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ソフィア

「お世話になりました」

今週は色々あり私も嬉しい反面疲れてしまったけど明日からお客様が来てくれることを思いながら子供達と見送りをする。

マリーはエルフのリデリオさんにお嫁に行くと言い朝から別れが惜しいのか泣きそうになっているのをこらえており心配です。

駅馬車迄送ると言ったがアポロニアさんが、

「勉強と、お母さんの手伝いを頑張ってね」

そう言うと頷きラナの手を握って大きく手を振って送り出した。

「お母さんお手伝い頑張る。ところでエルフの言葉って何処で習うの」

そう言われて思わずしゃがみこんでしまう。誰が知ってるのかエルフの言葉なんて、そう思いながら青空を見上げてまた来てくれることを祈った。



「マロウニ、怒らなくても」

「リデリオ、ヒューマンの女の子に軽々しく約束するもんじゃない」

「どうなるかわからないけど、縁があればまた会えるさ目くじらたてるものでもないし」

「リデリオ、マロウニは結婚しても私達は寿命が短いからと言うことで心配してるんだよ」

「違う、ハーフエルフが生まれればその子自身も苦労をする」

「それは次期村長に暮らしていける場をつくることを期待するよ、無論僕も頑張るけど」

リデリオにそう言われてしまいマロウニは責任か感じて厳しい顔をしながら頷いた。


アポロニアの案内で駅馬車に乗る。

大きな馬車で6頭引きで定員は12名で私たちの他に商人なのか飾っている男女と女性が2人乗っており空いてるところに座る。

「アポロニア、後何回乗り換えるんだ」

「全部で13回、遠いからねドワーフがいる都市は、段々地方になるからこの馬車が一番良いかもしれない」

「もう少し早ければ数日で終わったが、経験と言うことか」

運がないと昔から言われていたがそう思いため息をつきたくなる。

他の仲間は楽しんでおり危機感が薄いのではと思いながら、だからこそうるさいと思われても言わなければと思う。

そんなことを考えているうちに次の停車場に到着をして宿をとることにした。



「すごい人だらけ、アポロニア何があるの早く教えて」

馬車からおりて人があふれており好奇心一杯のネーベが聞いてくる。

近くの人に聞くと、

「聖人コーネリアス様の復活祭になり奇跡を求めて全土から集まってきているのです」

小さい頃に聞いた話で生きているときにも奇跡をおこしていたと聞いたことがあり復活があるのかと思いながら問題が発生する。

「宿がどこも満室で泊まれませんよ」

ギルドにも聞いたが駄目で皆に相談する。


「しょうがないでしょ、普通に野宿すれば良いだけだしね」

ネーベが言うのを皆同意してくれ食材を買い込むと町から出て小川沿いの水はけの良い場所で野宿となった。

「しかし馬車も復活祭で明日は休みと、どうする」

「その復活祭見てみるのも良いかも」

「ヒューマンの祭りか一度見てみるか」

「まあ今さら慌ててもだしね」

マロウニはなにか言いたそうだが黙って食べておりお祭りの話で夜がふけていった。



「隊長、広場で数人が倒れたと知らせが来ました」

「おおかた騒いで飲みすぎたのだろう、様子を見に行かせろ」

私はこの町を守る衛兵の隊長であり部下を多く率いいてるがお祭りでは数倍に膨れ上がり、さらに復活祭と言うことで町のキャパを越えて人々が集まり宿がとれなかった人々が広場や酒場に夜通し集まり騒いでいる。

他の町からも援軍をもらってはいたがとてもじゃないが足りるわけもなく牢屋も満杯で臨時で倉庫を使っている有り様だ、これが3日間続くと思うと先が思いやられており初日で部下も悲鳴をあげてしまっているが弱音をはかせるわけにはいかなかった。


「酒場で数人が吐いて倒れたと」

「ひどく酔っている者は飲むのを自重させろ、それでもやめないならかまわぬ拘束しろ」

言ってる矢先からこんな状態で聖なる復活祭ならばと領主には酒の販売を禁止してほしいと伝えたが税収などが減少した場合の代案があるのかと言われてしまったのだが強弁に中止をした方がよかったと後悔している。

「広場でさらに数十人が倒れたと確認をしに行った衛兵から知らせがありました」

酒を、そう言いかけなにか違和感を感じて部下を率いて広場に向かう、行く途中でも道端に倒れている者も見受けられ動いている様子はない、不安を抱えながら広場に到着をした。


「大人だけでは無いのか」

倒れているのは大人だけでなく酒もまだ早い子供もいて部下の迂闊さに文句も言いたくなるが、

「食中毒か、食事を止めさせろ」

そう言って部下に露店も含めてご飯の提供を中止させる。

店主も文句を言いたいところだろうが広場の惨状を目の当たりにして自分達のご飯がまさか原因ではないかと思って従ってくれた。


「隊長、他の場所でも次々と倒れておりパニックになりつつあります」

「そうなる前に皆を家に返し厳戒令をひけ領主には私が説明に行く」

これで私も解任されるだろうと思いながらごうつくばりの領主に説明するため館へと向かった。



「司祭様、司祭様、大変です。子供が吐いてしまい痙攣を起こしてしまっているんです」

明日から始まる復活祭のため神につかえる者は早めに就寝をしていたのだが早々に起こされる。

町医者もいるはずだがそれでは対応できなかったと言うことらしく神に真っ先に頼らなかった愚か者達だが苦しんでいるのは無垢な子供であり親の罪だが神につかえるものとして寛容にならなければなるまい、

「治療室にお連れしなさい」

そう言うと眠気眼の部下達は慌ててドアを開けに向かった。


「食中毒でもない、癒しを与えても直ぐに悪化をするとは」

私のせいではなくきっとこの子の親の信仰心の欠如と罪を重ねた結果ではないか、

「両親もしっかりと神に祈り今までの罪に許しをこいなさい」

そう言うと慌てて両親は祈り始め私は癒しを与えながら薬草を煎じたものをのませていたがそのかいもなく息を引き取ってしまった。

「司祭様、次々と患者が来ており教会の周りはあふれかえっております」

部下から言われて窓から外を見ると次々と運ばれてきた人々であふれかえり私は呆然とその光景を見続けた。



「おはよう、町も夜に急に静かになったね、早く見に行こ」

ネーベが真っ先に起きて皆を起こしてまわる。

「朝御飯を食べてからでも逃げはしないよネーベ」

「そうだけど朝食を中で食べても良いんじゃないリデリオ」

「そうだねマロウニそれでいいかい」

「その方がいいのだろう、アポロニアかまいはしないか」

「皆がそう言うのならそうしよう」

こうして片付けると町の表門へと向かった。


「閉じられてる。日はもう登ってあんなに高いのに、それと衛兵が見えない」

私もだが皆も誰か居ないかと色々見上げてみたが気配はなく門の前で声をあげても反応がなかった。

そんなことをしているうちに駅馬車や行商人等が到着したが相変わらず反応がなく騒ぎになり始めており、しばらくすると祭りの援軍なのか衛兵の一団が到着してさらに大騒ぎになった。


「一度離れよう、何があったかわからないからな」

マロウニの言葉に皆同意して夜営した場所へ戻り遠くから様子を見ていた。

「壁にとりついて登ってるね、中に入ったみたい」

エルフは皆目が良いらしく私には豆粒が動いている感覚しかなくネーベの説明に耳を傾ける。

「門が開いたみたいで衛兵が中に入っていくよ」

「見てくるよ」

長身の足が速いホルスが立ち上がると走り始め私の倍の速度で駆け抜けて門の前に立って様子を見ていたようだが戻ってきた。


「かなり不味いかも、疫病それもクルミ病かも」

ホルスが戻ってくるなり言うと皆沈黙してしまう、

「クルミ病ってあの、一気に広がるよ」

マロウニが厳しい顔で説明をしてくれる。

「触れないでも病気がうつる。すぐ発病して弱いものは2日持たない、お腹をくだし腹痛になり発熱を起こして亡くなる。リデリオ薬を」

そう言うと火を起こして鍋に水を入れて薬草を取り出し、足らないものは私以外で手分けして森に探しにはいる。

私は沸騰させないように火を調整しているとリデリオが戻ってきて、

「アポロニアは火の精霊と契約してるんだからこう言うときにこそ使わないと」

そう言われてサラマンダーを呼び出して沸騰させないように言うと、嬉しそうにその場でくるくるまわりかまどの火に弱くなると火を足して調節し始め、しばらくすると皆が戻ってきて素材を潰したり細かく刻んだりすりつぶしたりしながら気がつくと昼を過ぎており町はあいかわらず不気味に静かだった。


「皆、これを1杯飲んでしばらくしてもう一杯、そして翌日もう一杯飲めば病気からは守れるはずだ」

マロウニがそう言うと皆が頷く、エルフの里でも外部から持ち込まれ弱いものから倒れて命を失った事があると言い助けはそれが終わらないとと言うことになる。

「アポロニアには悪いがヒューマンはヒューマンで対応させるしかない」

「それは気にしなくて良いけど、助けられるなら助けたい」

「それは私達も思う、皆で薬草を集められるだけ集めよう」

マロウニは慎重な意見ではっきりと言うが出来ることはすると言ってくれたので水をくみ薪を集めて薬の準備を行い翌日に最後の薬を飲むと荷物を担いで町の門まで向かった。



わしはリアルド男爵、この町とその他の町を統治する領主であり今回はお膝元のマチルダで復活祭が行われることになっており税の増収が見込めるはずだったのだが、

「町の領民や巡礼者等が次々と倒れ食中毒か疫病の可能性も、被害を押さえるためにも祭りを中止して家から出ないように御触れを出していただきたいのですが」

「祭りの中止だと、それでは税収が減るではないか何を言っておる」

衛兵の隊長の言いぐさは現状をわかっておらぬ、中止にすれば金貨数十枚いやそれ以上の金が私の元に入ってこないと言うわかりきってる事を言うなど、

「しかしこのままいけば祭りどころの騒ぎではなく命を落とすやも知れませぬ」

「そんな憶測で言うでない、これ以上言うなら解任するぞ」

その一言でやっと隊長は黙る。まったく何を考えておるのか、


執務室の扉がノックされて中に入る様に言うと衛兵が、

「広場で倒れた者が300人を越え教会にも薬士の所にも人があふれております。指示をお願いします」

入って来るなりそう言うと隊長はこちらを見る。

何でこんな時に、たかが腹痛にそんな大騒ぎをするひついうもあるはずもないが衛兵は騒ぎ立て使えない、仕方がない私自ら広場に行き使えぬ部下を叱咤激励することにしよう、

「馬を引け」



わが領主は危機的状況に税収の心配しかしておらず広場での惨状を部下が話すとようやく重い腰をあげる。

しかしあの顔つきからすると心配なのではなく威厳を保つために向かって現場で私達を怒鳴り散らす気が満々と見とれ怒りを覚える。

馬乗りゆっくりと誰も見ている余裕がないのに領主は足を進め倒れている領民を気にするわけでもなく石が転がってる位の感覚で大通りから広場に向かった。


到着をすると手の施しようもない参上が広がり苦悶の表情を浮かべている民が視界の中にあふれており領主はそれを見て馬を止めこちらをふりかえると、

「祭りを邪魔しおって、さっさとどかして盛大に祝え、酒を売り税収をあげろ」

私は何を言われたか一瞬反応できずに領主を見上げてしまう、

「お前はとうとう馬鹿になったか、言ったことがわからぬなら解任する。副隊長すぐに動け」

自分が解任されたことも他人事のように聞こえ副隊長がこちらを心配そうに見て領主がイラつき始め、

「部下も部下か、シズガよその方を臨時で衛兵の隊長とする。これをさっさと片付けろ、それとそこの二人の装備は回収しておけ」

呆れて何も言えず領主の側近のシズガの命令で衛兵が申し訳なさそうに装備を渡してくださいと言われ私は黙って鎧や剣を渡して副隊長と共に行こうとすると、

「命令不服従で町から追放だ半日やる出ていけ」

背中からそう言われて副隊長と唇を噛み締め家族の待つ家に急いだ。



「カグラの根は、なかなか見つからない」

夜通し探し続けているがある草だけはあまりはえておらず他の皆も苦労している。

しかしクルミ病とは危険な病気であり薬草を飲まないと命を落とす可能性がありカグラがないと効用を効果的に出来ないので森に奥に入らなければ無いけど、

「グラス、これ以上森の奥にはいると奴らのテリトリーだから」

いつの間にかホルスが私のそばまで来て声をかけてくれる。

「わかってるけどこちらの森にはカグラが無いんだよ」

「確かに2つしか採取できてない」

二人でため息をつくとホルスが、

「マロウニに怒られるけど一人が採取してもう一人が警戒でさがすしかないな」

「アポロニアも心配で顔を青くしてたから、注意して行こう」

そう言うとホルスが弓を構え私は地面を見ながら薬草を見つけては採取した。


「二人とも、もう言わなくてもわかっているな」

戻ってきて私達が抱えていたカグラを見て直ぐにさっしたらしくマロウニが言ってくるが頷くとそれ以上は言わず、

「そう言うときは皆をよんでからにしてくれ」

「悪かった今度からそうするよマロウニ」

素材を渡すと皆で細かく刻んでアポロニアが準備している鍋に放り込んだ。

「大きな鍋がないから煮詰めて町で大きな鍋を調達しないと」

朝方まで準備をして苦い薬を飲み干すと鍋を持って門へと向かった。



「すまない、こんな事になるとはな」

解雇され自宅に戻ると妻と子供達が待っており周りの事に心配して待っていてくれる。

「新しい土地でいちから始めましょ、隊長の妻でなくなったけど貴方の妻にはかわりないのだから」

私がいつも仕事で不在の時に家庭をしっかり見てくれている妻で首になったと言うが気にすることもなく荷造りを始めている。

「丁度よかったではありませんか使い古しとはいえ荷馬車とロバを私財で購入したのですしお隣と一緒に新しい町に向かいましょ」

今更ながらに感謝をして領主がケチで資材を運ぶ馬車さえも購入をためらったので知り合いに安く頼み込んだのが役に立つ、逃げ出していくと言う事になるが追放と言われて従うしかなく副隊長と共に荷物を積み込むと朝焼けの中、出発した。


「隊長」

部下が私を見て呆然と見送るなかを心で謝りながら正門に到着する。

誰が開いたかしらないが夜明け前に門が開いているのは重大な違反であり処罰をしなければならないが、

「もう隊長でもない私が言うのもか」

そう思いながら外へ出ると妻が隣で小さく悲鳴をあげる。

そこには2mを越すオーガの様な黒い姿が立っておりその周りには数人のフードをかぶった者がこちらを見ていた。

「貴様達盗賊か」

門が開け放たれたせいでもう盗賊が表れたのかと思ったが私は衛兵でないと思いながら使いふるされたソードを抜く、

「盗賊ではないし逆にあなた方を町の外に出さないようにするためですよ」

「何を言っている。意味がわからない」

オーガだと思っていた大男は優しそうな顔だが断固とした声で、

「疫病です。クルミ病と言う病気の、かかればほとんどが命を落とすでしょう」

クルミ病、絶望的な言葉を聞き私は家族を見る。

私は多分かかった可能性があり家族も私からうつってしまったと、そしてかかれば薬もなく弱い子供が真っ先に、

「それで町から出るなと、これ以上被害を拡大させないためには必要ですね」

そう言うと男は、

「それもありますが薬があるので」

驚くことを言う、そんな話何処でも聞いた事もなくペテンではと疑いの目を向けるとフードの男が顔を見せる。

「無知なヒューマンは自分の知識外は信じないのか愚かな、わかった死ぬがいい引き上げるぞ」

そう言われて大慌てで謝罪を繰り返しようやく謝罪を受け入れてもらえた。


「最大の鍋を持ってきてくれと」

鍋が小さいので煮詰めて持ってきたらしく皆に飲んでもらうため大きな鍋で水にとかして再度熱を加えなければならないと言われ、私は副隊長とあわてて町へと戻った。

「隊長」

部下が私を見つけ帰ってきてくれたと思ったのか泣きそうなのを我慢しながら集まってくる。

「収穫祭で振る舞う巨大な大鍋が倉庫にあっただろう、それを正門の外まで運び病人もそちらへ連れてきてくれ」

「あんな大きな鍋、わかりました隊長は何か言うときは意味のあることを言ってくれていましたから、皆いくぞ」

元部下達は大きく声をあげると町の倉庫へと走っていった。



マロウニの怒りもわからないでもないがあの二人は何か事情があってと言うこともあるだろうし疑われるのもわからなくもない、皆でエルフもヒューマン疑うしな同じじゃんなどと話をして準備をしていた。


「大きいよね、予想以上」

衛兵が20人程で頭の上に担ぎ上げて持って来ておりかまどの大きさが小さすぎるので作り直した。

「水をくんで来てください、なるべく多く」

煮詰めた薬を鍋にいれて水で薄めて熱を加える。

そして水で薄まる効果を引き上げるためカグラの根を細かくして磨り潰し絞った液体を入れた。


「どのくらいで完成しますか、紹介が遅れましたここの衛兵隊長をしていたドブルクといいます。助けていただき感謝しかありません」

元がつくのかは気になるが火力をサラマンダーに指示しているので、

「半日はかかるそうです」

それだけ言うと集まってきている病人に説明をしている。

信頼されているのかパニックにならずに病人達は症状によって集まり待っていてくれた。


「できたよ、アポロニア火を消していいよ」

薬に一番詳しいリリアが頷くのでサラマンダーにお疲れさまをいって妖精界に戻ってもらう、

「重病な患者から飲ませるので器を持ってきてください」

木や陶器の器が渡されてくんでいく、それを渡すと順番に飲ませこの場にいた人々に2回目を飲ませ始めた。

「町の人ってこのくらいかな、少ないような気がするんだけど」

ネーベが言うのも最もで半分位かと思いながらこれなら足りるかと思い衛兵などにも配っていると厄介ごとがやって来た。



「リアルド伯爵様、変な噂が聞こえてきたのですが」

腹心で噂を集めるのも得意なやつで重宝する。まあそれだけの男だが、

「どうやらこれはクルミ病ではないかと」

誰か知らんがえらいものを持ち込んでくれた。疫病であり確か北方で蔓延して6つの村が死滅したと、あの隊長が言っていたがまあいいそれよりも、

「私にうつったらそれこそ国の大きな損失だ、教会に行き聖水を持ってこさせ館を清めよ」

「それについて耳寄りな話が」

相変わらずこの男は肝心なことを後で言う全く呆れるが領主として寛容でならなければならぬから聞くことにして顎で促す。

「町の正門の外でクルミ病の特効薬をつくって病人に配っていると」

「それはまことか」

それが事実なら秘匿して売れば莫大な利益をあげられるし、王家にも恩を売れると言うことだ。

「騎士に兵を集めさせよ、衛兵だけでなくありったけな、薬をもらいにいく」

そう言うと奴も嬉しそうに返事をして馬に乗ると出発をした。


「薬の材料がわかればいくらでも作れますからそうなれば」

この男が言うのはもっともだがその笑ういやしい顔が私の様な高貴には受け入れられずにいる。

「誰が作ったか調べろ、わかったら銀貨1枚はやろう」

そう言うと嬉しそうに走っていく、たかだか銀貨1枚にああなるとはな、そうしてるうちに正門に到着するが病人があふれかえっている。

「直ぐに退かせろ、私にうつったらどうする」

そう言うと騎士が馬を進めて非難と鳴き声を言う民をどかし始めた。



不意に後ろで悲鳴と罵声が上がる。

「馬鹿領主が無茶をしやがって」

私は病人を押し退ける騎士に向かい前に立ちはだかり、

「皆大切な民で病人ではないですか、無茶はやめて下さい」

そう言うがランズレーと言う領主の甥も気にせずに向かって来て押し潰そうとしてきたが両手を広げてにらむと手前で止まる。

「ドブルク、貴様は上司である私に逆らおうと言うのか」

「もう上司ではないですし民を守るのが騎士の使命です」

「うるさいわ」

そう言うと鞭を振り上げて私を撃つ、痛みと口に血の味がしたが私は睨み付けているとランズレーが顔を徐々にひきつらせ、

「貴様ら領主の命に逆らおうというのか」

左右を見ると衛兵達が集まり睨み付け、

「病人である親兄弟や友人に対してこれ以上ひどい事をすれば私達も黙ってはいないぞ」

「ちっ、反乱だ衛兵が元隊長と共に反乱を起こしたぞ、鎮圧せよ」

これの何処が反乱と言うのだ、その声で仲間だった兵が集まりにらみ合いになってしまい、病人に付き添っていた領民も衛兵側に集まり騎士と兵士とにらみ合いが続いた。



「何をしているのだヒューマンは、苦しんでいる者がたくさんいるのに」

悲鳴と罵声が聞こえてきてしばらくすると門の前でにらみ合いが始まり呆れたようにアポロニアに聞くと、

「多分領主と領民と思うけど、この薬の事を聞いて製造方法と現物を手に入れたいんじゃないかな」

「強欲だな、皆集まれ」

作業をしていた仲間を呼び何時でも対応できるように今の話をしていると声が上がった。

「領主が出てきてあおっている。戦いが始まりそうだ」

「森に移動しよう、我らに追い付ける者などいないからな」

皆で頷いて移動をする。森へと移動中に悲鳴が上がり戦いが始まったようでつくづくヒューマンは救いがたい種族だということが皆もわかったと思う、

「マロウニ、この先はどうするの」

リリアが聞くのでアポロニアを見ると、

「隣の村まで歩いてそこからだけど、どのくらいかわからないから急ごう」

そう言うと森沿いに次の村へと向かうことになった。


「ねえアポロニア、なんであんなに争うのかな」

ネーベが唐突に聞いて来たのをアポロニアは少し考え、

「寿命の短さだろうね、その間に子供を産み育てるのに、そして名声を得たいと考えるから50年じゃ短すぎるからね、逆に言えばそれがここまで繁栄した原因でもあると思うけど」

「50年ていったらもう少しで私達が越える年だものね、アポロニアはどうなの」

「家がお店をやってたけど裕福と言うほどでもなく、だからひとやま当てるために冒険者の学校へ入って訓練を受けたんだよ」

「冒険者か、こんなカードでお金稼ぐのか」

ネーベが自分の冒険者カードを取り出して見る。

「稼げるのは半分にもみたないし、新人の半分は命を落としたり怪我で働けなくなるから」

私はその話を聞きながら農業をして暮らせば問題ないと思うがアポロニアの話だとあの強欲な貴族が搾取をして苦しまざる終えないと言うことに愚かさを感じながら2日かかり隣村へ到着した。



「町でクルミ病が、やはりそうでしたか、実は私共の村も病が流行って半数が亡くなっており、元気なのは私を含め数名ほど、どうしたらよいか考えもつかないのです」

あの町の原因がここなのかわからないが村人のほとんどが倒れておりマロウニに確認をする。

「やはりクルミ病みたいだけど、何もせずに通り過ぎるのかな」

あの戦いの原因が私達の善意による行動だがエルフからすればその一端がすべてであり必要以上にヒューマンに介入はしないと昨日の夜に話をして皆で決めたのを改めて確認する。

「皆の総意だ、わかってくれアポロニア」

そう言われて村の老人に、

「お金を支払うので馬と馬車か馬だけでも購入したいのですが」

足はこれからまだまだ続く旅に必要と思いダメもとで聞くと、

「わしのをやろう、息子の家族も昨日亡くなって天涯孤独になった、その代わりと言ってはなんだが隣村にこの事を知らせてくれ、この村はもうだめだから焼き払う」

思わぬ申し出に感謝しながら待っていろと言うと村の中へ戻っていった。


「ここが原因だろうな、日にちから考えてその隣村も人の行き来が有るのだから、何れにせよそれを知らせることだけを考えればいい」

マロウニそう言うので皆も納得すると馬車を引いてきた。

「すまぬがもうひとつお願いがある」

馬車の中からかごを取り出してなかを見せると赤子であり、

「これは妻の妹の娘の所で生まれて1ヶ月程、この子はソフィアと言うのじゃが隣村に親戚でベンドリと言う夫婦がいるので託してもらえぬかな」

このままでは母親が亡くなっており間違いなく死んでしまう、皆に赤子を見せてそう言うとマロウニが、

「約束は1つのはずだが」

「アポロニア、その子の母乳はどうするの」

横からリリアに言われて老人に聞くと荷台から山羊の鳴き声が聞こえ、

「亡くなったらそれも運命と思うておる。頼む」

そう言われて断ることも出来ずに受け取ってしまいマロウニ

呆れて私につきっきりで3日間の世話を言いつけた。


「申し訳ないが頼むぞ」

死を決意した老人が言うのを頷き返してマロウニが馬車を出発させる。

別れを感じさせたのかお腹がすいたのか赤ん坊が泣き始めネーベが山羊から乳を絞り私に渡してくれスプーンで少しずつ飲ませていく、

「赤ん坊は種族問わず可愛いね、アポロニア抱かせて」

しばらくするとネーベが我慢できなくなったのか私に両手を広げて催促するのを赤ん坊を抱いたことのないネーベに抱き方の説明をして渡すとリリアも我慢ができなくなったのかネーベの横に座りソフィアの顔を嬉しそうに見ていた。

「まったく情が移れば別れも辛くなるのに二人とも何を考えているのか」

馬車を操っているマロウニの横に座るとため息を吐きさらに、

「私達の世代も子供ができればいいが、ヒューマンがこう言う時だけうらやましく感じる」

エルフにとって赤ん坊は宝石と言って良いもので実際に手にすると嬉しさを押さえられず結局私以外のエルフでソフィアの世話をして賑やかに過ごしていた。

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