、それと同時に首輪の痛みを予感する。

 けれど今度はアッシュが間に合った。

 首輪を引きちぎって、一息にアリスの首から外してくれた。


「……っ」


 やはり息が乱れている。

 アリスの顔をじっと見つめて、深く安心したようにため息を吐いた。

 だからにやりと笑ってお礼を伝えてやる。

 少し声は弱々しくなったが、いつものように話せたはずだ。


「ありがとうございまーす……」


 とてもいい気分だった。

 首がすーすーするとアリスは思う。

 本当に晴れやかな、呪いでも解けたような気分だ。

 なのになぜか、急に涙が溢れてきた。

 あとからあとから出てきて止まらなくなる。


「あれ? あっ……なんで……」


 嗚咽を抑えきれなくなって、アリスは手で顔を覆って泣く。

 辛かったことや、嫌だったことがたくさん思い浮かんで、どうしても我慢できなかった。


「ひぐっ……うっ、うぅっ……」


 アッシュは何も言わず、そんな姿をじっと見ていた。

 でもやがて、アリスが泣き止んだ頃に小さな声で語りかけてくる。


「俺は……お前を、使ったことを……悪いとは思っていない」


 アリスは涙を拭きながらそれを聞いていた。

 彼はさらに続ける。


「少しも、後悔、してない……」


 発言はいつも通りだが、声があまりにも彼らしくない様子だった。

 いつもはなにがあっても、こんなに弱ったような声を出す人ではないのだ。

 けれど今は憔悴しょうすいしきっているようで、目の焦点すら合っていない。


「…………」


 なぜだろう、と考えてアリスは思い当たる。

 多分、彼にとってもこの首輪は苦しい呪いなのだ。

 だからなにか、とても悲しいことを思い出したのかもしれない。


 でも本当のところは分からない。

 アリスにはきっと、彼のことは永遠に分からないだろう。

 だって言わないから。

 思ってもいないことばかり彼は言葉にするから。

 だから誰にも、絶対に分からないのだ。


 それは今も変わらなくて。


「首輪を外したのは、もうお前の顔を見たくないからだ。お前は二度も、俺の背中を撃った。殺されたくないなら……消えろ」


 かすれた声でそんなことを言う。

 アリスはなんだか悲しくなって、深いため息を吐いた。

 もう本当に、彼に対しては不満ばかりだった。


 なぜ本当は甘い人間なのに悪人ぶるのか。

 なぜ普通にだってなれるはずなのに、狂ったようなことばかりしているのか。

 なぜ悪いことをしたと後悔していても、素直にきちんと謝らないのか。


 聞いてもきっと言わないから、もうアリスは最後の手段を使うことにした。

 喪服の手袋を外して、アッシュの手を握る。

 ちょうど彼も手袋を外していたから、右手の方を選んで握った。

 指の間に指を滑り込ませて、組み合わせるように手を握る。

 素肌がしっかりと触れているので、この状態で質問するともうアリスの力から逃げることはできない。


「私のこと殺すんですか?」


 彼は唐突に手を握られたことに驚いているようだったが、その問いには答えた。


「次、顔を見せたら殺す」

「ふーん……」


 初めて他人のことを知りたくて精神感応能力を使っている。

 なので簡単に答えは読み取れた。

 彼の心は殺さないと言っている。


 アリスは笑った。


「あの、私に悪いとか思わないんですか?」


 声は聞かない。

 どうせ馬鹿みたいなことしか言わないので聞く価値はない。

 心の方に集中すると、強い罪悪感が伝わってきた。

 でもそれだけではない。

 彼はとても悲しんでいた。

 本心では首輪を使いたくなかったのかもしれない。

 でも世界は本当にどうしようもなくて、アリスの力が必要だから使うしかなかったのだろうか。

 なにしろ、あの頃は勇者だっていなかったので。


「…………」


 などと考えながら、ぼんやりと空を見ている。

 アッシュは何も言わずアリスを見ていた。

 ただ疲れ切ったような顔をしていて、手を振り払うことすらできない様子だった。


 そろそろ次の質問を聞いてみることにする。


「そういえば、昔言ってた責任ってなんですか?」


 ロデーヌで、支門の前でアリスが彼の背中を撃ち抜いた時の話だ。

 彼はアリスをグレンデルの攻撃から庇ったあと、責任がどうとか言っていた。

 だから聞いたが、その質問は冷たく拒否された。

 彼は少しだけ落ち着きを取り戻し始めている。


「お前になぜ、そんなことを教える必要が?」


 はいはい、と思いながら心を探った。

 するとまたすぐに読み取れた。

 彼は決めていたのだ。

 首輪を使う限り、いつかアリスを普通の生活に帰すのが自分の責任であるのだと。

 だから、あんなところで死なせるわけにはいかないから、彼はアリスを庇ったのだ。


「…………」


 それから、いくつかの質問を重ねていく。

 彼は一つもまともに答えなかったが、心を勝手に読み取っていく。

 すると段々、彼のことが分かってきた。


 たとえばアリスに冷たくするのは、自分が関わってはいけないと思っていたからだ。

 首輪の奴隷は、首輪を使っている人間の、ささいな苛立ち一つで死んだ方がマシな思いをさせられることだってある。

 いつだって顔色を伺わなくてはならない。

 とても対等な立場ではないから、彼は決してアリスに近寄ろうとしなかった。

 アリスが首輪のことを少しでも意識せずに過ごせるように。


「……馬鹿ですね、あなたって」


 呟いた。

 知らなかったのだ。

 一緒にいる間、ずっとびくびくと怯えながらアリスのことを気にしていたなんて。

 こうすると嫌なのではないだろうか、とか、アリスが楽しそうにしている時は顔を見せない方がいいのではないか、とか、自分のことを嫌うのは当然だろう、なんて。

 会うたびにそんなことで頭をいっぱいにしてアリスを避けていたし、どんな嫌がらせをされても決して怒らなかった。


 深いため息を吐いて、最後の質問を投げかける。


「あなたって、なんで謝らないんですか?」


 その言葉には何も答えが返ってこなかった。

 でも構わず心を読んだ。

 すると、小さな声が聞こえた気がした。



 許してほしいだなんて、そんな残酷なことは、言えない。



 彼はそんなふうに思っていた。

 なぜ謝らないのかと聞かれた瞬間、その行為への強い嫌悪感が伝わってきた。

 アリスは、想像もしなかった答えに呆然とする。


「…………」


 なぜ謝ることが残酷なのか。

 何があったらそんな考えにたどり着くのか。

 意味が分からなくて目を見開いていると、そこでアッシュが手を振り払った。

 膝枕もやめて、立ち上がって背を向ける。


「俺はもう行く。いいか、二度と顔を見せるな」


 なんて言いながら、街の方に帰る気配がない。

 あらぬ方向に歩いて行っている。

 それで、アリスはすぐに察した。

 きっと彼は、この足で三の魔王のもとへ行くつもりだと。

 つまり死のうとしているのだと。


「…………」


 考えるより先に身を起こそうとする。

 胸の上に乗せていたマフラーが落ちた。

 でも構わず立とうとした時、地面に手をついて気がつく。

 アリスのすぐそばにナイフが置いてあるのだ。

 首輪の金具を外すのに使っていたものだ。

 多分能力で造ったものだろうが、わざわざ消さずに残している。


 そして、こんなことをする理由は一つだった。


「…………ああ、もう……馬鹿すぎる」


 小さな声で言いながら、アリスはついに涙をこぼした。

 彼は、刺せと言っているのだ。

 自分を刺していいと思っているのだ。


 多分、本当は三の魔王と心中でもしたいはずだ。

 けれど今は勇者がいて、勇者なら三の魔王もきっと倒せるから、だから刺されてもいいのだろう。

 アリスにはその権利があると考えている。


 そしてやっと分かった。

 つまり、彼はアリスが復讐をすべきだと思っている。

 だから謝らないのだ。

 彼自身はきっと、憎しみさえ取り上げられてしまったから、それが悲しくて仕方がなかったから、誰にも謝れなくなってしまったのだ。


「馬鹿。この、馬鹿……」


 口の中で繰り返しながら、落ちていたナイフを握って立つ。

 彼はやはり、無防備な背中を向けて歩いていた。

 アリスは大股で歩み寄って、歩き去る背を蹴りつけた。

 それで振り向かせて、喉元にナイフを突きつける。


「謝りなさいよ」


 アリスは低い声で言った。

 泣いているのもきっとバレているだろう。

 彼は困惑した様子で、突きつけられたナイフを見る。


「謝らない」


 平坦な声で返す。

 アリスはナイフを彼の首に食いませて、さらに言葉を重ねた。


「許してやるから……謝れって言ってるんですけど」


 きつく睨んでそんな言葉を叩きつけた。

 アッシュは少しだけ驚いたようだが、すぐに元の疲れ切ったような表情に戻った。


「知るか。刺すならさっさと刺せよ」


 当然のように言われる。

 分かってくれないのが悔しくて、手が震えてナイフを取り落とす。

 歯を食いしばって俯いた。


「…………」


 彼にはきっと、本当に分からないのだ。

 自分はアリスに取り返しのつかないことをしたから、憎まれるしかないと思いこんでいるのだ。

 それ以外の感情が生まれるなんて思いもしない。

 今伝えたことも、きっと何も理解できていないだろう。


 それで、彼はもう壊れてしまっているのだとよく理解できた。

 ……いや、そんなことは以前から知っていたのだ。

 しかしこれまでは、ただ魔獣を殺すことに取り憑かれただけだと思っていた。

 でも違う。


 彼は、本質的には、自分を責め続けるだけの機械なのだ。

 そういう狂い方をしていたのだ。


 なにもかも自分が悪いから、本心でそう信じているから、問題が起こるとすぐに自分を悪者にする。

 世の中が狂っているのも自分の力不足だと考えて、ずっと魔獣を殺して眠りさえしない。

 アリスはもう許しているのに、許してもらえるはずがないと思っているから、そんなことを認識することさえできなかった。


 思っていたよりずっと深く、彼は心を病んでしまっている。


「もう、分かったから……」


 アリスは力が抜けて、アッシュの前で崩れ落ちた。

 別に、そんなにも憎んではいないのに、許されることなどできないと思いこんでいるのが哀れだった。


 たとえ許しを得られたとしても、彼はそれを理解できない。

 永遠に自分を責めて苦しみ続けるだけの人間なのだ。

 どうしてこんなにも酷いことになるのか、アリスには想像すらできなかった。


『…………それは、違う。意味はある。どんなに小さい、下らない仕事でも……俺は死ぬまで続ける』


 ふと思い出したのは、王都で彼が目覚めたあとに言った言葉だ。

 もう意味がないから戦うのをやめろと、呆れながら伝えたことへの返事である。

 あの時は、あまりに異常な執念を感じて怖かった。

 そんなに魔獣を殺すのが好きなのかと思った。

 でも、ようやく本当の意味を思い知った。


 ただ、彼にはそれしかなかったのだ。

 魔獣を殺し続けることの他に、拠り所が残されていなかったのだ。

 世界を救えない自分を責めて、いろんなことを少しずつ諦めて、せめて意味があると信じながら、魔獣を殺すことにすがり続けてきたのだろう。


「…………」


 さらにそこで、また一つ悟る。

 そもそも彼が自分を責めるのは、なにかを救いたいと思っているからこそであると。

 それが少しも叶わなかったから、彼はこんなにも壊れてしまった。


「謝るから……わ、私も、謝るから…………」


 泣きながら謝った。

 これまで彼にしてきたことが思い浮かんだからだ。

 今まで何度もひどいことを言って、試すようなことを続けてきていた。


 たとえばロスタリアの塔での掃討戦では、人が死んだのを見つけて、嬉々として彼に報告したりした。

 同じようなことを別の戦場で言ったこともあった。

 でも一番悲しかったのは、ロデーヌでのことだった。


 せめてもの慰めとして、グレンデルを街の英雄にして立ち去る時……彼はひたすらに自分を責めていた。

 あの時は、こんな奴らのことを気に病むのは馬鹿だとしか思わなかった。

 なぜ彼が自分を責めるのか、という理由まで察することができなかった。

 けれど、あの時もう少しだけ考えていれば気づけたはずだった。


 裏切られて投獄された時、一体どんな気持ちでいたのだろうか。

 彼は狭い牢獄に閉じ込められてしまっていて。

 その間もずっと人が死んでいて。

 どんなに歯がゆい気持ちで過ごしていただろう。

 きっと何度も自分を責めて、苦しんで、挙げ句の果てに街で虐殺が起こったのをどんな気持ちで見たのだろう。

 本当なら、もう死にたいくらい苦しかったはずだ。

 彼は病気の殺戮者ではなく、絶望や罪にまみれて必死にあがいているだけの、普通の人間だったのだから。


 今なら分かる。

 彼は本当に、あの街を救いたかったのだろう。

 それが一番の願いだったのだ。

 だから街に帰りもせず、食事すらとらず、必死に魔獣を殺し続けていた。

 なのにそれを全て台無しにしてしまった。

 彼をなじったレイスや、遠巻きにしていた街の人間よりも……ずっと酷いことをしたのが自分だということに、アリスは今日まで気がついていなかった。


「ごめんなさい……」


 してはならなかったのだ。

 彼のような人間に、何かを救いたくて壊れてしまった人に、あんなことをしてはいけなかった。


 どんなに酷いことをしたのかを今さら理解して、やりきれなくなってアリスは泣いた。

 ロデーヌの頃は首輪をつけられていて、高位の神官に言われてはどうしようもなかったという側面はある。

 でもアリスはへらへら笑って、深く考えずにそれをしていた。

 少なくとも、牢屋にまで行って馬鹿にするようなことはすべきではなかった。


 そして、ここまでされても文句一つ言わなかったのは、決して気にしていなかったからではない。


 アリスには、何をされても文句を言わないと決めていただけだ。

 首輪を使う以上、どんなことをされようが正当な報復でしかないと思いこんでいたから。

 だから、苦しくても我慢していただけだったのだ。


 この前だって、彼の反応を見ようとして、彼の家族の手紙を焚き火に投げ込むような演技をした。

 これは間違いなく、自分の意思でしたことである。

 でもあれも……少しくらい人間らしい反応をしてみてほしくて、深く考えずにやってしまったことだった。

 彼は黙ったまま、手紙を燃やすのを止めようともしなかったが。

 ただ少し目を伏せて、次の手紙を燃やそうとするのをじっと見ていた。

 それが、自分の罰だと思っていたはずだから。


「ごめんなさい…………」


 また謝って泣いた。

 自覚もなくやってきたことを謝った。

 アッシュを本当に許したいのなら、アリスだって自分がしたことに向き合う必要があった。

 必死にアリスに償いをしようとしていた彼を、何も知らずに笑って痛めつけてきたことを謝らなければならなかった。


「…………」


 けれど彼は、ひたすらに困惑したような顔でじっと見ているだけだ。

 それがなんだか悲しくて、アリスはまた声を上げて泣いた。

 彼にはもう、こうして泣いたり謝ったりすることさえできないのだと分かっていたから。




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