表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶  作者: 久遠正吾
1/1

時雨

時雨月 今日この頃。

机には行き先の無い手紙が一通残っていた。

携帯には君からの別れ話の一通のメール。


追憶の風 頬には寒くて痛い疾風。

しとしと 暗い雲から降るのは時雨。

重たい瞼から流れるのは

温かい(あめ)


偲んでるのはいつも君。

まだ愛してるよ。



ちょうど今から二年前

僕には最愛の人が居た。


出会ったのもちょうど

この季節。

君の手を取って

君と一緒に道を歩み始めた。


あの幸せ あの温もり

あの笑顔 あの仕草 


いつも隣にあった幸せ

いつもの当たり前の幸せ


見失っていた…


あんなに温かかったのに

今更…ごめん。


ただそれしか言えなかった。


ねぇ…麗奈。


今幸せでいますか?

笑顔でいますか?


ふと脳裏に浮かんだ

それと同時に一気に映し出された。

純白のキャンバスに

隅々まで色付けられて

白が無くなるぐらいに。


僕は思い出という苦しみの中で

独り善がり 振り返ってみた。







ちょうど雨が降っていた

秋の暮れ頃

夕焼けが霞んで見えた。

天気雨だろう。

少しすれば止む そう思い俺は仕事の事を考えていた。


そうは言ってもフリーターだった。

次はなんのバイトをと考えていたんだ。

路上ライブの帰り道。


雨宿りしてるこの店。

もう廃墟して今じゃ噂のお化けが出るとか…

そんな話が挙がっていた。馬鹿馬鹿しぃ。


と、空に薄らと虹が出たのが目にとまった

「雨止んだなぁ〜そろそろ帰るか」


そして振り向きざまに

雨宿りの店をあとにした。振り向きざまに


「ドンッ」


「きゃっ!!」

「痛っ!!」


雨宿りでせっかく濡れなかったのに

びしょびしょになったズボン

しかもお尻の部分だけ。


「ったたっ」

すいませんと俺から言った

「こちらこそすいませ…ん!?」


合わせ鏡のみたいに二人は同じ驚愕の顔で

「アッ」って驚き合っていた。

「麗奈じゃん!!」

目の前の女性は高校時代の親友だった。

まぁ親友が女性って…。


「亮ちんだぁ!」

と少しにやけた顔で懐かしそうに宥めてくる。


雨が止んで風が冷たい。

もうすぐ冬がやってくる。高3終盤に言えなかった

言葉。

「好き」

そんな事が心の中で繰り返されてなんだかドキドキしていた。 


「亮ちん相変わらずまだギターしていたんだね」


「ん?あぁ…もう弾けるもん」


高校の時、麗奈が聞いてみたいというから

何でか始めたギター。

全然弾けなかった。


約束の曲…卒業までに必ず自作聞かせてやる!!。


そう言っていたのに

結局果たせなかった。


麗奈がその約束を凄く期待していてくれたの解ったのは大学に入ってから

友達から聞かされたのだ。

「なぁ麗奈、あの約束覚えているかい?」


「うん!もちろんだよ。」

麗奈は笑顔でそう答えた。

「なら今果たせる。時間は過ぎちゃったけど」

聞かせたい。刹那に思った。


「本当に!?ありがとう!」無邪気な子供みたいに麗奈は喜んでくれた。


しばらくしてから

俺の家に来る事になった。

ここからそんな時間もかからない。


………。

一つだけミスった

部屋の掃除してなかった。

こんな事ならすれば良かったと 今頃に思う。

普段はしてるのに今日に限って朝忙しくて出来なかったのである。


「麗奈…本当に俺んち入るの?(笑」


「うん!楽しみ」

麗奈も笑っていた


俺は苦笑。


「…まぁ汚いのは気にしないでな」


「解ってるよ(笑 

亮ちんの部屋汚そうだもん(笑」


「普段は綺麗だもん(苦笑」

久々に話すのに緊張はなかった。

麗奈の表示も高校の時のままの笑顔だ。


なんか安心した。

好きだからからな?

一緒に居ると落ち着くのである。


「着いたよ」

とアパートに指差す。


「ここなんだ!

私よく朝通るよ!」


「へっ?なんで?」

拍子抜けの俺は麗奈に振り向いていた。


「専門学校県外なんだ。電車賃安いし、私にあった学校だし、駅から近いの」


「あぁ…そうだったんだ。なんか初めて知ったよ。」

「ねぇ、早く家入ろうよぉ」麗奈は少し寒そうに言った。


「おっ。そうだね。…見たら引くよ?(苦笑」


「大丈夫!私の部屋も少し汚いから(笑」


「なんじゃそりゃ(笑」


「あはは」


玄関の前盛り上がる二人

なんだか幸せな気持ちで、久々に笑えた。


ガチャ!


「…っ!!」

驚いた。


「どうしたの?」


「鍵したはずなのに…空いてる…。」

まるで死人を見たような真顔で麗奈を見た。


「えっ」

麗奈も驚いていた。


恐る恐る二人は

扉を開けてみた。


この先に誰か居るのか?

泥棒?


「おかえり!遅いじゃないの!」


「うん?」


「うん?じゃないの!今日来るって言ったでしょ!」


と、俺たちの目の前に立っていたのは…

紛れもない俺の母親だった。


「…あぁね!今思い出した(笑」


「クスっ(笑。相変わらず、亮ちんらしいね(笑)」 


「あらっ!亮ぉ、彼女と一緒だなんてぇ」


「ちっ違うよ!高校の時の友達だよ!」

焦って誤解を解いた。


麗奈の顔が赤かった。

照れていたのだ。

初めて見る表情なだけに

可愛かった。

なぜか俺も照れていた。


「じゃあお母さん帰るね。部屋は掃除しておいたわよ」


気を効かせるように母は家を後にしていった。


「なんか…ごめんな。」


「ううん。大丈夫!(笑」

相変わらず笑顔の麗奈


そうして家にあがった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ