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ロストキルレシオ  作者: 湿った座布団
たとえ灰になっても
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五十八話・再戦(3)

 


 怒り狂ったディティスは、俺に対して明確な殺意を向けている。

 脇目もふらず駆け寄って、冷気を纏う大鉈を高く振り上げた。

 そして何度も何度も振り回す。

 俺は紙一重で命を拾っていたものの、人ならざる威力の刃は地を揺らし森の木々をなぎ倒す。

 間合いに捕捉されれば、その時点で殺されるとはっきりわかった。


「おい、なんとか逃げろ!」


 クリフが声を上げ、援護の『針』を使ってくれた。

 しかし鎧が防いでものともしていない。

 氷の刃が狂ったように何度も振り下ろされる。

 爆ぜるような勢いで叩きつけられる刃から身を逃しながら、このままでは本当に殺されると思った。

 敵の刃をはね返すことも、見て避けることも俺にはできない。


 木々を盾にして走って逃げ回ったが、それでもじわじわ距離を詰められていく。

 クリフはクリフで、一人で群れに追いかけられて窮地におちいりつつあった。

 俺の作戦は……指揮は、完全に失敗した。


「クソ!」


 悪態を吐きながら、俺はどうにか頭を働かせる。

 このままだと本当に殺されてしまう。

 死を鼻先に迎え、俺は全身に鳥肌が立って息が苦しくなった。

 酸欠の頭がくらくらして手が震え始める。


 思考が真っ白になって何も策は考えつかなかったが、俺は一つ思い出して荷物のポーチを漁る。

 するとすぐに目的のものが見つかった。


「あった……!」


 持ってきていた筆記具の、小さな黒のインク瓶だ。

 今日は戦いで役に立つと思って荷物に入れておいた。

 俺は右手で瓶を握ろうとする。

 手の震えで二度ほど掴みそこねたが、なんとか握ってディティスの顔に投げつける。


「――――――!!!」


 命中し、瓶の中身が顔に撒き散らされた。

 同時に敵が叫び声を上げる。

 大鉈を取り落として追跡が止まった。


「よしっ!」


 インクが目に入れば激痛に苛まれる。

 目への影響は種類によるが、アレは失明の恐れもあるものだ。

 もちろん魔獣ではどうなるか知らない。

 でも痛みはありそうだし、少なくとも視界は潰れたはずだ。

 それに、あいつは氷の魔獣でもある。

 付着したインクは凍って視界を邪魔するだろう。


 そう考えて、今のうちにと逃げ始める。

 しかし五秒もしない内にディティスの叫びが止まった。

 まさかと思って振り向けば、すでに武器を握り直していた。


「っ……」


 声にならない声が出た。

 なぜ、と考えるがわからない。

 いちいち理解しようとしていたら死ぬ。

 インクを無効化したという事実だけはなんとか飲み込む。


 勘で飛びのいて大鉈の一撃をかわした。

 だが返す刃は避けられない。

 でもかろうじて予備動作は見えたので、両手で持った剣を合わせて受け流す。

 しかし、完全に流すには俺の技術が足りなかった。


「うっ……」


 殺しきれない衝撃で倒れ込む。

 目がくらむほどの勢いで地に叩きつけられた。

 慌てて剣を握ろうとするが、右の手首から先が完全に動かなくなっていることに気づく。

 指に少し力を込めるだけで激痛が走り、力が抜けて脂汗がにじむ。


 立ち上がることすらできない俺の目の前で、ディティスがゆっくりと刃を振り上げた。


「…………」


 終わりだと思った。

 きっと殺される時は泣き叫ぶと思っていたが、俺は声を上げることすらできなかった。

 なんとか左手に剣を握るが、もうそれ以上は動けない。


 代わりに、まるで水底に引きずり込まれたように呼吸が苦しくなる。

 そのままどこか現実感に欠けた光景の中で死を待っていると、俺は横から飛びついてきた誰かによって大鉈の一撃から逃された。


「……ニーナ」


 詰まっていた息を吐き出すように、俺の喉から震える声が小さく漏れ出た。

 助けてくれたのはニーナだった。

 強化を入れたのか、彼女は俺を抱いてかなりの速さで走っている。


 そしてディティスから逃げ続けるのだが、俺は少しの間完全に思考を停止させていた。

 何も考えることができず、ニーナに左手でしがみついていた。

 まだ死の恐怖が喉元から去っていなかったのだ。


 しかしなんとか心を落ち着かせ、周囲の状況の把握につとめることにする。

 かなり視界が揺れるもののなんとか周りを見回せた。

 すると俺たちを追いかけているのがディティスだけであるのがわかった。


 もちろん他も追ってきてはいる。

 その証拠に、少し遠くには三体ほどのオークの死体が転がっていた。

 追ってきたが死んだだけだ。

 三つの死体はすべてが四肢のいずれかを切断されていた。

 さらに位置の近さからしてまとめて殺されたのであろうことが推測できる。

 ……誰が、どうやって殺した?


 一瞬だけ疑問に思うが、ひとまずそれは忘れることにする。

 クリフの無事を確認するほうが大事だ。


 また目を凝らすと、木々の隙間に彼の姿を見つけた。

 猛追もうついする魔獣に追い立てられ、反撃すらままならない様子だった。

 だがこちらの様子に気づいたのか、目を見てハンドサインを送ってくる。

 指をさした地点で合流しようという合図だろう。

 逃走に専念するニーナは気づいていないので、俺はそのむねを伝えた。


「……ニーナ。クリフと合流しよう」


 答えは返ってこなかった。

 集中しているのだろう。

 荒い息を吐きながら、ニーナは黙って走っていた。

 だから俺はもう一度語りかける。


「クリフと合流する。俺が降りて先導せんどうする」

「…………」


 やはり答えは返ってこないと思ったが、ひと呼吸おいて彼女は答えた。

 耳に届いてはいたのだろうが、集中するあまり理解するのに時間がかかったのかもしれない。


「はい」


 答えて、ニーナは俺を地におろした。

 今はディティスからは十分に距離を離せている。

 距離を稼げた要因は強化した足の速さだけでない。

 木やらの障害物の避け方が、敵よりはるかに巧みだったことが大きい。

 おかげで俺は安全に体勢を整えることができた。


「助けてくれてありがとう」


 お礼を言うと小さくうなずいた。

 しかし追いかけてくるディティスを見つめていて、俺に視線は向けなかった。

 その横顔からは血の気が引き、肩で息をしながら遠い敵を凝視ぎょうししている。

 見開いた目は瞳孔どうこうが開ききっていて、彼女の恐怖を色濃く映していた。


「……ニーナ。行こう」


 俺が言うともう一度うなずき、どこか固い様子で動き始める。

 顔色も青くなって、明らかに精神的に追い込まれていた。

 殺されかけた俺よりも打ちひしがれているのだ。

 一応移動はしてくれたが、様子が心配だったので声をかける。


「大丈夫?」


 こくりと、小さく頷いてニーナは俺と一緒に移動を続ける。

 少し思い詰めているように見えるが、もう怯えた表情は消えていた。

 前を向いて進み始める。


「…………」


 目的地はクリフが示した合流地点だが、ディティスに捕まらないよう大きく迂回うかいして進まなければならない。

 なるべく細い道を選んで進んでいると、すぐ先にクリフが見えた。

 だが彼は魔獣に追われて遅れているようだった。


「……なんとかしないと」


 俺はつぶやく。

 背後にはディティスが迫っていて、目の前には魔獣の群れに襲われる仲間がいる。

 今はリリアナもウォルターもいない。

 だから俺がなんとかしなければ。


 そう思って考えるが、焦りで思考が途切れてうまい作戦を考えつかない。

 自分が情けなくて歯を食いしばると、唐突にニーナが速度を上げた。

 見たことがないくらい速く動いて、魔獣の群れの前におどり出る。


「ニーナ……お前っ……」


 クリフが驚いたような声を上げた。

 そこから一瞬だった。

 先頭のオークが二体死んだ。


 まず武器を向けたオークの腕がニーナの山刀に切断された。

 すかさずもう片方が攻撃を仕掛けるが、彼女はそれを後方への跳躍で回避する。

 同時に、跳んだ先にある木の幹を蹴って再度接近した。

 そして腕を失った敵に飛びついて首をへし折り、そのままもう一体のもとに跳んですれ違いざまの斬撃を見舞う。


 山刀の一閃は強靭な喉を深々と切り裂いた。

 しかしまだ即死には至らない。

 喉から血を噴きながらも動こうとする敵の膝を、追い打ちの投げナイフが正確に貫いた。

 ぐらりと崩れ落ちたオークは、もはや失血死を待つばかりだろう。


「…………」


 ほんの数秒の殺害を前に、俺は思わず言葉を失う。

 まさか、ここまでの離れ業を見せるとは。

 驚く俺をよそに戦闘はさらに続く。

 ニーナは襲い来る魔獣たちを次々に仕留めていった。


 飛びかかるハーピィの心臓と喉へ、投げナイフを正確に命中させた。

 次に這い寄るヒュドラの頭を一瞬の交錯こうさくで全て落とす。

 続けて六体のオークが囲もうとするが、ニーナは再びの跳躍で身をかわした。


 それから繰り出すのは、先ほどと同じ木々を足場にした変則跳躍へんそくちょうやくの動きだった。

 機敏な動きで縦横無尽じゅうおうむじんに跳び回り、敵のことごとくを翻弄ほんろうし続ける。

 さらに跳びながら振るわれる刃によって、跳躍のたびに切断されるオークの手足が宙を舞う。

 そしてやっつ跳ぶ頃、彼女は傷一つ負わずに六体ものオークを惨殺死体に変えていた。


「…………」


 圧倒的な速さで敵を殲滅し、ニーナは音もなく血溜まりのそばに降り立つ。

 それから山刀の血液を軽く払い、次の獲物を見定めるように低く構えた。


「もういい。ニーナ、行くぞ」


 しかし彼女の腕をクリフが掴む。

 逃げるだけの余裕は十分にできたし、これ以上やってもディティスに追いつかれてしまうだけだからだろう。


 彼女の強さは底が知れないが、中位魔獣に挑むならリリアナたちがいたほうがいい。

 それに、今のニーナは精神が不安定に見える。

 この状態で戦わせるべきではない。


「……はい」


 答えた彼女はどこか虚ろな表情を浮かべていた。

 さきほどからかなり上の空に見える。

 しかし決して戦いに集中していないわけではなく、むしろこれまでになく動きが研ぎ澄まされていた。

 彼女になにがあったのだろう。


 じっと見つめて考えていると、クリフが少し焦った声で言葉を続けた。


「逃げるぞ。もう足止めもいいだろ。戻ってリリアナと合流する」

「うん……」


 指揮官は俺だと言われていたが、もはや人に指示を出すような自信がなかった。

 場の流れも手伝って、俺はクリフの指揮に入り離脱することにする。


「二人とも……ごめん」


 俺は山を下りながら謝った。

 相変わらずディティスが追いかけてきているし、放たれた魔法で木々が粉々になる音もする。

 そんな場合ではないのだが、どうしても謝らずにはいられなかった。


「本当にごめん……」


 俺の指揮は……ひどい失敗だった。

 ディティスに陽動が通じると信じ込んで、みんなの命を危険に晒した。

 いくら謝っても足りないくらいだった。


「謝らなくていい。お前がいなきゃ……俺なんてもともと生きてねぇんだ」


 背を向けたままクリフが答えた。

 ニーナは何も言わず走っていた。

 無視しているわけではなく、他に考えごとをしているように見えた。


 そしてまた少しの間進むと、ちょうどクランツくんとリリアナがいる場所にたどりついた。


「お! 今呼びに行こうと思ってたんだよ」


 クランツくんが場違いに陽気な声で俺たちに呼びかける。

 それがのんきに見えて腹が立ったのか、クリフが青筋を立てて声を低くする。

 八つ当たりだ。


「ゆっくりできたか? クソ野郎」

「まぁ怒んなよ。さっさと行こうぜ」


 行こうぜ、か。

 その言葉でやはり彼らは逃走手段を用意していたのだと理解する。


 話を聞くべくリリアナに視線を向けると、彼女は胸を張ってこほんと小さく咳払いをした。


「手を出して」


 謎の指示だがここは従おう。

 俺は剣を収めて左手を差し出す。

 クリフとニーナも同じようにした。


 するとリリアナは俺たちの手に謎の棒を配る。

 見ればそれは、訓練用の木剣をへし折って形を整えたもののようだった。

 長さはだいたい四十センチくらいか。


「両手で持って。途中で離さないようにね。……離したら死ぬかも」

「……途中? 死ぬ、かも?」


 ニーナが不思議そうに問い返す。

 するとリリアナはちょっと笑ったあとクランツくんにしがみつく。

 比喩でもなんでもなく、ちいさな子が親にしがみつくように抱きついたのだ。


 片手で、足も巻きつけて、必死に。


「見てて」


 そう言い残して、二人は近くの木に歩み寄る。

 何をするのかと見ていたら、その幹の高い位置からなにか……ロープが伸びているのに気がついた。

 長さはだいたい八メートルくらいだろうか。

 木の幹に巻かれたロープは、また別の木の幹へと伸びている。

 しかもそれが一本ではない。

 いくつものロープは、さながら木と木をつなぐ道のように張り巡らされていた。


 クランツくんはそのロープに棒を引っ掛けて、ジップラインのように使って降りていく。

 リリアナは必死にしがみつきながら滑っていた。

 どれだけ落ちたくないのかものすごく必死だった。


「…………?」


 俺はその様子に思わず疑問を抱く。

 やることはわかったが、数はあっても一つ一つのロープがそこまで長くない。

 これでは大した距離は稼げない。

 徒歩よりは早く動けるだろうが、どんな意図があってあのまま逃げずにロープの道を張り巡らせたのかはわからなかった。


 しかし、俺は何も聞かずジップラインもどきを使うことにする。

 理由は結果を見ればわかるだろうと思った。


「ニーナ……いや、クリフ。悪いけど俺、右手が動かないから掴まってもいい?」

「好きにしろ」

「私を呼びましたよね?」


 ニーナがじっと俺を見つめてきた。

 確かに呼びかけたが、彼女は背が小さいのでしがみつきにくいと思ったのだ。

 しかしそこを説明しても角が立つ気がしたので、俺は何も言わず首を横に振った。


「…………」


 ともかくクリフからは了承が得られたので、さっきもらった棒を捨てる。

 それからロープのそばまで行って、クリフにしがみついた。

 先に行った二人はもうずいぶん下まで行っているので、俺たちも急がなければならない。


「落ちんなよ……」


 クリフが言って滑り始める。

 ちゃんとしたジップラインではないからかなり揺れるので、気づけば俺はリリアナのように足まで巻きつけてしがみついていた。

 そして何度かロープ伝いに移動したあと、俺はようやくちゃんと地に足をつける。


「ありがとう」

「ああ」


 棒を握って疲れたのか、軽く手を振りながらクリフが答える。

 そんな短いやり取りのあと、ニーナも合流して山の上を見上げる。

 すでに魔獣はジップラインの開始地点にまで来ていた。

 急いで逃げないとすぐに追いつかれる。


「行こう、リリアナ」


 慌てて呼びかけるとあいつはうなずいた。

 そしてみんなで走り始めるが、不意に背後で爆発のような音が聞こえてきた。

 次は火の中位魔獣、メダクでも現れたのか……そう思って俺は反射的に振り向く。


 すると目に入ったのは予想外の光景だった。 

 二度目の爆音と共に、何もない場所が爆発する。

 迸る炎と衝撃によっていくらかの魔獣が吹き飛ばされる。

 それを見て、考えて俺は気がついた。


 あれは罠だ。

 多分、仕掛けには魔道具の矢でも使ったのだろう。

 そんな俺の考えを裏付けるように、少し前で走っていたリリアナが得意げに解説してみせる。


「私とクランツで仕掛けといたの。爆発と……あと踏ませて足を壊す罠をいくつか」


 つまり、あのロープの道は逃げるためではなかったということだ。

 あれは俺たちが罠を踏まずに移動するためのものだったのだ。

 罠の上をロープ伝いに通れば、それを追って敵は仕掛けに突っ込むことになる。

 とはいえ、これで敵が全て死ぬことはないだろう。

 でも少なくとも足を傷つけることができれば、追跡は不可能になるという寸法だ。


 ということは、リリアナの狙いはやはりディティスだろう。

 群れの魔獣の足を破壊し、その上で俺たちを追わせ、完全にやつを孤立させるのが狙いだったのだ。


「……なるほど。じゃあ、こっからだな」


 クリフもそれを理解したようだ。

 にやりと不敵に笑ってみせる。

 それにリリアナもにっこりと笑みを返した。


「そういうこと。わかったならもう少し進もうね」


 言葉通りまたしばらく全員で走る。

 すると山の出口が見えてきた。

 もうすぐ昨日逃げ帰った山あいの道に戻る。


「敵は来てる?」


 道に出て、リリアナが立ち止まった。

 そして敵はいるのか俺たちに尋ねる。

 だから俺も振り向いて敵を探すが、多分自分でさっさと見つけるだろう。


「お、来てるね」


 予想通り、最初に気づいたのはあいつだった。

 少し遅れて俺もディティスの姿を見つけ出す。

 だがリリアナは目を凝らすようにまぶたを細め、他の敵の数も探っていたようだ。


「他は……いないか」


 確認を済ませた彼女がつぶやく。

 目論見もくろみ通り、敵の群れは追跡が不可能な状態に陥ったらしい。

 ここから俺たちがさらに逃げれば、群れをまるごと置き去りにできるだろう。


「じゃあまた逃げよっか。ディティスに追いつかれるまでは止まらないよ。このまま逃げ切ってもいいしね」


 冗談めかして最後の言葉を付け足して、あいつはまた走り出した。

 とはいえ速度は遅いし、顔をしかめてもいる。

 だが片腕を失っているにも関わらず、彼女の足取りはそれなりにしっかりとしていた。


 そしてしばらくの前進を経た頃、ついに木々を突き破ってディティスが現れた。

 俺は背後を見ていなかったが、大きな音をさせながら出てきたので振り向かずともよくわかった。


「停止。転回。次の作戦を始める」


 真面目な声でリリアナが指示を出す。

 俺たちは即座に止まって、指示に従い背後に振り向いた。

 すると濃い殺気を纏って駆けてくるディティスの姿が目に入った。


「…………」


 その姿はやはり恐ろしかったが、もう昨日のような醜態しゅうたいは晒さない。

 俺たちも怯えっぱなしで終わらない。

 ここで一矢報いてみせる。


 同じ気持ちなのか、リリアナが杖を構えながら冷静に言葉を口にした。


「勝てるよ。あいつ……やっとひとりになった」


 もうヒギリも取り巻きの群れもいない。

 今度はこちらがあいつを追い込む番だ。

 たった一体で攻め込んでくるディティスを、俺たちは仲間と迎え撃つ。


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