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権力争い

「マロウニ、うんこうんこ」

ネーベがお腹一杯になって気持ちよく出したのに気がついてわざとマロウニにふる。

「自分ですれば良いだろう、何でこっちに」

そう言うとソフィアは何故かマロウニを気に入ったらしく嬉しそうに足をばたつかせてマロウニに視線を送っている。

「ほら、パパだよソフィアもわかってるんだねちょう嬉しそう」

「そう言うことを言うとそう思うじゃないか」

きつく返すとソフィアは驚き泣きそうになるのをネーベは嬉しそうに、

「はいパパ」

そう言うとマロウニに抱かせてこちらに来て馭者台の横に座った。

「あんまり困らすと後で小言になるよネーベ」

「大丈夫そんな余裕パパにはないから、顔はひきつってるけど口許はにやけてるし」

街道を馬車で進んでいるとクルミ病により亡くなったのか倒れている人々がいるがさすがに多すぎるので領主に任せると言う事で先を急ぐと、

「アポロニア、少し先に盗賊かな」

後半日ぐらいで次の村だろうという距離でホルスが馬車を止める様に言った。



「わかってるよ、後ろから近づくからね」

私のシルフであるベーネミュンデが心配そうな顔で私に盗賊の方向を指差す。

「人数は偵察が3人で本隊が12人か少ないけど病気の相手なら十分ということか」

リデリオと共に偵察を先ずはということで先行しており木を飛んで移動しながら盗賊の後ろ上方に回り込むとシルフに安らぎを連中にお願いをする。

「ベーネミュンデ、彼らに心の安息を与えてくれないかな」

そう言うと頷いて飛んでいく、私とリデリオは万一のために弓矢を構えた。


ベーネミュンデは盗賊の近くまで行くと歌い始めると直ぐに眠りにつく、リデリオを頷きさらにその後方にいる盗賊にも同じ様に歌で眠らせる。

「なんだてめえ、いきなり現れて」

中には眠らない者もおり、その弊害は歌う者が見えてしまうので私とリデリオは直ぐに矢を放ち倒した。

「危なかったね、うんうんありがとう」

ベーネミュンデは少しだけ落胆しながらも私の肩に座り私の頬に顔をつけて来るのを嬉しく思いながら盗賊を縛り上げると待っている皆に知らせた。



「15人で1人は眠らなかったんだ」

生まれつきの抵抗力か、それとも冒険などで積んだ経験でなのかシルフの眠りにあがなうものがいると聞いていたが、

「何れにせよ村に行って引き渡してしまおう」

赤ん坊を抱いているマロウニが厳しくいうが微笑ましい光景に笑いながら頷くと、

「全く、早く親族に引き渡して課題を終わらせるぞ」

そう言うとお腹が空いたのか鳴き始めたソフィアをあやしながら盗賊を起こして馬車の後ろに数珠繋ぎに並べて村へ出発するのを確認していた。


数時間後ようやく村に到着する。

村を警戒している兵が盗賊を引き渡すと慌てて村長を呼びに行き連れてくる。

「こんな数の盗賊を、わかりました預かりましょう」

馬車の後ろの盗賊を見て何か有るようだがそのまま引き受ける時にリリアが、

「この人何か隠してる。それもあまり良くないことで」

エルフ語は当然理解できない村長は気にもせずにいるので、

「引き渡しの確認書をいただけませんか」

そう言うと村長は驚き、

「そんなものが必要なのか」

「はい、以前にも同じ様なことがあり懸賞金と引き換えるときの証明になるので」

「そうだな、直ぐに書こう」

周りの村人の感じも急に悪くなる。

皆もそれを感じたのかわざと明るく振る舞い村長の書いた証明書を貰うとソフィアの親族の事を話すと調べておくと言い、村の簡易宿泊所へ案内してくれた。


「何かあるよね」

到着するなりネーベが呟くのを皆も同意する。

「わかった、調べてくるよ」

私がそう言うとリデリオが、

「そのままじゃアポロニア大きいから目立つよね、クレス」

そう呼ぶとボーイッシュなシルフが現れて、

元気よく座っているリデリオの膝の上に立つと皆に一礼する。

「アポロニアを助けてあげて、音や匂い気配何かを消してくれないかい」

そう言うと私を見て一礼するので、

「クレスよろしくね」

装備をはずして身軽になると見張っている村人をベーネミュンデが眠らせてくれその間に外に出てクレスが沢山人が集まっている所へ急いだ。



「すまない捕まっちまって兄貴」

この馬鹿な弟は問題ばかり起こしており、今回も同年代の友人と旅人を襲って逆に捕まってしまったのだ、

「証明書を出したから無罪放免とはいかない、あの領主なら良くて重労働、悪ければ死罪になるんだぞ」

「だからいきなり眠くなって気がついたら」

救い様の無い馬鹿な弟だが村の有力者の息子もいる。だから見捨てるわけにもいかない、

「大人しく牢に入って反省していろ」

そう言うと村の牢に全員押し込める様に指示をした。


「どうするのかね」

私の弟と仲が良い同じ馬鹿な息子を持つガストが聞いてくる。

「法に従って巡回してくる貴族に裁いてもらう。何時もの事だ」

「そうなれば村長の弟もだが私の息子もどうなるか、考えてはくれないか」

どうしろと言うのだ証明書を貴族かギルドに出されれば当然黙っていても発覚はする。

「考えろと言ってもあの冒険者に証明書を渡している。従うまでだ」

そう言って不穏な話を切り上げて私は家へと戻った。



「村長は特に何もしてこないはずだけど、村の有力者の一部が私達からこの証明書を取り返したいと」

「盗賊をかくまうということか」

「身内だからね、わからなくもないけどどうする」

ソフィアを寝かしつけたマロウニが、

「ここから消えてしまえばいい、明日の朝戻ってからソフィアの血縁の者に引き渡せば良い」

争いは避けるという事を考え夕食後に闇夜に紛れて村を出ると近くの森へと入る。

ホルスが残り襲ってきたのか実際確認をするために村に残った。



「ガストさん、準備ができました」

盗賊として捕らえられた息子や夫を助けるために25人が集まり月明かりの中で冒険者が泊まっている村の集会所に向かう、

「もう部屋は真っ暗で静かなものでさあ、さっさとやっちまいましょう」

「命だけは取るなよ、あくまで証明書とその冒険者に何も無かったと言うのを認めさせればいいのだからな」

「しかしここから離れて訴えられたら」

「もし依頼を受けていればこの村をとおったことがわかり調べられれば発覚するかもしれない」

「面倒ですね、しらばっくれれば良いだけですよ、村長だって事を起こせば何も言うこと出来ないでしょうし」

そう言ってるうちに到着して中へと入った。


「誰もいないですぜ、そっちは」

倉庫なども見たが冒険者は誰もおらず私を含め呆然としてしまう。

「バグ、ちゃんと見張ってたのか、居ないじゃねえか」

「あにき、見てましたよ表も裏も」

「どうするガストさん」

「解散だ、この事は誰にもいわない様に」

そう言って解散させたが、あの冒険者が何処に行ったか不明で眠ることなどできなかった。



「ガスト達が集会所を襲ったそうです」

朝起きてみるとそんな報告を受けて、彼らの短絡的な行動に呆れるのと同時に結果を知りたくなる。

「それが、襲ったんですがもぬけの殻で解散したそうです」

あの優しい顔の大男はだてに冒険者をしていないと言うことか、危険を察知して逃げたと言うことで、

「それでは何事も無かったと言うんだな」

それだけを確認してもし罪に問われても私は法にのっとり動いたので責任はガストにすべて背負わせればいいだけだ、だいたい最近代々続く村長の座を露骨に狙ってきていて対応を迫られていたので丁度良い、

「直ぐに村人を中央広場に集めてくれ、緊急の要件だとな」

誰がガストと襲ったのかはもう調べておりそれを追求するだけだ。


「急に集まってもらったのは他でもない、昨日の事聞いていると思うが私の弟を含めた若者が旅人を襲って返り討ちにあい捕らえられて連れてこられたのを」

馬鹿な弟のお陰でどうなるかと思ったがこれで全てを始末できると思うと自然に声が上ずる。

「私の弟といえども罪は罪、断腸の思いであるが償わせなければならない」

これで私は身内にも厳しく頼りになる村長だと皆も認めてくれよう、

「そして昨晩あってはならない事が起きた」

私はゆっくり皆を見つめ最後にガストをにらみ、

「罪をおかした息子を助けるためと言って集会所の冒険者を襲ったものがおり誰かはわかっている。ガスト身に覚えがあるな」

そう言うとガストは顔色も変えずふてぶてしく、

「確かに集会所へ行きましたが冒険者に礼を言うために」

「何をいうか、武器を持って行ったであろう」

「いえいえ、だいたい争った後もないですし、よろしければ集会所を見てもらえばわかります」

しまった、争った後がないと言われれば確かにそうだが次の言葉に驚く、

「その冒険者が何処に行かれたのかは当然村長は知っておられるはずです責任者なのですから」

言うに事欠いて何と言うことを、

「それはその方が知っておろう、最後に会ったのがガストお前だからな」

ここで何がなんでも勝たなければ村長としての力が無いと思われるのはごめんだ、そんなことを言っていると不意にガストの後ろにいる男が倒れ悲鳴が上がり他の者も倒れていく、

「高熱で意識がないです」

天罰と言って良いがそれは口に出さずに見てみると16人が病気と思われる症状に苦しんでおり顔色が真っ白になっているガストに、

「何を食べさせたんだお前の所の者だけだが」

「村長、これは疫病です。多分クルミ病ではないかと、このままでは皆命を落とします」

クルミ病とは何だ、意味の解らぬ言葉を言って私を馬鹿にするつもりか、

「北方で村がいくつも疫病によって亡くなったと言うのを去年聞いたのを覚えておられませんか」

「そんな話聞いたような覚えがあるが、決めつけていいのか」

「目の前の状況がそうなんです。倒れたのは集会所へ運び込んでください、村人には外出を控えさせてください」

「集会所は良いが外出を止めるのは皆納得しないぞ」

急に弱気になるガストに私はこの際しっかりおさえつけようと思い、

「それと、今後私に対して口を挟むないいな」

そう言うと白い顔で頷きようやく勝利を掴むことが出来た。



「昨晩の件で村で話し合いになっているようだよ」

ホルスが朝になり戻ってきて伝えてくる。

「私達が居なくなって大騒ぎしているんだろう。村に戻って見ようか」

襲ったのはどうやら一部らしいと言うのがわかっているので村へ向かう、

「門に誰もいない不用心だねアポロニア」

ネーベが言うのももっともで兵は誰もおらず広場へと向かうと大騒ぎになっており村長がきて、

「昨晩の事はガストと言う者が独断で行ったことだ、これは迷惑料として渡しておく」

村長は見つけるなり近寄り言い訳を始めたがマロウニが、

「クルミ病か」

そう呟きリデリオが、

「もしかして僕たちがいたあの場所に入って」

「自業自得か」

私達が滞在していたあの部屋は私達が発病はしないが病気を持っていてそれが室内にいたのでと言うことで次々と倒れていく、

「村長、我々は今回の事特に言うつもりはないがベンドリ夫妻がこの村に居ると聞いたのだが」

「ベンドリか、あそこの集会所の中で苦しんでいるぞ、お前達を襲ったのは夫でそれを取り返そうとしたのは妻だからな」

村長は自業自得だと言いきりどうするか聞かれたので皆に相談するとマロウニが、

「そんな連中にソフィアを渡すわけにいかないだろう、皆がよければこのままでは信用に足りる者に任せたい」

皆もソフィアと離れたくはない気持ちはあるので同意して私にあることを村長に提案してくれる。

「村長、クルミ病ですが薬があるのでそれでつくられたらどうでしょうか」

村長は予想外の反応で、

「気にしなくて良い連中は自業自得だからな、それと連中が昨夜の時に騒ぐので馬を殺めてしまったようで代わりの馬を2頭準備しておいた」

そう言うと馬車と馬を2頭立てで引き渡してきて、

「今回の事、勝手にガストがやったことなのでお伝え願いたい」

権力闘争なのかと気がつき怪訝な顔でいる皆を馬車に乗せると出発をした。



「村長としての地位が危ぶまれるから薬を拒否したと、あの男は目の前にある危機がわかってないのか」

思わずアポロニアの説明で大きな声を出してしまいソフィアが驚いて泣かせてしまう。

「マロウニ、大きな声だしてビックリさせちゃダメ、こっちへおいでソフィア」

リリアがいとおしそうにソフィアを私から受け取りあやす。

「あそこまでとは自分でも驚いているし、逆にあんなだから一部の村人が危機感をいだいてということかも」

「考えられないよね、村の仲間を見捨てるなんて」

「私たちと違ってどんどん増えていくから命を軽く考えてるのかな、アポロニアは違うよ皆知ってるし」

ネーベが呟き慌ててアポロニアに言い訳をしている。

「何れにせよソフィアを責任もって育ててくれる者に渡していければと考えてる」

「良いんじゃないこのまま一緒に旅を続けて行けば、村に帰ってからもアポロニアと一緒に暮らしていけば良いし」

「ネーベ簡単にいうな、まだ小さいし何かあれば我々だけではどうしようもないこともあるんだぞ」

そう言ったものの自分でもそれが正しいと言いきれずにおりネーベも皆もさっしてか嬉しそうに頷きリリアの腕の中のソフィアをあやしていた。



結局しばらくして風の噂では町もそして村やその隣接する村も疫病の被害で廃村となったと話に聞いた。

それからソフィアを中心として旅を続け色々騒動もあったが一ヶ月後ようやく目的地のグランドアースに到着をした。

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